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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第一章 「裏切られた世界」
7/109

【#007】 Tactics -怒濤の兵法-

こんばんは。

二度目の改稿になります。

{2015.6.28}→{2016.1.10}改稿完了しました。

最後まで読んで戴ければ幸いです。


 PVPプレイヤーバーサスプレイヤーは、元来「人対人で行なう対戦」の意。

 オンラインゲームの活性・流行・普及に伴って読み書きされるようになったゲーム用語。

 それ以前は通信対戦や対人対戦など広く使われていたという。

 ゲイルVSヒロキ。

 制限時間は十分。

 ゲイルの勝利条件は、制限時間内に対戦者を意識喪失させるか、制限時間の経過。

 ゲイルの敗北条件は、魔法の行使。構築能力の発動。初太刀が接触。ダメージを受けた場合。

 ヒロキの勝利条件は、制限時間内に対戦者へ初太刀もしくはダメージを与えた場合。

 ヒロキの敗北条件は、意識喪失もしくは制限時間経過。


「これより公式なPVPを執り行う。

負けたプレイヤーにはそれぞれペナルティとして伝えた通り実行してもらう。

それでは始め!!」


 マイトの掛け声と共に、俺は訓練用木刀を中段で構えて呼吸を吐く。

 掛かって来い。と挑発的に右手の四本の指を曲げて構えさえしないゲイル。

 初戦の過ちを経験に変えて同じように走る。

 一歩。二歩。と歩き慣れた砂丘に足を取られることなく距離を詰める。


 連技を発動する。

 連技とは、構築能力とこの世界に存在するシステムスキルを掛け合わせて発動する必殺技のこと。

 この世界に存在するシステムスキルというのは、例えば接近戦闘で剣術を使おうとすると【兜割り】や【中段斬り】など、拳なら【正拳突き】や【平手打ち】などRPGで使われる基本攻撃。

 また連技をシステムコピーして名前を付けて登録保存しておくと、名前の詠唱オーダーすることによって自動的に発動することが可能だという。

 連技とオーダースキルの違いは、コアの消費量だ。とクルスは言う。

 シロザメ戦で使った身体技能スキル【瓦割り】がいい例だ。

 アレもまた連技と言う扱いになるらしい。

 【瓦割り】で使った構築能力は、モンスター自体の体長が大きかった性もあって飛び上るために【跳躍】。打撃力を高めるために【硬化】。即効的な攻撃もあるが速度を上げることによって打撃を大幅に高めるために【加速】の三つ。

 これをオーダーシステムで行使しようとすると、コア消費は一つで足りるのだ。


 俺はこの五日間鍛え上げられた持ち前の身体能力だけで、駆けて気付く。

 「AGI+15」の能力値上昇が活かされて円滑に体が動いていることに。

 しかし対戦者の洗礼は甘くはなかった。

 レベル百五十オーバーの身体能力をアクセサリーでペナルティを背負っているにも拘らず、爆発的な火力はヒロキの腹部に強烈な衝撃を与える。


「オーダー、【気功拳】」

「がはっ‥」


 ゲイルには身体能力のみが、このPVPで認められている。

 これは詰る所、身体技能スキルなのだろう。

 腹部に大きな穴が開いたような衝撃で五メートルほど吹き飛ばされ、砂煙がヒロキを覆ている。


「おいおい、もう終わりか。

呆気ないな。気功拳は誰だって使える初期の初期。

こんなんでくたばってたんじゃあ、五日前と同じ…ん?」


 砂煙が晴れた場所には初心者もとい素人の姿はなかった。

 五日間。ヒロキが学んだ時間は、一般プレイヤーが経験する筈の半年を凝縮してを吸収していた。

 その驚異的な応用能力にクルスは手汗を握っていたほど。

 バイモンもそう感じでいた。

 採取・調合技術を教え込んでいたが記憶能力と学習能力などズバ抜けていた。

 それだけの才能と素質を持っていることを二人は知っていた。

 だからこそ傍観席で、にやりと笑っていたのだ。


 俺は倒れることなく平然と立っていた。

 痛みの慣れ。と言うのもある。

 伊達に幾度となく喰らい続けたわけではない。

 訓練用カカシのストレートに合わせて防具一式に、攻撃を受ける前にコーティングするイメージを込めた【硬化】を纏わせていたのだ。

 それに加えてこの対戦では攻撃が当たる寸前に【集中】で【硬化】の出力を上げていたのだ。

 再び走り出す。

 ゲイルが繰り出す強烈な一撃を喰らっては、走り出すことを繰り返している。

 その勇姿を傍観席で見守る二人は昔ごとのように話していた。


「最初こそは、絶望的な体力もスタミナも今ではうまく立ち回れているな」

「ええ、軽い十キロのランニング三セットも一セット半でダウンしていましたからね」

「おいおいバイモン。それはハードワーク過ぎやしないか」

「……自分の時は体力強化訓練にとマイトさんから、五十キロマラソンを一日三セット熟すように言われた物に比べたら余裕だと思いますけど」

「いや、それマイトさんの冗談だから。

どこの軍隊生活を言ったのかは知れんけど、学生の年頃のヒロキにも軍人にもそれは無理だから」

「冗談?」

「そう冗談って、そんなに暗い顔をするな。

いまはヒロキを応援しようじゃないか」

「クルス、バイモン。オマエ等、ヒロキに何を教えた?」


 突然の審判を務めるマイトが問答の意味が分からなかった。

 二人は一時硬直して、お互いに顔を見合わせる。

 分からない。という顔のままヒロキの戦いに目を向ける。

 そこで見たのは明らかな決着。

 勝敗が見て分かるほど明確な終わりが、赤い一筋の流星と砂煙の先にあった。

 木刀の刀身が折れた状態で下段の姿勢で立つヒロキ。

 胴体に装着していたプロテクターがひび割れたゲイルの驚いた表情を示している。

 ヒロキの初勝利の瞬間だった。


 決着二分前のこと。

 ヒロキは一般プレイヤーの倍以上の速度で、ゲイルの攻撃パターンやクセを分析していた。

 ある程度の攻撃なら躱すほどに上達していた。

 しかし学習と応用能力の成長、伸びはここからだった。

 緩むことのない猛烈。と言っても過言ではない体捌きの最中でヒロキが辿り着いたのは、生きることよりも勝利に執着していたからこそかも知れない。

 サバイバルスキル【サーチ】とは本来、一定空間をスキャンしてモンスター位置を探るもの。

 これをヒロキは「攻撃の回避」と「動体視力」という二つの事柄を自分の眼球にインストールするという発想に辿り着いていた。


 【サーチアイ】コアの消費は一つ。

 維持可能時間は四十秒。クールダウン時間は二十秒。

 視界にのみ【サーチ】の力が作用し、相手が次にどう動いて攻撃してくるかがよく分かるようになり回避能力を格段に上げてもう一息のところまで詰め寄る。…が、所詮はその程度。

 如何なる攻撃もシステムスキルに頼ったそのモーションは、何年も積み重ねてきた経験の前ではすべてが瓦解していった。

 知っているのだゲイルは。

 少なくともレベル百までの接近戦闘「格闘」や「剣術」の型を熟知しているのだから。

 当然あっさり回避される始末だった。


「オマエはよくやったよ。

でもな、マイトさんも言ってたろ。

世界はオマエが思っているほど甘くはない。

夢を潰すようで悪いが、オマエじゃあ俺には勝てない。現実を――」


「知ってるさ。

だから俺はそれでも抗うんだ。不公平な現実に」

「弱者の戯言だな。もう、そこで寝てろ」


 ゲイルは決着をつけるために初めて自分から動いて来た。

 生きること。

 勝つこと。

 歩くこと。

 走ること。

 どれも簡単であって簡単でない。

 ここまで道のり。

 ここからの道のりは決して優しいものでもない。


 自棄を孕んだ行動。

 すれすれかも知れないがヤルしかない。

 誰にも見せていないこのスキルなら、ゲイルのスピードを凌駕出来るかも知れない。


「【サーチアイ】オーバーエフェクト、【ドラゴンライジング】」


 偶然、発見したと言っていいだろう。

 武装スキル【竜の力Level.1】は詳細を見た時のこと。

 感情に左右される特殊スキルの一つで、怒りが湧き上げると同時に攻撃力が跳ね上がる。

 一振りで砂丘が割れるほど。

 これを冷静かつ安定させた闘争心なら一体どれほどのなるのか。という好奇心からヒロキは【サーチアイ】に【竜の力Level.1】を掛け合わせて発動させたのだ。

 【ドラゴンライジング】コアの消費は三つ。

 発動時間二十秒。クールダウン時間六十秒。と燃費は悪いが、能力値が軒並み上昇している。


{……}

{ヒロキは武装スキル【サーチアイ】をオーバーエフェクトしました。}

{アルティメットスキル【ドラゴンライジング】を発動しました。}

{ヒロキの人間DNALevelが更新。

基礎能力とコアがレベルアップしました。}

{ヒロキのステータスが更新。

体力値;1350→1500、筋力値;70〈+5〉→85〈+5〉、俊敏値;80〈+15〉→100〈+15〉、耐久値;80〈+9〉→90〈+9〉、器用値;140→150。コア;8→10。}

{ヒロキのステータスが二十秒間更新。

体力値1500→2500、筋力値85〈+5〉→100〈+5〉俊敏値100〈+15〉→115〈+15〉、耐久値90〈+9〉→105〈+9〉、器用値150→165。}


 クルスから聞く限りDNALevelというのは、プレイヤーの種族としての能力値のことを指す。

 あまり上昇し過ぎると異端の存在となるらしい。

 実際クルス自身がそうだ。と言っていた。

 元は俺と同じ人間[ヒューマン]だったがらしい。

 鬼人[レイドスレイヤー]と言われる異端者になり、周囲から耐え難い苦痛と苦難が襲ったという。


『強靭な力を求めた代償は計り知れない。

ヒロキ。僕のようにはなるな。

DNALevelが一定値を超えれば人間ではなくバケモノに成る』


「――!? 

ヒロキ。オマエは何者なんだ」

「まだ、人間だ」


 次の瞬間だった。

 一蹴りのつもりで砂地を蹴ったその一歩はあまりにも衝撃的なものだった。

 まるで流れ星のように突き進む赤い波動を纏ったレーザービーム。

 白い砂丘を真っ二つに引き裂いて、砂煙が立ち上るほどの威力を持っていた。

 自分の持っていた木刀の刀身は耐久値の限界を越えてしまったのだろう。

 ブレイクと言われる武器破壊を起こしていた。

 ブレイクしてしまった武器は二度と使うことは出来ずに、強制的にインベントリ内『Item』へ錬金術で分解したような状態で保存される。


{ヒロキが装備していた右手武器;訓練用木刀がブレイクしました。}

{木刀の柄×1、崩れた木材×2をイベントリに強制収納しました。}

{PvP、ゲイルvsヒロキの対戦はヒロキが勝利しました。}

{ヒロキのステータスが更新。

称号;【*初心者卒業*】と武装スキル;【竜の力Level.2】を獲得しました。}


「―――……」


 その後のことはよく覚えていない。

 気付いた時。

 「反省」という紙を顔面に張られたゲイルが縛られていたとか。

 別のテントに放置されていたとか。

 睡眠薬で眠らせた後にミミズやムカデを耳の中に放り込んだとか。はまた別のお話。

いかがでしたでしょうか?

誤字・脱字がありましたら、ご報告お願いします。

今後の予定ですが、物語の内容が全く別物になっていますので続きを読んでも意味不明な点が多々出てきます。

なので来月中に第一章Restart完了する見込みです。

土日祝日を有効活用してなるべく早期投稿予定ですので、それまでお待ち下さい。それではみなさん、また近いうちにお会いしましょう。おやすみなさい。

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