第6話 「魔力全然持ってないです、はい。」
本年も宜しくお願いします。
「うむむ、この子の魔石の色は緑色ですな。」
初老を迎えた司祭が言う。
「そうですか、ま、何も期待していませんでしたが。」
相変わらず冷たい父がそう言う。
(なら金払ってまで測定しなくてもよかったじゃん、勿体無い。)
って思ってしまうのは勿体無い癖を持つ日本人だからだろうか。
「それでは失礼致します。」
「あぁ、ご苦労。」
そういって司祭は血を拭き取り、水晶や引き物を片付け部屋を出た。
「ちっ、お前は魔力にまで嫌われているようだな。」
侮蔑するような目でそういって部屋から出てった。
「ユリオーネ……。」
兄さんが駆け寄ってくる。
「大丈夫です、兄さん。」
そういって僕は笑顔を作った。
すると兄さんが不思議と言った顔で聞いてくる。
「どうして魔法が使えることや魔力が膨大にあることを隠すんだ?」
「簡単ですよ兄さん。僕があれだけの魔力を持って強力な魔法を使えることを知ったら、両親はどうすると思いますか?」
「…お前を利用し何かしらに使うだろう。」
「そうなんですよ、でも、それはまだいい方です。」
「いい方?飼われることが?」
「えぇ、そうです。もっとも、飼えたらの話ですがね。」
兄さんはまったく理解してない顔している。
僕はそれを気にせず続けた。
「話は変わりますが、何故兄さんは黒髪黒目が禁忌とされてるか知ってますか?」
「あぁ、もちろん…。それは昔、強大な力を持ったやつがいて、
国をひとつ滅ぼして、そいつが黒髪黒目だったからだろう?」
「そうです、じゃあ、僕はどうです?親に虐げられ、使用人まで冷たい扱い、だが、強大な力を持っている。」
「親や使用人は復讐を恐れるということか?ああっ!」
どうやら分かったようだ。
「そうです、きっと僕を殺すでしょう。」
「なるほどな……。ユリオーネ、お前は僕よりも数倍頭いいな。」
いや、貴方も11歳とは思えない頭脳をお持ちだけどね。
でも僕はこう答えた。
「僕は僕ですよ、兄さんのことが大好きな。」
「そうか、僕も大好きだぞ、ユリオーネ。」
そういって頭を撫でてくれた。
うーん、でもやっぱり撫でられるのは子供っぽくて恥ずかしいなぁ、
と苦笑いになってしまう。
「ユー!リー!オー!ネー!」
ガチャっとドアが開き、少女が僕の名前を叫びながら抱きついて来る。
「ねぇねぇ!魔石の色はなんだったの!?」
結果を聞きながら僕に頬ずりをしてくる。
「緑ですよ、ナリア姉さん。」
この少女の名前はミナーリア・クリオネッツ。
クリオネッツ家長女で、ピンクと金髪を足したような髪を持っている。
活発な姉さんだ。
ちなみに炎魔法と剣が得意だ。
「なんだ、緑だったんだ…。でも安心してね!お姉ちゃんが守ってあげるから!」
「はい、お願いします。」
そういうと彼女は稽古があるからといい部屋を出た。
するとアルド兄さんが近づきこう言った。
「なぁ、ナリアはお前の味方だし魔力あること伝えても良かったんじゃないか?」
うん、まぁそうだよね。でも。
「兄さん、遠い国の言葉にこんなものがあります。」
「なんだ?」
「敵を欺くならまず味方から、と。」
「へぇ、面白い言葉じゃないか。」
「えぇ、そうでしょう。まぁ、僕は教える人が多くなると周りが知る可能性も大きくなると思ってるので。あえてナリア姉さんには教えませんでした。」
「そうだな、やっぱりリオーネ頭良すぎるなぁ……。」
アルド兄さんが遠い目して言った。
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