【#082】 Teacher Part.Ⅲ -夜叉奉行-
●灰色事件編『間接章』●
次話で描かれる合流章を繋ぐクーア×カルマ編最終話。
短いですが、お付き合いください。→ 改稿しましたので文字数二倍になっています。
◇禍福層 寺院◇
カルマフクロウは思い出す。
ヒロキが禁忌魔法【時間跳躍】する前にトレーニングと称して一度訪れた場所だな。
あの時は朱色の鳥居を何重も潜った先には境内があった。真っ白で清廉な胴着と朱色の袴を着用した巫女さんが立っていたが今はいない。
石畳道を歩いて行けば、花が散って緑が多くなっている梅の木。小道の両側の青い竹林。縁起のいい松の木が祝い道を作っていた。ここまでは同じだが、剣道の素振りをする指揮官も門下生もいない。いるのは坊さんが一人で座禅を組んで座っている。
カルマフクロウは、クーアを見る。
『氣』を見ることは叶わないが、クーアにはそれができる。怯えも脅えもない。ただ焦るように曇った眼下に写った坊さんを見て、呼吸が荒くなっている。
改めて【魔導解析】するが、なにも映らない。有り得ない。しかし、実際に起きている現象を冷静に分析していく。
【魔導解析】は、人物や物体に対して何者であるか? 何なのか? を解明するスキルだが、人にも物にも微量ながらも魔素があったり呼吸しているもの。隙間に入り込むことでスキルが発動するが、逆に言えば入り込む隙間がなければ解析は不可能。
【竜の力】にも似たようなものがあるがアレは、別のものだと区別した方がいいかもしれん。【竜の力】による威圧は、魔力だけでなく氣やエネルギー体のすべてを弾き出す。
しかし、あの坊さんが遣って除けているのは【氣の集束】によって弾き出されるのが魔力だけ。それも物質界でなく精神界に影響を及ぼしているのだろう。そうでなければクーアだけが辛い表情を見せることはないのだから。
クーアは動けなかった。
怖いわけではない。恐ろしいわけでもない。ただ『氣』の出力が尋常ではないのだ。
眉ひとつ。一呼吸。流れ落ちる汗一滴でも悟られてしまう【氣の集束】に当てられたクーアは苦しくも踏ん張ることしか出来なかったのだが、―――後ろから急に声がかかって前方に転がり込む。
咄嗟のことに反応が僅かに遅れたカルマフクロウは、後方で暢気にヒョロ顔をする下から飢えまで風情ある着物を着た青年よりも若干老けた男に掴まれる。それも頭上の羽毛が今にも千切れそうなほどの暴力ぷりに、翼をバサバサ羽ばたかせて魔法を発動させる。
幻惑魔法【暗黙の檻】。対象人物一人に対しての視界を一定時間奪う魔法の筈がまるで効果がなかったのか平然と坊さんの方を向いて喋りだす。
「こんなフクロウが俺の相手かよ。
悪いがこれでもギルド『六王獅軍』の隊長まで登り詰めた男だ。【氣の集束】だけでなく【氣の呼吸法】を習得した俺には遊戯にもならんぜ!」
さらに後方から一度は耳にしたことのある声がクーアとカルマフクロウに聴こえ反射的に振り向く。
そこにいたのは、嘗ての恩人だった。クーアにとっては、今のご主人様共々お世話になった人であり。カルマフクロウにとっては一般プレイヤーの一人に過ぎないがそれでも感謝の気持ちくらいは持ち合わせるCランク冒険者。
「ハナミチさんも、持ってくださいよ~」
暗い顔をしながら木箱を三つほど重ねて運んできたのはトーマスだった。
若干老けた青年と同じく武器や防具の類いは身につけておらずプライベートの時間を過ごしていることが分かる。しかし、悠久の時間を過ごしているようには見えない有り様。
クーアもカルマフクロウもここだけは珍しく同意見だった。ああ間違いなく、罰ゲームだなと。
かなり重いようでヨロケながら歩いてくる。真横辺りまで来て、漸く一人と羽ばたく一匹に気付いて立ち止まる。
クーアが不図、見上げるとトーマスは目を丸くして木箱を一つ。また一つ。と落としては壊していき三つ目を青年が拾い上げる。
▲
▼
トーマスは固まっていた。
何時かはまた出会うだろう。とは予測していても速すぎる再会に意識が遠退いていた。我を忘れて三つ目の木箱を無意識に離してしまった瞬間に、違和感を覚えたが無事キャッチされた木箱を見て胸を撫で下ろす。
―――がそれでも壊れてしまった二つの木箱を見て、自分の犯した愚かしさを再認識する。この程度の手伝いも真面に出来ないのか。と落ち込んでいると、銀髪の嘗ては救ってあげられなかった奴隷少女がヒシッと抱き着いてくる。
「・・・ありがとう、ありがとうね。
ずっと。ずっと御礼が言えなかったから。トーマスおじさん、ありがとう。アレが例え、私を救うためじゃなくても。ご主人様を助けてくれただけで私は幸せだよ」
何を言ってるんだ?
俺はビビって逃げた人間だぞ。Cランク冒険者まで登り詰めといて恥ずかしいったらない。なのに、どうしてこんな。こんなどうしようもない俺に泣いてまで感謝の言葉をくれるんだ。
なんの言葉も出てこないトーマスに、着物姿の青年はポンッと掌を広げて赤茶色の髪を包んでくしゃくしゃとする。
「良かったじゃねぇ~か。
悩む必要なんざ皆無だったわけだ。酒、いや。ジジイが居るからな、オマエ等も上がっていけ。どうせ、ただのお寺参りに来たって訳じゃないだろうし。
ああ、そうだ。自己紹介しとこう。俺はハナミチ。あそこで座禅と見せ掛けて眠りこけてるのは、俺とトーマスの師匠で”夜叉奉行”のタクマだ」
あ、あわあわ。とアタフタしながらトーマスから離れたクーアは乱れた白い着物を整えて咳払いする。
カルマフクロウは、右側の肩に乗っかってパチクリ瞬きしたあとにクーアよりも先に名乗りを上げる。
「私の名はカルマと言う。
此方は奴隷少女ではない。ヒロキも何やら勘違いしていたが、アルファガレスト卿がデイドラの烙印を抹消した時点で奴隷ではない。 実に数奇な運命を辿っているが、この娘はクーア。と言う。Fランク冒険者ヒロキの仲間だ」
三人が三人共動揺した。それも『ヒロキ』と言う人物の名を聞いてトーマス・ハナミチ・狸寝入りしていたというタクマさえもが僅かに身を震わせる。
クーアが不思議そうに思う一方で、カルマフクロウは予想以上に伝説を達成した快挙が大きく広まっているな。と思うのだった。
偽りの伝説達成者。とリグルが言うように達成不可能の偉業を単独で挑んだと。クリアしたと信じるのは両手と両足の指の数よりも少ない。
ヒロキを奉る訳ではないが、この剣舞祭で一旗揚げれば彼に対する見方が一厘でも変わるだろう。変わらなければならない。手を引っ張ってくれるレイン。支えてくれるクーアだけでは、まだ足りない。
カルマフクロウは考える。考える。
あと少なく見積もっても二人は必要だと考える。ヒロキと同等か、それ以上の剣術若しくは突破力を持つ豪気なる人間。力だけでなく生活という点で支えになる人間が必要だと。
寺の中に移動した一同に住職タクマの孫娘イロハと言う巫女さんが、お茶と茶菓子を用意してくれた。
ここは僧堂である。
修行者が集団生活を行いながら仏道修行に励む場であるが特別に貸してもらったのだ。何故こういう集会・会議にまで発展したかと言うと、『ヒロキ』なる人物の他愛ない世間話から『灰色の猟奇』という盗賊の話しに刷り変わったことが原因と言えよう。
客人用の紫色の座布団に座って羽を休めるカルマフクロウは、足を折ってホックリとモフモフ羽毛に隠れて目休めて入ってくる音に神経を尖らす。その後方でモフモフ羽毛をさわさわするクーアは、難しい大人の噺よりもお茶と茶菓子に興味が向いていた。
ハナミチはいつも空腹なようで、トーマスに止められるも無視して豆菓子を食しながらお茶をズルズルと啜る。
その最中で静かにお茶の味を堪能したタクマは、カツンと小さな音を立てて湯飲みを置いて暫し上を向いて考える。
「・・・・・・灰色事件か。
全くもって、この国は災いに取り付かれとる。二年前の災厄"悪魔の襲来"。噂話に終わった"悪魔の再来"。ここ数日の内に天災級モンスターが活発化。白金砂丘の南東では、幻獣種が目撃されている。
ここで住まぬ民族・部族等は、これを凶兆だと言う。今は祭事。儂とてあまり大っぴらには動けんが、仕方あるまい」
タクマは三人と一匹を見て決心を決める。
「・・・東の緒島からは、ヤマト大国の王にして比翼議会会長を務める"不変の剣王"カサネ。従者として、ヤマト大国の防人『神楽家』ヴァイルと数百の交易商人たち。
北からは、ホクオウ興国の王女"翡翠の女傑"ビャクヤ。専属騎士として、騎士最強の称号とされる『六華』ケンジと数千の近衛兵。
東からは、カンオウ帝国の皇帝"残虐の雪原"リオッグ。付人として、帝国の将軍ザンクと戦闘部族『ヤオ』が数百人。
北東からは、ボドリスク教国の教皇と司祭数十人が訪れる。大陸中の名だたる大名から貴族・名家が出席する祭事"剣舞祭"の失敗は許されん。
―――して、その情報は確かなのか?」
ハナミチは話題をフラレて食べる口と運ぶ手を止めて、口の中のものが無くなったところでお茶をズルズルと啜って答える。
「ああ、間違いない。
貴金属・宝石の数々を盗み出しているのは、王宮都でも有名なボッタクリ屋ってのは悪い言い方だが実際に悪徳商人が多いのは事実だからな。詰所に連れていかれて正解だったよ。
ただ問題事が二、三ある。
まず一つ目は、"灰色の猟奇"本人から聞いた話だが予告するように鉱石や原油を盗むと言ったこと。
二つ目は、どうして"灰色の猟奇"は悪徳商人・強欲商人から金銭を強奪しなかったのか。
三つ目が一番重要なことだが、そもそもの目的が理解できない」
ふむ。と老け込む。
既に答えが出ていた。しかし、ここで告げては彼等の為にもならん。と考えたタクマは時間の猶予を頭の中で計算して悩んだ結果、王宮都に向かうことにした。
その間、色々な準備をする。と言ってお開きになった。座布団に踞って眠りこけるクーアを余所にカルマフクロウは、ヒロキに【念話】で灰色事件についての情報を送るのだった。
色んな準備と言えど、するのはトーマスが不注意で落としてしまった二つの木箱の木片を片付ける後始末。お茶を淹れた湯飲みを手洗いしたりと至って普通の出掛ける下準備だった。
クーアは、何故かやる気になって巫女さんと二人で仲良く手洗いをしていた。
トーマスは、自分が仕出かした木片の後片付け。ハナミチは、お留守番という名目上の罰ゲームをするらしく総門から順番に、山門・回廊・僧堂・法堂・仏殿・鐘楼・境内の大掃除をするとのこと。
住職のタクマはそのままの格好で外出するようである。黒い袈裟を着込んだ修行僧の格好をしているタクマを見て、カルマフクロウは少々可笑しく思うところがあった。
修行僧というのは、一般的に寺で掃除や座禅などをして精神を鍛える者の事を言い間違ってはいない。しかしタクマの僧侶としての階級は『大僧正』と、とても高位な位置付けの人間がそのような格好など罷り通る訳がない。ただ、それをタクマは苦笑して目を優しく瞑ったまま語る。
「ふふふ。よく見ておるのぉ。お前さんは目利きの才能があるのじゃろう。
カルマ。と言ったか。お前さんは、ヒロキのなんだ? 仲間と言ったが、魂魄の存在でしかないオマエは何を求めて彷徨っている」
カルマフクロウは、パチクリと瞬きをしている間。時間にして三秒間を百倍に引き延ばして思考に更ける。
『・・・さて、カルマ。行こうか、俺たちの新しい一歩だ・・・』
「カルマ?」
『・・・アンタの新しい名前だよ。
俺がこれから冒険していく上で、今起こったことは忘れないように刻み込む。カルマも記憶能力は確かでも忘れないようにという願いからだ・・・』
「カルマとは、現在行ったその行為や行動が未来に役割を持って影響を与えることだ。ふむ。良かろう。その名、確かに頂戴した」
ああは言ったものの、私は未熟者だった。ヒロキには魔法に対する基本・基礎・技術・応用能力を身に付けたが、魔王眷族には勝てなかった。
エンブリア図書館の古書の一説を簡略化して訳すとこうなる。
―――世界の一部を統治する魔王は五体存在する。
魔法大戦で災厄を撒き散らすだけ撒き散らし、英雄世代最強のプレイヤー"英雄王"アカツキを倒すも同時に命を燃やして逝ったとされる魔王レイニー=”ルシフェル”=サタン。
地上界と地獄界を繋ぐ門の鍵、すべての魔法を破壊する固有能力を重ね持つ魔王ゼファー=”マグナス”=グレイザー。
知識の保管者にして『全知全能書庫《ソロモンの頭脳》』を管理する魔王ノルン=”ソロモン”=フェメル。
五大魔王の中で唯一モンスターであり永久凍土大陸に城を築いた原初吸血鬼の王にして魔王ヴィネア=”V”=クリストファー。
現存する魔王最強と謳われ禁忌魔法【時間跳躍】でヒロキの肉体を未来へ送った"最古の魔王"魔王ジュニア=”X”=キングナイフ。
古書には、禁忌魔法の記述は見受けられなかった。一般人が触れていい領域ではないのだろう。すべての魔王が悪ではない。とも記されていたが禍の頂点の眷族にさえ勝てなかったなら、私の役目はただの傍観者ではいられない。
クーアには、まだ見ぬ才能と強者たる資質を持ち合わせている。ヒロキがそれを願わなくとも、クーアが望むなら私は成長を後押ししよう。
カルマフクロウは、引き延ばした時間の中から返り咲くように目を開ける。
鹿威しの竹筒の上に掴まる自分を同じ視線で、縁側に座って小池で泳ぐ鯉に餌を与えるタクマが見える。
"夜叉奉行"という、この男になら任せられるだろう。と考えるカルマフクロウは先程の質問を答える。
「ヒロキを支え、共に真なる世界を一緒に覗く。そう誓ったのだ。誓ったからには、くだらんプライドはこの際捨てる。私の力では、クーアの潜在能力のすべてを引き出すのは難しいだろう」
「虫が善すぎるとは考えなかったのか?
まあいい。儂は確かに、ハナミチとトーマスの師ではあるがもう隠居の身よ。お前さんだから言うが、儂は国王守護部隊『狩猟』に在籍する俗称『暗部』の育成を任せられた人間だ。立場上からしても、これ以上の負担は老体には染みる」
暗部の育成を・・・。『氣』を習得したプレイヤーの強さは超人クラスに匹敵する。ハナミチは、トーマスよりも上の技量を掴んでいた。【氣の呼吸】と言ったか。視界を黒く染め上げる幻惑魔法【暗黙の檻】が効かなかったのは、ただ単に氣の流れを読んでいた訳ではなさそうだった。
無理強いは出来ない。しかし『氣』を完全にコントロールし得、クーアの潜在能力を引き出すことが叶ったならヒロキと並んで歩くことが出来るだろう。
退くわけにはいかない。と睨みを効かすカルマフクロウにタクマは、ソッと頭上に手を置いて撫でる。カルマフクロウが見たのは、笑顔のタクマだった。
「そうツンケンするでない。幾ら『器』がフクロウであれ、怒れば顔に出る。
儂は確かに、あの娘の師には成れんがイロハならば構わんぞ。孫娘は、この寺神社の巫女だが儂と劣らず強い」
首を前方に屈んで御礼を言う。
「感謝する」
「感謝なんぞ必要ない。
『狩猟』の筆頭クルス殿の指示で全隊員に『氣』の修練を儂に任ぜられた。この二年間で儂が手解きした暗部は、百人を越えるが内の二十人弱が国の仕事を全うして或いは全う仕切れずにこの世を去った。
この老駆よりも先へ逝ってしまう。王がこの二年間に望んだのは、脆弱な国の基盤を再構築することだった。隠居の儂にも縋る位だ・・・・・・スマンな。老体の戯言だとでも思ってくれ」
ういうい。と撫でられるカルマフクロウはタクマの言葉を察して何も言わなかった。今の言葉でマイト王が何を望んだのかが分かったからだ。
国の基盤をたったの二年間で再構築する。何をそんなに急ぐのか。王が恐れる程の何か大きな闇が迫りつつあるのか。そうだとしても、今は灰色事件の解決が先か。と食器洗いに勤しむクーアを見て思うのだった。
暫くしてクーアが、ぽふり。とカルマフクロウの羽毛体に飛び込んできた。
ファンシーなアニマルグッズを抱くようにもふもふ弄る平和な光景にクスリ。とイロハは苦笑する。
「終わったよ~、カルマフクロウさん」
その一方で、此方も掃除終わりましたよ。と報告するトーマスにタクマは、ハナミチ共々に罰ゲームをさせるものだと思っていたのだが意外にも一緒に着いてくるように命じていた。それもクーアの護衛と称して一緒に出掛けることになった。
まあ、どちらにせよCランク以上の冒険者でなければ中層以上の階層には足を運べないのだから、付添人が必要だとカルマフクロウは考える。
出掛ける前にカルマフクロウは、せっかくシロナさんから頂いた着物にシワがよっていることに気付いて小さな水魔法と熱魔法で処置した。
全くもって世話のやける娘だと思う一方で、トーマスは見事な処置だと褒められるが嬉しくは思わなかった。潜在能力を引き出すよりも先に、女の子としての嗜みを教えるべきかもしれない。と心の奥で思っていたからだった。
「それでは行こうかのぉ。
イロハ。ハナミチがサボったら儂の代わりにオシオキを頼む。もう日暮れが近い。帰りは明日以降になると思ってくれ」
「はい、わかりました。
ただ・・・外出するからと言って、色町でハネをのばさないようにお願いしますよ」
トゲある物言いに苦しむタクマを見て苦笑するトーマスだったが、度肝を抜くクーアの一言が心に突き刺さって何も言えなくなってしまったのである。
「タクマおじいちゃん、イヤらしいの?」
その言葉にイロハだけが苦笑して、慌てながらクーアに近寄っていく。純真無垢な表情を向けられて言葉に詰まるタクマは、トーマスを見た後にカルマフクロウを見るなりガシッと身を掴んで真に迫る。
「後は任せた!」
切実に頼み込むタクマに、カルマフクロウはキッパリと断りを入れた。ショボくれるタクマは、優しい笑顔を見せるクーアに陰鬱な溜め息を吐きつつ答える。
「お嬢ちゃん、覚えておくといい。
漢はな、ストレスを溜めていくと爆発するか腐るんだ。定期的に処理しなければ・・・な! と言うことで、さぁ行こう!」
老体の癖に先走る後ろ姿にトーマスは笑いながら、カルマフクロウはクーアの肩に乗っかって、クーアはイロハに手を振って王宮都に向かう。
そこで嫉妬の炎を燃えるクーアをあやすカルマフクロウを見て、二人は苦労人の気苦労を間近で感じながら遠い目で見ていたことは言うまでもない話だろう。




