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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第三章 「王国に眠る秘密と観測者」 Episode.Ⅰ-Ⅱ 《絶望の断崖》
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【#095】 Preparatory period Part.Ⅱ -夢と理想《衝突篇》-

書き方を変えつつあります。




◇中層 冒険者ギルド◇


 夕刻から夜間へと暗がりなる時間でも平常通りならダンジョンから帰還した冒険者が、食堂で酒盛りやら肉をがっついていても可笑しくはない。


 しかし、トーマス計らいの基に受付のニナさんと偶然その場に何故かいた炎帝ことゴウさん。ガンキチとビーンツを加えた四人立ち会いで決戦することとなった。


 勝敗は『参った』と敗北宣言が立ち会い人に受理されれば、その場で勝者と敗者が決まる。極てシンプルなもの。あとは制限時間も規約もマナーもない全力全霊を持って撃ち破る精神があればいい。


 万が一に備えてゴウさんが、地下闘技場と冒険者ギルドの防衛対策として火系統の結界術式を発動している。


 観客席の一番手前で観戦することにした二人の鍛治職人は、ゴウの仁王像並の肉体美に若干震えながらそれぞれ一人を見る。


 一人は人間[ヒューマン]でありながら若年の冒険者。Aランク一歩手前まで迫ったものの、とある事情で昇格試験を投げたトーマス=ダリル。


 一人は吟遊詩人が唄う『黒結晶洞窟の英雄譚』の主人公であり、先日解決に至った『灰色事件』でも一役買ったと噂高い新人の冒険者ヒロキ。


 トーマスとヒロキの装備は、それぞれが対照的なもので簡潔に言葉で表すなら『王道』と『邪道』であろう。


 トーマスの装備は、真っ赤。純粋な剣士というイメージによく合う大盾と大剣を装備した重騎士型装備である。


 利き手となる右手には、嘗て幻獣の首をも撥ね飛ばしたという魔剣【クリムゾン・ブレイカー】が灼熱の炎を生んで空気を蒸発させている。


 真っ赤で歪な刀身が生む高温の『灼熱の炎』は、純度の高い炎熱鉱石と爆裂鉱石の二種類を含んだ天然性の魔剣である。火系統の魔法攻撃が容易に発動できる代物だがリスクもある。兎に角、持っているだけでも熱く火傷が絶えない灼熱剣が故に右手の平には防御術式が付与された特殊な包帯が厚く結ばれている。


 左手には、ビーンツが改良を幾度となく重ねては鍛え上げた大盾がある。魔剣【クリムゾン・ブレイカー】に負けぬ深紅のカラーリングと黒い十字架を施された盾は、トーマス専用に作り込まれた圧倒的な防御力以上に攻撃力を備えた特殊武装であることを語っている。


 さらに驚くべきことに、腰にはもう一本の大立ち回りになる超重量級の巨剣【ダモクレス】。装身具の何れをとっても重量系統と言う完全武装を施したトーマスは何を畏れるのかと皆の視線がヒロキに向けられる。


 ヒロキの装備は、トーマスとは対照的な真っ黒。構えるは一本の刀剣のみだが、その刀剣すらが純黒。装身具の何れもが超軽量級に見える邪悪な喪服装備は、死神が纏う衣のようで他人を寄せ付けない妖気と瘴気を生み出している。


 構えたのは、魔剣鍛治職人カイエンが造り上げた最高傑作にして過去最強の太刀を謳う魔剣【ダークリパライザー】は、嬉々揚々に青と鉄が混じり合わさった闘気を放つ。


 トーマスの口元にはニヤケがあった。

 あれだけの強者だ。魔王の血族と単独でやりあえるヤツと剣を交えるなんて滅多にない。もっと言えば一つの伝説『水神湖の守り神』を攻略クリアしていた。底が知れないヤツと戦うことがこうまで興奮するとはな。


 両者は睨み合う。


 ヒロキは、激しい衝突に備えて構築能力【硬化】で肌の表面をコーティングするように鋼を帯びる。黒ずんでゆくその姿は、さながら悪役の騎士を思わせるがその容姿をガンキチはカッコイイと内心思わせる。


 トーマスは、契約する火の精霊【炎鱗蜥蜴アレキサンダー】を召喚する。細々と詠唱。


「"燃やせ、牙を起て、【精霊武装『久焔』】"」


 途端に武装補助という形で棘棘しい赤い妖気が奮い起つ甲冑に変貌を遂げる姿は、逆境を覆す武者をビーンツはス・・・スゴイ!と褒め称える。


 精霊武装『久焔』は、火系統の精霊が内に秘められた霊力を使役するプレイヤー。この場合はトーマスが防御服の霊装として展開している。精霊のレベルや使役するプレイヤーのレベルや性格に反応して、姿形は別のものとなる。ただし、精霊が強くプレイヤーが弱くとも絆が深ければより強力な武装に仕上がる。


 トーマスの精霊武装は、頭部を除いての全身武装を施しているが故にニナも思わずビーンツと同じように褒め称えている。


 その一方でゴウは、ヒロキを見ていた。素人目線でも分かり得る武装の変貌よりも興味を惹かれるものがあったからだ。


 それにはトーマスも気付いていた。だからこそ臨戦態勢に入ったというのに、表情一つ濁さないヒロキは一人戦場を闊歩していた。


 闊歩などという言葉は相応しくないが、幾度となく戦場で身を削って磨かれたゴウの目には歩いて見えたであろう。ニナは受付嬢、ガンキチとビーンツは鍛治職人、鍛えてはいない素人目線からヒロキを見ればよく分かる。見えないのだから。


 それは傲りではない。

 それは素人ではない。

 それは英雄ではない。

 それは遊戯ではない。

 

 それは警鐘である。

 それは序章である。

 それは化物である。

 それは絶望である。


 奮い起つ牙はへし折られる。



                        ▲

                        ▼



 一瞬のことだった。


 火の粉舞うように剥がれ落ちる精霊武装。一体何が起こったのか?それはヒロキによる先制攻撃が生み出した結果に過ぎない。


 常人を遥か彼方へ置いてゆくスキル【物理限界突破】。引き起こされる事象は超低速世界である。二年の修練経て進化を遂げた『常人の一秒間を百秒まで引き伸ばして体感する力』。しかし、それは体現者だけが見えるものであり、常人が目で追うのは残像。


 だから、ガンキチやニナの目には見えなかったのだ。鍛え上げた動体視力を持つゴウは勿論、対戦者のトーマスにもヒロキの移動は見えていた。追えていた。しかし、それだけなのだ。目で追えても身体が動かなければ棒立ちしていることと同じなのだから。


 精霊武装を難なく斬り捨てたヒロキは、魔剣を異空間に放り投げるまで一秒も掛かってはいない。超低速世界で構築能力【加速】を使用した超高速で繰り出される近接格闘術【虚空拳】をトーマスの胸部に突き立てる。


「ヒヤッとしたぞ」


 そう言ったのは、ゴウであった。


 大盾での防御に入ることも出来ずに剥がされた精霊武装は、纏っていた妖気ごと瓦解され木っ端微塵に粉砕された反動で一歩後退。


 そこへヒロキの接近格闘術【虚空拳】が突き立てられるも、なんとか大盾に構築能力【硬化】と防御魔法で防いでいた。それでも拳圧で真後ろに吹き飛ばされる様には、ゴウを除く三人に大きな衝撃を与えていた。


「どうしたトーマス。それが全力なのか。」


 ガンキチは、恐怖を覚えていた。


 さっきと今とでは、こうまで変わるものなのかと。戦ってるのは自分でなくとも・・これだけは分かる。ヒロキさんは強いと。


 それはビーンツも同じこと。しかし、それ以上にどうやって精霊武装を剥がしたのか分からないでいた。


 そこにニナがゴウへ問う。


「あれはどういうこと?」


 ゴウは、驚く様子もなく淡々と返す。


「精霊武装を剥がしたヤツか。」

「ええ。精霊武装って、あんな簡単に壊れるもの?」

「簡単じゃないさ。トーマスが使役する炎鱗蜥蜴は、火系統の精霊の中でも防御力を高めるスキルがある。しかし、それを一発KOなんて新人じゃまず無理だ。でもアイツは新人じゃない。」

「答えになってないよ。」

「ふぅ、そうだな。簡潔に言うなら冷気だよ。」

「ますます、わからないんだけど」


 困った顔をして、ジト目でゴウを見つめるニナ。


「精霊武装の魔法系統は火だ。

 瞬間的。・・・物理限界突破が引き起こした超低速世界でヒロキが、我々から見れば超高速で動くヒロキが冷気を持った『氣』を放ち冷凍爆発を喰らわせる。綻びが生じるのは必然と言えよう。氷点下の『氣』は精霊武装を剥がしたと言ったところだが、凄まじい発想の転換と言うべきか。

 さらにそこへダイレクトな超高速で振り下ろされる上段斬りだ。防ぐ間もない。ヒビ割れたガラスに衝撃を加えれば瓦解することと同じだからな。」


 え?と戸惑ったガンキチは、ゴウに質問する。


「魔法については詳しくないですけど、氷結魔法の部類って二つの系統魔法を合わせる合成魔法ですよね?」


 そこまで分かっているのに詳しくはない。と言い張るガンキチにツッコミを入れる者は誰もいなかった。


 その質問にそうだ。と言って平然と受け答えするゴウを見て呆れるニナは、細々と独り言を呟く。


 あの二人、きっと脳筋だよ。と言う独り言にクスクスと苦笑するビーンツ。


「氷結魔法【冷凍爆発】には、魔力値三百が必要な上級魔法だ。しかし、ヒロキがやって見せたのは氷系統の『氣』とスキル【物理限界突破】と構築能力【加速】が生み出したもの。魔力なしでそんな芸当ができるのは、古代人の末裔たるヒロキだけの業だ。」


 はい!?と驚愕の声を上げた矢先だった。


 観客席まで吹き荒れる風圧は、呼吸が出来ないほどに苦しく何よりも肌が鞭打つ。その荒々しい風を防ぐようにゴウが魔法で薄い防御膜を張った時だった。ニナ、ガンキチ、ビーンツが見たのは巨剣【ダモクレス】による殴るように薙ぎ倒す横一閃である。


 巨剣【ダモクレス】は本来、地上戦でなく空中戦の武器であり天上高くから地上へ一直線降り下ろされた剣撃は天災級モンスターを一撃で葬り去る力を持つ。それではなぜ地上戦では不利なのか?それは、あまりにも巨大な剣であるが所以。


 吹き飛ばされたトーマスは、土煙の中からなに食わぬ顔で現れる。


「チッ、マジかよ。」


 薙ぎ倒すように振るった巨剣【ダモクレス】の刀身が崩れていく様子を見て直ぐ様、持ち手の柄をポイ捨てする。


 巨剣【ダモクレス】の刀身の全長は、三メートルを越える巨大さであり硬度も決して柔くはない。それをノーダメージと武器破壊ブレイクされて流石に舌打ちするトーマスはヒロキに問う。


「それはどういう手品だ?」


 ヒロキは、土煙を小さな風圧で吹き飛ばし目を開ける。先手必勝すべく瞳の奥に、血と魂の欠片を流し込みながら質問に答える。


「恐らくはこの先の未来も、この現在や過去でも見放してきたモノだよ。

 構築能力。構築能力はプレイヤーの行動にしても生活や戦闘にも使われるありふれたモノだが、誰も構築能力だけを攻撃転換させたヤツはいないだろ。」

「確かにいないな。第一、構築能力のスキルにしても。構築能力を連ねて組み合わせた連技コンボスキルにしても『コア』を消費する。コアの所持数は個人で異なるが、五つ以上のコアを持つ者は稀だしな。」

「・・・だから先に言っておくぞ。」

「あん?」

「俺の持つコアの数はないんだ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?はぁ~~!?」


 驚き過ぎだろ。と言うか観客席の四人も唖然としている。


「話は最後まで聞け。『ない』と言うよりは、カンスト。カウンターストップしてるんだよ。」


 あれれ?なんでさらに黙るんだ。


「ああ、うん。了解した。」


 実際には了解などしてはいない。コイツは、ヒロキは、常人の域を超越した超人以上の異端的存在イレギュラーになっていると思う他になかったからである。


 常識が通じない相手にこれ以上話しても情報は得られない。それどころか、此方の情報を掠り取って来そうで怖さと好奇心がトーマスを揺れ動かすが心は決まっていた。


 魔剣【クリムゾン・ブレイカー】を大盾で隠してメイン盾の戦法に切り替える。


 トーマスは、ガラにもなく頼りにしたこともない構築能力を使うことにした。まずは思考を【加速】させて引き伸ばした時間の中で策を練り上げる。


 構築能力が仮に無限であり、無数のパターンを持ち合わせている可能性が非常に高い。

 第一だ。初対面の時で既に常識がズレてたし。だからといって、非常識でもないんだよな。オグワード邸地下の回復薬の一件がそうだ。ミネラルウォーターだと一瞬で見切る分析力もそうだが、次の攻撃に備える機転の早さや順応性はアレはヤバい。ここは距離を取って・・・・・・え?消え・・・。


 トーマスの思考は、ほんの一時であり一瞬のこと。構築能力【加速】で引き延ばした時間の中にいたのだから。


 その筈が度忘れしていたのだ。さっき使ったばかりだというのに。咄嗟に『氣』で索敵するが・・・。


「遅い。」


 光学迷彩術式を構築能力だけで発動させたソレは、気配と嗅覚以外の索敵スキルに引っ掛からないステルスと言えよう。『氣』は気配を読み取ることに特化した優れた武器だが、相当な集中力を要する。


 背後から迫る殺気に素早く剣を持ち上げて応対するも、迷いなき上段から繰り出される一撃がトーマスの身体に雷を走らせるのだった。



                        ▲

                        ▼



 麻痺スタンである。


 ステータス上にもそう記載されている。衝撃の力がトーマスの身体に流れ込んで神経を逆撫でされたことによる一時的な麻痺状態は、『痺れて動けない』と言うよりは『痛すぎて動けない』であった。


 トーマスは、視線だけを動かして見上げる。そこにはふてぶてしく立っているヒロキがいた。


「止めにしよう。」


 そんな提案が出るとは思わなかった。

 これじゃあ、どっちが教えてるのかも分からねぇ。なんて、なんて情けないヤツなんだ。


「俺は本気のオマエを見たかったんだ。」


 ヒロキの瞳に写る情けない自分の顔が憎かった。苦しいほどに怒りが沸き上がって、いつの間にか魔剣の灼熱の炎が肌を焼いていた。侵食するように蝕む火傷を見て思うよりも早く折れた牙を殺気に変えて立ち上がる。


「もう一度だ。」


 最初からこうすれば良かった。闘いに全力も糞もない。俺もコイツも冒険者なんだ。そして、幾百の修羅場と幾十の死線と地獄を見てきた人間相手に向けるのは、殺意と本能だけで十分だ。

 俺はそれを望んだ目をしたヤツと幾千も剣を交えて闘って来たんだからな。少なくともハナミチなら問答無用で今の俺を蹴りあげるだろう。


 トーマスは嗤う。ここからだと。


「間違ってた。ここからは一歩も引かない命を懸けた戦だ。ここには、英雄も勇者も愚者も冒険者もいない。敵だけだ。」


 目の色を変えたトーマスは、基本手持ちの大盾を右腕の籠手に装着する。纏う衣は、豪豪と煮えたぎり全てを燃え尽くす炎そのものである。今にも爆発寸前の炎は火花を散らして高熱をもつ青い炎へと変わる。


「大炎陣、豪火滅却!」


 トーマスを中心に描かれた大きな魔法陣を見て、ゴウが息を飲む。


 有り得ないと。アレは火系統の魔導師でも到底辿り着けない究極魔法の領域であり、それを冒険者のそれも魔法剣士が習得できる代物では決してないのだから!


 トーマスのスゴイ業を前にガンキチ、ビーンツ、ニナは息を飲む仕草をした。つまりは、アレがなんなのか分かるゴウに慌てて問い質す。


「なんなのアレ!?」

「僕も初めて見ますよ!」

「ゴウさんなら知ってるよね?」


 質問の最中でもトーマスが放った魔法は、第二形態へ移行しつつあった。周囲の魔素を喰らって肥大化した魔力を強制的に圧縮されてトーマスの口の中へ。


 そんな光景を見れば誰もが口をつぐむ。ーーがヒロキは至って冷静にその行動を分析する。それは嘗ての自分も同じことした。あの魔人化デビルアラートに近いものがあったからだ。


 魔人化は、命を代償とした諸刃の剣ですらない発動者は間違いなく命を落とすが、俺の場合は『命』の代わりに『霊魂』を代用した謂わばソウルブースター。


 霊魂は、勿論モンスターのものだ。"吸血皇帝"を名乗ったヴァルス戦では、低俗な"小鬼ゴブリン"の霊魂を五つ喰らって発動させたが、もしも"悪魔"の霊魂を喰らっていたなら心臓が引き千切れていただろう。


 その点、トーマスのコレはソウルブースターではない。霊魂でなく魔力を喰らったマジックブースターとでも言うべきか。人間の媒体を核融合炉に見立て、爆発的な魔力をどう使おうが俺には通用しない。


「アルティメットスキル発動、【ドラゴンライジング】!」


 周囲の魔素を根こそぎ喰らって無とするその力が招来した瞬間だった。


 それを待っていたかのように、青白い火柱が天上を突く。ゴウの張った火系統の魔法結界をもぶち破るが、地面に描かれた魔法陣の内側に立つヒロキに全ての魔力が奪われる。


 魔力を奪われ虫の息のトーマスは、『氣』で持ちこたえて足をよろめかせながらも歯を食い縛ってニヤリとしている。


「!?」


 いまの表情で何かが分かったヒロキは、一瞬硬直するも攻勢を緩めることなく攻撃に入る。あれだけの魔力を奪われて『氣』だけで戦うのは無理があると判断したからである。


 しかし、それこそがトーマスの狙いだった。


 ビーンツ作の大盾【カリバーナイト】の最大の特性は防御面ではない。超接近戦にも受け答えできるように改良された特殊な装備であり、攻防一体のランタン・シールドとは別物だが刀身が隠されたもの。


 中段から薙ぎ払う形で斬りかかってくるところへ、大盾【カリバーナイト】に仕込まれている刀身が炎を纏って射出される。それに気付いた時にはもう遅い。刀身に刻み込まれた魔法術式【爆裂】がヒロキを襲う。


 まさに回避不可能な致死性攻撃。常人ならば爆散した刃の破片が肌を突き破って、燃焼から壊死する場合もあると言うのに無傷。


「ハッ、ハハハ!笑えて来るな。これだから・・・」


 ドックン。


 激しく脈打つモノを感じて口元に手を。指から手のひらにかけて着いてしまったヨゴレを裾で拭う。


 ポタポタ。


 垂れ下がる何かを無視して必死に一歩を歩く。その目にはまだ殺意があった。


「・・・いいかヒロキ。」


 立ち止まろうとする足を引き摺って辿り着いたヒロキの肩をキャッチして力強く握る。


「やっぱり、お前は強いよ。」

「強くなんかないさ。」

「力が強いんじゃない。心が強いんだ。逆に俺が教えられたよ。俺は明日から貴族として家族を支える英雄になる。それは国の安泰の為なんかじゃない。家族とお前のためにだ。だから、行ってこい。剣王になる最初の一歩だ。」


 ヒロキは、剣舞祭出場権をこうして獲得したである。


 それも立派な立会人の基に、彼の英雄トーマスを撃ち破った超新星と謳われて噂されることをまだ知らない勝者は、それ以上にこの戦で失ってしまった喪失感の方が大きかった。


 失ったと言うよりも『封じられた』と言うのが最もなところなのだが、この竜の力を使えない状態で依頼に挑む。それがどれほど仲間を危険に晒すことになるのかと考えた時には一つの名案が生まれる。


 カルマに解析すれば万事休す。しかし、頼りの蔦のカルマ曰く解析完了まで早くとも三週間掛かると言う答えに勝者ながら憂鬱になるヒロキではあったが。


 まっ、モヤモヤがスッキリした分は満足だしな。取り敢えずトーマスの治療しとくか。


 前向きに考える自由奔放なヒロキを魔剣【ダークリパライザー】の内側に潜むハガネだけがツッコミを入れる。


 オイ、俺は!?


 無論、ツッコミは誰も返さず虚しい時間だけが空回りするのだった。


次回は【#089】のラストから始まるクーア視点のお話。



それと言い訳ではないですが、最近PS4のゲームにドハマりして書くのが遅くなってます。

『ホライゾンゼロドーン』『ニーアオートマタ』…じ、次週は熱中度を下げて書きに専念の予定です。頑張ります精神的に。

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