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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第二章 「水晶洞窟の冒険と奴隷少女」 Episode.Ⅲ 《奴隷市場での覚醒譚》
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【#060】 Banquet Part.Ⅱ -英雄の宴-

インターネット接続復旧しました。

先週は色々とGWの為にと。仕事に励んで本日から10日間の長期休暇です。GW後半? 中間からライブ参加などで書けないことがありますが、五話以上上げられるように努力致します。

さて今回は宴席での後半戦です。楽しんで戴ければ幸いです。



 商人のベルさんから頼まれたのは、シェンリル王国の最下層『奴隷市場』で起こっている奇妙な動きの調査。

 近年、この国に集められた奴隷の数が異常値に達している原因がBブロック統治者デイドラにあるという。


 デイドラは、この国の危険人物レッドリストとして目を付けられているらしく。その行動は、犯罪者と同じで悪質な手口で密輸入の事業を展開しているのだとか。

 手口はこうだ。

 近隣諸国や遠方の国々に商人を派遣し、最安値で奴隷を買い取る。奴隷に非合法な薬物を体内に忍ばせて密輸する方法だ。

 現実世界なら税関の職員が麻薬探知犬を連れて空港を訪れる人や物から放たれる異臭を嗅ぎ分けたり。不審物の持ち込ませないためにデジタルな機器を投入していたりする訳だが、そこまで科学技術が進歩していない世界で発見は困難とされている。


 ギルド「赤星聖教騎士団」を裏切って反逆者となった彼の行いで悪行を掴めたわけだ。しかし今となっては昔のこと。デイドラが欲していたのは、ギルドの財産だったからだ。

 幹部だったデイドラは、隠された財宝を手に奴隷商人ケイマンが統治していたブロックを丸ごと戴き統治者となった。今やシェンリル王国の裏社会に君臨する危険人物。それがデイドラだ。


 なぜ、そんなヤツを野放しにしているのか?

 それはギリギリのところで尻尾を掴めないでいるからだ。とベルさんは言う。

 統治者となれば税金も高額なものになる。それを毎月納めているので騎士団も手を出せずにいる。


 今回の依頼は、騎士団のように目立った存在ではなく、顔を知られていない俺が適任らしく。デイドラが統治するBブロックの動きに気を配ってほしいとのこと。

 勿論、報酬もある。これから旅を円滑に進めていく上で必要不可欠な人材。専属の支援者を紹介してくれるという。

 支援者とは、荷運び・生産技能を取得したプレイヤーのこと。目的地までの道程みちのりを案内・毎日の食事を用意などよろずに通じるサポーターのことらしい。

 支援者にはそれぞれレンタル期間が設けられているが、ベルさんの紹介なら期間なし・レンタル料金なしだが、冒険する以上は殆どが自給自足。支援者を養うこと・守ることは必須事項だとか。



 悩むことばかりである。

 酒は旨い。メシも美味い。

 クーアが笑っている。レインが俺の横で転た寝している。

 不図思う。

 この日常がずっと続けばいいんじゃないか?

 奴隷市場にはクーアを連れてはいけない。

 トラウマも。泣き顔も見たくない。

 我儘ーーかもしれない。だけど… 。


「なんだ、また悩んでいるのか?」


 話し掛けてきたのはマイトさんだ。

 いつの間にか酔いから回復したのか、俺の肩を支えに腰を下ろして空いたグラスに麦酒ビールを勧めてくる。

 有り難く頂戴した。


 高価だったガラス製品も今や大陸中に流通しているようで、居酒屋の雰囲気を出すためにガラス張りの引き戸や円に加工した美しい装飾が施されている。現にこのグラスもそうだったりする。

 冷たい黄金色の麦酒と白くキメ細やかな泡が透き通ったグラスに映えて見える。

 グビリ、と一口頂く。

 グッと心を鷲掴みにするコクとキレが素晴らしい爽快感を生んでいる。アルコールを少量含んでいる性もあって頬が焼ける。

 そんな俺を見て苦笑している。


 でも、俺にとっては笑ってもいられない。どうしてここまで歓迎されるのか。ベルさんの依頼絡みではないことは明白だからだ。仮に今回の宴がベルさんの依頼だったなら、最初に言うべきだし。何よりもこのメンツだ。 


「ーーマイトさん。

 俺を呼んだのは何故ですか?」


 この町の。この国の中心核のメンバーが一同に会するとなれば、共通項がある筈だ。右から最強の魔導士、オーダーメイドの創作鍛冶師、遊戯全般を知り尽くす情報屋、英雄王が組織したギルドの筆頭魔導士、この国のギルドを統括するギルド商会の会長、そしてシェンリル王国の国王。

 どう考えたって普通のメンツではない。


「相変わらず深読みが得意だな。

 酒の席なら難なく話せると思ったが、そうは巧く運ばんもんよ。

 なあ、ヒロキよ。

 ワシたちのギルドに加入する気はないか。

 ワシ等は、この世界の秘密を追っておる」


 ギルドか。

 それが共通項なら有り得ない話でもない。

 でもーー、


「ーー秘密ですか。

 …マイトさんは、この世界をクリアしたいんですか。

 それとも真実を知りたいんですか」


 ゼンさんが言っていた。

『…実際にクリアした人間がいるという話だけあって鵜呑みには出来んしのう。

この目でクリアした瞬間を目の当たりにしたわけでもない…』

 この世界のクリア条件は最初に出会った少女が言っていた。

『…この世界に隠された九つの秘宝を見つけ、九つの謎を解明すること…』

 俺はまだ秘宝も謎も知らない。

 クリア条件こそが真実なら、それは―――、


「両方かもしれんの。

 古代人が築き上げた理想郷ユートピアは何故崩壊し、ワシ等新生者と転生者がこの世界で生を受けたのか。

 ヒロキよ。お前さんは、真実の最も近い位置にいる。古代人の末裔たるお前さんには先人たちの血を持ち、力を有している」


 やっぱりそうなるのか。

 古代人が築き上げた理想郷とは、恐らくはダンジョン『魔窟』にあった崩れかけた壁画がそうなのだろう。

 何らかの兵器の壁画、魔法を使う壁画はなかったけ。宝石だろうかダイヤモンドの形をしたものを天に捧げて何かを生み出す。そんな壁画があった。

 古代人の力の根源とは、コアではなかろうか。と俺は思う。

 しかし、一つだけ分からないことがある。

 それは古代人の血だ。何故に古代人だけが異なるのか。サッパリだ。


「でもそれは、俺が転生者であって魂魄を納める器が古代人の肉体だっただけのこと。俺自身には価値なんてありませんよ」


 そうだ。

 俺は二年前の死に戻りから、プレイヤー主に転生者の肉体構造を知った。

 現実世界から引っ張られた俺達の魂魄は、生命反応のない肉体を器にする。原型の留めていない肉体に応じて、再構築に使うエネルギーが多いために情報が失われる。情報とは記憶だ。

 そして一番重要なのは、再構築した肉体に魂魄が同化してありとあらゆる神経・感覚が解放オープンされる。痛みも、臭いも、辛さも、喜びも、怖さも、哀しみも現実世界と同様に頭が、心が分かってしまう。

 死んだ人間は意識体の消失。この世界に定着していた魂魄が離れて消えることで、完全なる死を遂げることを俺は身をもって知った。

 俺がいま生きているのは、禁忌を犯したからだ。黒結晶洞窟で俺が倒したモンスターの血肉と膨大な魔力をセカンドプレイヤーの魔導書カルマを仲介して俺は魔人となった。ただ、それだけだ。


「価値なら十分にある。

 お前さんには、魔力がない。ゲーム知識もないのに努力を実らせ華を咲かせた。それだけでもスゴいのだ。

 ヒロキよ。もっと自分を誇れ!」


 マイトさんはそう言って離れていった。

 勝手を言う。

 二年前と比べたら雲泥の差かもしれない。でもそれは力だけだ。

 権力には勝てっこないのだ。と身をもって知ったから言えることだが。

 自分を誇れるわけがない。

 クーアに辛い思いをさせて手にした一握りの自由さえ、俺は守れなかった。

 アルファガレスト卿から差し伸べられた救いの手を希望にしないと、生きてはいけないほど臆病者になった自分を誇れるわけがない。


 暗い顔を浮かべる。

 そんな俺を見てか、転た寝していたレインが背中にふんわりしたモノを押し当ててくる。見た目ない胸だったが、柔かな感触が直に伝わるほどに成長したオッパイと甘い吐息が大人びて見える。

 レインの名前を呼ぶが、巧く言えず口ごもる。


「もう…また暗い顔になりゃってーー…ダメだよ!

 わりゃしたちは仲間なんだから…ね?」


 言動が酔っている。

 お酒は強い方ではないのだろう。

 眠そうにする仕草をしている。

 それでも俺を励ましてくれているのだ。

 半分上を見上げて涙をグッと堪えて、レインの細い腕を握る。


「ありがとう。レインーー」


 そうだ。…そうだな。

 俺には仲間がいる。レインがいる。クーアがいる。

 一人じゃない。


「マイトさん、俺はまだ先のことは分からねぇ。

 でも、今はさ。世界がどうとか、真実がどうとか、秘宝や謎なんて二の次にしかならねぇ気がするんだ。それに俺は楽しみたいんだ。何かに囚われるよりは、縛られるよりは、二人と一緒に過ごしたい。

 一緒にバカやって、ハシャイで、泣いて、笑っていたい。それじゃ、ダメかな?」


 マイトさんは少し驚いたような顔をした。

 ただ、それは最初だけで後は苦笑して、――そうか。そうか。と言ってくれた。


 きっとマイトさんは、俺のことを心配してくれていたのだろう。二年前に初めて出会った頃、俺には自殺願望があった。

 罪の意識に刈られた衝動だったのではないか。と今では思う。

 それでも俺は仲間が傷付くのはイヤだ。自分が死ぬよりも、それはイヤだ。だからか、俺はいつも死線とぶつかる。守りたい者の為に平気で死線を潜り抜ける。

 それをダメだ。と怒ってくれたのがカエデとここで眠そうにしているレインだ。


 既に畳の上でデキ上がって酒瓶を手にスヤスヤ。と寝ているクーアの傍に寄る。

 プニプニ。と頬を突いて起こそうと試みるが、この可愛い寝顔を崩すのも勿体無い気がしてラストオーダーを取ることにした。

 そう言えば最初の懐石料理から始まって『鶏の唐揚げ』『胡瓜の紫蘇漬け』『ホオグロザメのお造り』『プチプチ枝豆』『雲丹麹』『桜ユッケ』『ゴブリンの干物』などなど。


 う~ん。どうなんだろうね。

 あるとは思ってなかったけど、『ゴブリンの干物』は中々に親しみやすい味わいだったのだが美味しく召し上がったのは、俺とクーアだけで。他の方はドン引きしていた。レインは涙目で慰めてくれた。何故なのか?

 しかし『桜ユッケ』は極上の一品だったと言わせて貰おう。細かく切られた赤身肉と玉葱とウズラの黄身を軽く混ぜて食べるのだが、美味い。旨いしか言葉が出て来ないくらいに美味なのだ。

 店の人が目の前で鶏肉を二度揚げして召し上がる『鶏の唐揚げ』に、レモンをピュッとして食べるパリッとした衣。ジュワッと口の中で広がる肉汁。

 あ~~、マジで美味かったな。続けざまに揚げ物を食べた後にサッパリしたモノを食べたいと思うもの。『胡瓜の紫蘇漬け』は最初のツマミとしてイケるのだが、こういう揚げ物の食後にぴったりだ。

 『プチプチ枝豆』には麦酒。『雲丹麹』には日本酒。『ゴブリンの干物』には焼酎が最高のお供だった。『ホオグロザメのお造り』は、赤黒いクセが強い刺身でクジラ肉に似ている。とマイトさんは言っていたな。


 〆の一品と言えば、オムソバと言う人もいれば茶漬けと言う人もいる。

 因みに俺は茶漬け派なので、『種無し梅のお茶漬け』。クーアは寝ているのでなし。レインは『昆布茶の昆布茶漬け』を所望していた。

 はふはふ。ふーふー。を繰り返して食べるとお茶と梅の酸味とご飯粒の旨さが溜まらん。オカワリしたいとこだけど、満腹より腹八分目の方が幸せな感じがする。


 〆も食べ終わって幸福なひと時を喋りで締めくくると、太っ腹のマイトさんが全額支払ってくれた。金貨が何百枚イってしまったのかは敢えて聞かなかった。青褪めた顔だけで十二分に分かっていたからだ。

 料亭を出たところでゴウさんは二次会だ! とか言って青褪めたマイトさんとカイエンさんを連れて夜の街へ。

 シロナさんとクモさんは意気投合して、男を釣り上げる…。と訳分からないことを言ってベルさんを強制連行していった。

 俺達は? と言うと。レインが冒険ギルドは宿舎になっているから問題なし。と言うので戻ってきたわけだがニナさんがカウンター席にいないので勝手にお邪魔することに。



♢冒険ギルド 宿舎♢


「悪いなレイン。部屋に泊めて‥‥んん‥‥―――」


 薄暗い闇だ。

 部屋に入った俺を襲った眠気と摂取し過ぎたアルコールに負けて、そこで意識を失ってしまった。酩酊するほどは呑んでいない筈なのに、そう思う俺の背後から女の子特有の甘い香りがした。


 レイン?


 心の声は届かない。

 どうしてレインがハンカチを持っているのか。どうしてクーアが目を覚まして、レインと一緒になって俺をベッドに運んでいるのか。俺には夜が明けるまでサッパリだった。


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