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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第二章 「水晶洞窟の冒険と奴隷少女」 Episode.Ⅲ 《奴隷市場での覚醒譚》
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【#055】 Reunion -翡翠の涙-

PCがネット接続出来ないので、スマホから投稿。

スマホの文字変換に慣れないため、少々手間取ってます。インターネット再接続までこれでいく予定ですが、来週は如何なものでしょうか?

ガラケーからスマホにチェンジして、一ヶ月ちょいちょいですので、誤字があるかもしれませんが、最後まで読んで戴けたら幸いです。


 ワアアァ――!! と溢れる歓声が冒険ギルドの地下決戦フィールドを埋め尽くす。勝者のヒロキを胴上げするほどの歓喜に若干の戸惑いを感じつつ、自身も喜ぶ。

 他の冒険者の話では、俺が対峙したグラップとベニの両名は最速でEランクに上り詰めた開拓世代の転生者らしく同期としては格上で逆らえなかったらしい。

 しかし、その両名を一瞬で倒したFランク冒険者。つまり俺が同世代の人間だと思ったらしく歓迎しているのだ。


 ………え!? 違うんですけど…。とは言えず仕舞いで、冒険ギルドの食堂は一気にFランク冒険者が駆け込み宴を始めた。勿論主役は俺だが、サバイバルスキル【隠蔽】でコソコソと逃げるように脱出した。

 冒険ギルドを抜け出した俺は、真っ先に商人ギルドに行こうと入り口を出た途端。誰かに足を引っかけられた。躓くも立ち直して器用に踵だけでUターンすると、見覚えのある顔が二つあった。


 一人は自分よりも身長が僅かに小さいものの、黒い薄手のローブと分かり辛いが二年前よりも成長した胸の双丘。

 短めなスカートの性か、それとも露出させているのか白い太腿と膝が見えている。脚部は大人目な黒のロングブーツで隠している。

 目は潤目で腫れていて先程まで泣いていたのだろう。それでも特徴的な栗色のショートヘアと紫色の瞳を見ると彼女であると分かる。

 レインだ。

 二年前。幻想砂漠スノーガーデンで出逢い、薬師を目指すと言って兄貴のクロムと俺とクルスで最初の冒険をした仲間。

 あれから随分と時間が経ったな。

 クロムはどうなった? そう言いたいけど、それを阻むようにもう一人の少女が涙を流して駆け寄ってきた。


 翡翠の掛け着はあの時のままだ。

 初めて出会った時、エリンギみたいな食材モンスターを弓で仕留めたっけかな。

 覚えてる。そのピンとしたモフモフの黄色い耳。相も変わらず露出が好きなのかおへそを丸出しにして黒のスパッツを履いている。

 当時よりも筋肉質になった腹筋や引き締まった脚部が、この二年の内にどれだけ過酷なトレーニングに励んだかが分かる。

 カエデである。

 冒険ギルドの外部では、彼女と俺を見て苛立ちを放っている者。

 ポーカーフェイスを決め込む者。

 魔法使いだろうかレインと同じく短めのスカートを穿いているが素肌を完全に露出させ、サンダルを履く少女はフード付きのローブで顔を隠しているが視線を感じる。

 きっとカエデのパーティーメンバーなのだろう。


 バチン――。と翡翠の掛け着を羽織った少女。カエデは俺の頬を引っ張叩く。

 その直後、潤ませた涙を溢しながら俺を抱きしめて来た。レインはムスッとした顔で脇腹をツンツンと杖で突いて来るので、カエデの頭をポンポンとした後二人をそっと抱きしめた。


「…悪い。待たせたな」


 二人の耳元でそう囁くと、レインは擦り寄って泣き始めた。


「…ぐすっ、ううう。

 ヒロキのバカ‥‥にぃも、カエデも‥‥ふみゅ。カサネも……ずっと…待ってたんだよ。も…もう、何処にもいかないで…ね?」


 全く変わんねぇな。

 身体は大きく美人になっても、中身は一緒だ。

 俺はどうなんだろうな?

 身体も変わった。中身にはカルマ。魔剣にはハガネが入って、未知のダンジョンで俺が続けたのはただの虐殺ではないのか。

 さっきだってそうだ。簡単に人を傷つけて暴力を振るっている自分は、いつか知らない内にレインたちを傷付けてしまうんじゃないのか。


「…ああ、行かないよ。今度は一緒に行こう」


 それでも俺は、守らなくちゃいけない。

 レインも。カエデも。奴隷少女の三十番も。全部、俺が盾となって―――違う。

 今度は剣となって英雄になろう。

 悲しませない。誰もが哀しまない英雄になればいい。


 俺の決意は鈍らない。揺れない。

 だから―――、今一度問いたい。なぜ、その怒りを仲間に向けるのかと。

 唇を噛み締めて赤い血を痛みと共に吐くオレンジ髪の少年は、発狂したその紅玉の目を持って短剣を脳天目掛けて放ってきた。

 しかしそれに、気付いていたのだろう。目の前の二人の少女は魔法障壁を展開し、また片方は飛んできた短剣のグリップを握って攻撃を阻止する。


「どういうつもりや、リグル…」


 掴み取った短剣には、毒物と思しき緑色の液体が塗ってある。

 これがワザとで済むはずがない。ことなど分かり切っている筈なのにカエデは震えた手でもう一度問う。


「答えろ、リグル!」

「姐さんはソイツに騙されてるんすよ。だって、そうじゃないですか!

 駆け出し一年目のルーキーが、繁殖期デスパレードの黒結晶洞窟を生き抜くなんて有り得ねぇ。ソイツは、きっとバケモンなんすよ。そうだろ? テメェ、リッチーなんだろ。俺等の姐さんを誘い出して喰らうつもりなんだろうが!!」


 ぶんぶん。と横に首を振って否定するレイン。


「レインさん…アンタだって、今まで散々泣いてたじゃねぇかよ。

 面影が似てるから? そんなに都合よく、死んだ人間が生き返る訳ねぇってのはアンタが一番よく知ってるだろ。ボーゼスの妹を殺したのは、レイン。テメェだ。何が最速の薬師―――『止めとけ』」


 この二年間で何があったのかは分からないが、後ろにいたポーカーフェイスの男が振るい上げたリグルの拳を抑え込む。ボーゼス悔しくないのか! というリグルの一言で彼がそのボーゼスらしいが俺には何がどうなっているのかさっぱりだ。


「彼は悪くないだろ。

 リグル、僕の妹が死んだ一番の原因は『蜥蜴の尻尾』を捕まえようとした僕自身にあるんだ。レインさんも悪くない」


 歯を食い縛るリグルは、舌打ちして俺の方を睨む。


「そうかよ。なら、それはそれだ。

 でもな、俺はアンタが気に喰わねぇ。だからよ、ここでエントリー戦と行こうや。どうせ何時かは戦うんだ。だったら、今すぐここで叩き潰しても問題ないわな」


 ちょ、…。と止めようとするカエデを俺が止める。


「ヒロ?」

「なあ、カエデ。

 俺はさ。さっきの話の意味は、分かんねぇ。でも、それに俺が関係するなら俺にも戦う理由位はあるんじゃないか。

 それに俺はどうしても、このエントリー戦。先に進んで恩を返さなくちゃなんないんだ」


「自己紹介は、もう必要ねぇよな。

 俺ぁリグル。黄金世代カーニヴァルベストエイト、双牙のリグルだ!!」


 弱い奴ほどよく吠える。と言ったのはハガネだったか。まあ、それは置いといて…。双剣使いか。

 反りのある片刃の片手剣を手に一本、一本持って戦う二刀流の戦法がお馴染みだが俺の短剣二本を使った戦術とは大きく違ってくる。

 そもそも俺の短剣は投擲用に【物質変換】を用いて自作したナイフ。刀身リーチがまるで違うのだ。

 そりゃぁな、先の…誰だっけ? いいや。不良少年Aとの一戦は、あれは…うん。どうでもいい。ベニとの一戦では長剣ロングソードと交えたが、アイツ等は経験不足もいいところだった。

 だけど、コイツは格が違う。ってのは、直ぐに分かる。

 呼吸が途切れ途切れの素人とは違う。悪戦苦闘を続けてきた既に『戦士』として仕上がった奴だってことは、纏っている闘気オーラで分かるほどだ。


 これは認めないといけない。

 でもだ。予想と結果が今まで同じだったことなんてない。

 そう言うものだろ。

 わずかな誤差。正反対な相違。入力ミス。想定外。科学の実験には付き物だろ。試すまでは何が起こるか想定出来ていたとしても、結果はいつも神のみぞ知るだ。

 だからこそ、面白いんだ。


「俺はヒロキ。

 駆け出しにして、剣舞祭優勝を目指す新参者の冒険者だ。笑いたきゃ、笑え!! でもな。そいつは俺がコイツに負けたときにだーーー!!」


 冒険ギルドの食堂でFランク冒険者が集って美酒と旨いメシを食う外で、今回の主役が更なる闘いを始めたことを彼等は知らない。

 いや彼等は知らない方が、いいのかもしれない。彼等の頭の中では、ヒロキと言う超新星が現れたことに期待と歓喜しての宴を開いているからだ。

 それでも黄金世代と開拓世代の名の知れたEランク以上の冒険者たちは、ヒロキなる人物のことを知っていた。

 最初は根も歯もない噂話から都市伝説。何時しか御伽噺として語られていた英雄だからだ。

 興味本位や噂の真相を知るべく集まった人だかりは冒険ギルドの真ん前で白熱する事態を生み出していた。

 そして剣戟がいま熱気が籠った声援と共に幕を上げた。



□■ エントリー戦 ■□■ リグル VS ヒロキ ■□



「うおおおおおおおおおお!!」


 雄叫びを上げているのは、リグルである。

 戦士スキル【ウォークライ】。周囲にいる対象を威嚇し発動者自身の攻撃力を上げる性質を持つ。

 先手で一撃必殺の物理攻撃を仕掛けるよりは、延長戦を見込んで自身の強化に勤める。ということは警戒されているのだろうか。

 どちらにせよ、俺からは先攻しない。相手は俺のことを知っているようだが、俺はリグル。と言う人間を知らないのだ。

 未知に踏み込む愉しさを味わいたいところではあるが、ここは相手の技を捉えつつカウンターを仕掛ける方が面白い。


 リグルの持つ二つの刀剣サーベルの長所は、拳を保護するガードが付いていることにあるが最大の武器はその操作性。扱いやすい刀剣として知られている。

 レイピアのように「突く」ことに特化した武器も確かに強いのだが、独特な扱いが必要になってくるために技術がいる。現実世界の昔の話では、銃が普及してからも歩兵や騎馬兵の格闘武器として重宝されたとか。


 さて、どうした……ものーーーか?!!


 気が抜けていたわけではない。

 気付いたら、ソコにいるのだ。

 刀身リーチをどうするか悩みに入ろうとする一歩手前でそれは起こったのである。開幕速攻というヤツだ。

 トンーーー。と静かな跳躍は俺の意識の中を縫うようにピンポイントで隙を捉えて首筋に刀身を向けてきたのである。コイツ、マジで容赦がない。今俺が反射的に首を捻って胴体を反らさなかったら確実に首チョンパだ。


 半身を強引に曲げてリグルの脇腹にストレートを叩き込もうとしたが、俺の動きを読んでいたか。もしくは反射的にか。どちらにせよ、かわされてしまった。

 ーーが、だ。今の斬り込みで一つ分かった。コイツは狩猟系の戦士だ。謂わば、嘗ての俺が遣っていた敵をよく観察し一撃でもって殺しに行く戦法。


「何のつもりだ!?

 どうして俺の昔使っていた戦法をーー!!」


 ガッ、キンーー! とぶつかったのはサーベルと俺の投擲用ナイフ。それぞれの刀身が勢いよく打たれ、弾き合い、その度に火花が生まれる。

 そしてリグルが狙ってくる部位は、そのすべてが心臓や頭部に首筋等という人間の急所に成りうる箇所のみに猛アタックで仕掛けて来る。


「ーーオイ、聞いてーーグッー! 聞こえてんだろ。何とか言えよ!」


 若干押されつつも、修行の成果で獲得した超人レベルの身体能力と反射神経でリグルのクリティカルに成り得る攻撃を次々とかわしていき質問をするが返答はなし。

 戦いに集中しているのか。それとも俺が嫌いなのか。声は声でではなく、帰ってくる鋭い一回一回が重い一撃ばかりだった。

 そんな中で、鍔迫り合いになった時…。


「ウザいんだよ。

 英雄伝説『黒結晶洞窟での英雄譚』の主人公のアンタが耳障りなんだよ。

 いいか。俺もボーゼスも、元はギルド「ロビンフッド」のメンバーだった。だからテメエのことも知ってる。姐さんを助けてくれたことには礼を言う。でもなーーー」


 鍔迫り合いから一歩退いて、小さな跳躍で後方に下がった俺は右のナイフを中段。左のナイフを腰の武器スロットルに差し込む。

 中段に構えていたナイフで忍者構えにもっていく。


「ーーでも、テメエが選んだ犠牲で姐さんがレインさんが心に傷を負った。テメエが遣ったのは英雄の所業じゃあねぇ。蛮勇になった愚者の所業だ。

 姐さんは責任を取ってギルドから追放の道を選んだ。レインさんだって数ヵ月の間、まともに喋ることさえ出来なかった。結局アンタが選択した「蛮勇ルート」でみんな不幸になったんだ」


 好き勝手言ってくれる……。

 俺がどんな覚悟で二人のもとを去ったかも知らないで……いや、違うな。俺は、あのときの俺は結局逃げ出しただけかもしれない。

 ただ死んでいく。哀れな俺を見て悲しさで一杯にならないようにと。

 でもな、それは過去だろ。昨日のことだろ。俺がこの二年で手に入れてきたものは、未來。明日を生きて生き抜いて、二人の笑顔を見るためにだった。


「お前は勘違いしている。

 確かに俺が選んだルートは間違いだったかもしれない。けどな、それはもう昔話。いつまでも過去に捕らわれてんじゃねぇーーよ!」


 忍者構え中段で構えていたナイフをリグルに向けて投擲。元々は投擲用にと素材【黒結晶】を【物質変換】でナイフに作り替えたものだ。ーーだから、その威力は折上つきだ。

 しかし流石は上級者。俺が忍者構えした時点で次の行動が投擲だと見抜いていたのだろう。あっさりとサーベルのガードで弾き落とす。ーーが、それこそが俺の狙い。

 フェイントだ。

 投擲と同時にナイフよりも早く身体能力だけで、リグルの背後に迫り急所を狙う手筈だったのだが、やはりそこも上級者としての格がベニとは違うようだ。


「それは譫言だ!」


 剣先を素早く後方に回し込み、俺のナイフを弾く。器用値《DEX》がなければ出来ない芸当に感服だ。

 しかし俺だってバカじゃない。この戦法は一度、ハガネの石像兵にも試した失策だったからこそコレを思い着いたのである。


「戯言か。譫言かどうかは、今から教えてやるよ。俺は過去の過ちを未来に繋げる。ただそれだけだ!」


 落ちた武器ってのは、戦場なら二度と使うことが出来ない捨て武器になる。それは「拾い上げる」という無駄な行為で命を危険に晒す愚かな行動だからだ。

 俺からすりゃあ、勿体ないの一言に尽きる。そこで閃いたのが、拾う必要のない武器である。

 捨て武器。その多くは、投擲用のソレに分類される。手榴弾は論外だが、ナイフに的を絞って完成したのがワイヤー付きナイフだ。

 最初は勿論、素材【ワイヤー】での安易なもので操作性が困難だったが、魂の力【念糸】をワイヤーの代用には十分すぎるほどの有効性を発揮しーーー。


「ぐあっーーー!」


 釣糸で人形を操る感覚のもとに生まれた操作性で、いとも簡単に今ではリグルの足と腕にナイフを突き立てるなど容易だ。

 おおー! とドヨメキと歓声が二重に聞こえる中で、リグルはよろめきながらも大声で訴える。


「ふっざけんな。

 こんな小手先の攻撃に屈するほど俺は雑魚じゃねぇんだよ!

 オーダー、剣術スキル【双牙一対】ーーー!!」


 二刀のサーベルを下段で交差し一歩を出る。二歩目の蹴る脚力だけで加速し、三歩目からは構築能力【加速】で俺の一寸先まで追いやった瞬間、俺が見たのは虎だ。

 ただの想像だが、確かに虎のように見えたのは事実だ。二本の立派な牙に見せ掛けた剣技と言うべきか。威嚇と言うべきか。

 残念だ。こんな終わりで幕引きとは、本当に残念だよリグル。もしも俺の目が、昔のままだったなら負けていただろう。

 でもーー。


「オーダー、近接格闘術【虚空拳】!!」


 上段から今まさに俺の首をはねる直前にスキが生まれる胴体に向けて空気圧を叩き込む。

 エルダーリッチーの頭部を粉砕する一撃では即死であろうから、それとなく小さくしたつもりだった。


「あっ……」


 ーーのだが、肋骨を数本砕きリグルが吹っ飛んだ影響で冒険ギルドのドアが壊れる始末となってしまった。

 こうしてエントリー戦は俺の勝利で終わったわけだが、起きたニナさんにコッテリと絞られる破目になるは、何故か俺に名前のない少女。三十番が抱きついてカエデとレインから白い目で見られるは散々な目にあったのだった。


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