第18話 「所詮、身勝手。」
「とりあえず、リメーレとレナ姉さんは一旦王都の宿に戻って。」
学園長に抱きつかれながら僕はそういった。
するとレナ姉さんが僕の袖を掴み言った。
「帰って…来てね?」
「もちろん、すぐ僕も宿に向かうので。」
リメーレは一礼して、部屋を出る前に、
「お待ちしています。」
と一言残し、レナ姉さんと共に出て行った。
「じゃあ、学園長、早目に行きますか。」
「行きますか?どこにじゃ?」
僕はもちろん、と言って笑顔で答えた。
「精霊神竜のところです。」
そういうと学園長は驚き震えた口調で言った。
「ま、まだあの忌々しい竜がいる場所はわからんのじゃ…。」
「え、霊界にいるって聞きましたけど…?」
「れ、霊界とはなんじゃ?」
あ、あれ?学園長精霊魔法使えるのに精霊と会話できないの…?
僕学園長の話の中で言ってた魔竜の話聞いた瞬間精霊と会話したんだけど…。
「学園長…精霊と会話できないんですか?」
そういうと学園長は絶望したような顔して言った。
「精……霊……と…会話………?」
どうやら知らないみたいだ。
「精霊と会話できない、みたいですね。」
「ま、待て!わ、ワシはできぬがきっと妹はできるぞ!」
妹はできるって…学園長が出来ないことにかわりないじゃないですか…。
「む、昔、妹は声が聞こえる!ってうなされてたことがあっての!それはきっと精霊の言葉じゃったんじゃ!」
「へぇ、そうだったんだ。学園長以外に信じた同族はいたの?」
「おらんかった…それで妹は嫌われ、ワシらは二人で逃げてたのじゃ…。」
「え?妹さん迫害を受けていたの?」
そう聞くと学園長は少し否定したそうな素振りを見せたが頷いた。
へぇ、何だ、妹さん迫害受けてたんだ。
信じられないっ!!!!
妹さんが迫害受けてたのに他人のこととなれば黒髪黒目を軽蔑する?
いったいこいつは何様なんだ?
僕はどうしてこんなやつに協力しようと思ったんだ?
どうして痛みを知ってるのに自分も傷つけることができるんだ?
もしかしたら僕が妹さんを助けたらこいつは僕を捨てるんじゃないか?
特待生も剥奪するかもしれない。
そういう思いを僕は止めることが出来なかった。
「帰る。」
「え?」
学園長が顔を上げ疑問の声を出す。
「帰ると言ったんだ。」
「な、何故じゃ!きょ、協力は!?」
「するわけないですよ。するつもりなら今帰るわけがない。」
そういうと学園長は立ち上がり言った。
「な、何故じゃ!協力してくれると言ったであろう!」
「じゃあ逆に聞きます。迫害を受ける痛みを知ってるやつがどうして人を迫害するんですか?」
そういうと学園長はハッとした顔した。
僕は気にせず続けた。
「妹を助けるために黒髪の忌みなんざどうでもいいんだろう?もし、僕が助けたら僕は要らなくなるんでしょ?」
そういうと学園長は口に手をあて顔青ざめさせた。
「そういうこと、じゃあね。」
そういって僕が部屋をでようとするよ学園長は腰に縋って来た。
「す、すまなかった!わ、ワシが悪かった!で、でもワシも妹がいない間になんというか心に余裕がなくなってしもうて、
そ、それで周りより偉い自分になることで心を保ってしまったんじゃ…。」
酷すぎる言い訳だ。
「その言い方だと自分の心のためなら人を傷つけていいんでしょ?
要するに僕が学園長を傷つけるのもありなわけだ。だって僕迫害されて心の余裕ないしね。」
「ち、ちがっ……いや、すまなかった。」
そういうと学園長は床に座り、床に額をつけ言った。
「お、お主の言った通り、ワシを傷つけるも何もかもしていい、じゃから、じゃから、レフィアは…、
レフィアは助けてください………。」
そういって涙流した。
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