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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第二章 「水晶洞窟の冒険と奴隷少女」 Episode.Ⅱ 《黒結晶洞窟での英雄譚》
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【#046】 Dead line Part.Ⅱ -百戦錬磨*屍の回*-

本日二話目の二回目の無双回です。

次話を続けて執筆中です。投稿まで暫しお待ちを。



♢黒結晶洞窟 3F 混濁水路♢


 エリア「水神湖」を中心に分岐したルートは全部で四つある。

 その内の一つは、いま俺がサイクロプスを討伐してきた水路だがこちらに進んだところで元来た道を下るだけ。そもそも、絶壁の下は俺たちが爆破した岩盤で滝は悲惨な状態になっていたが、あのサイクロプスが落下した性でより酷い状況になっていたから無理。

 残る三つの内、左に開いたルートを俺は進行していた。


 ログ上には「水路」から「水神湖」から「混濁水路」へとなっている。

 混濁とは、秩序なく乱れることや色々なものが混じって濁ることを差すが、まさにその通りである。

 濃い白い霧に覆われて視界を塞ぐ中、現れたのは恐らく「幽鬼種」と呼ばれる類のモンスターだろうことは古書から分かるが、かなり気味が悪い。



幽鬼種ゴーストのザラム

生存分布;アルカディア大陸 湿地帯全域 

希少価値;☆5[150,000Cセル~]

階級;魔物級

討伐達成証明部位;幽鬼の頭蓋骨

備考欄;ファンタジーゲームの墓場ステージに登場するゴースト。

全ての幽鬼種には肉付きがなく、その多くが骨と不可思議な魔力を持つ布地で構成されている。幽体型モンスター。

自身の骨を隠すように魔力を含んだ不可思議な布地を衣服に変えて、湿地帯や墓場または生前の肉体が埋まっている場所に出現する。自分のテリトリーから出ることは滅多にないが、テリトリーに足を踏み入れる者から魂魄を抜き取る。魔法使いの魂魄が好物。魔物級モンスターに分類されているが、熟練の冒険者でも対処の負えない凶暴性を持つ個体も存在する。

主に単体で行動する。複数体が一緒に行動することは目撃されていない。

幽鬼種に限っては、名前に共通性がなく生前の本名が起用されているらしい。

幽鬼種の生態系の全容は掴めていないが、進化個体が複数体ある。最上位個体は「不死種リッチー」。特徴は骨の身体から受肉に成功して、魔導書もしくは莫大な魔力を持っている。



「弱点は、分かんねぇな」


 黒色に近い灰色の骨をした身体は、白い霧と紺碧の衣服で隠して浮遊する。

 ザラムの左手の指には、魔法の指輪だろうかと疑う物が複数嵌っておりそれぞれが歪な輝きを放っている。

 頭部の頭蓋骨に変わったものは見当たらないが、目を模した赤い光球二つがそこに大きな存在感を現しているだけ。如いて言うなら、無い喉と胴体の奥底から白い吐息を吐いてこの空間を作っているように見えた。


 これは冷気か。

 酷く冷たい。体の芯まで凍るようだ。と言ってもだ。

 いまの俺には肉の心臓はない。あるのは、ボール状に編み込んだ仮初めの心臓。

 俺の魂が抜けていくような…この感覚は、寂しさ。辛さ。淡い涙が自然と込み上げて来やがる。


 「――!? なんだよ、これは」


 俺が次に目を見開いて、自分の足元を見た時だった。白い吐息の作用か、白い濃霧の性かは定かではないが水色と白色の氷の膜が張り巡らせて地面と俺の足を固まらせていたことに気付く。

 パキパキッ。と次第に氷の膜が登って来る。

 気付いた時には既に下半身の体温を奪われ、足の指先に感覚はない。

 俺はここで漸く気付いた。これが幽鬼種の戦いなのだと。



{ヒロキは幽鬼種ゴーストのザラムからスキル【氷点下の囁き】を受けました。}

{ヒロキはダメージを受けました。

 カウントダメージ[下半身+足];100+300ポイント}

{ヒロキはバッドステータス【凍傷】を受けました。}

{ヒロキは毎分10のダメージを負います。}



「クソッタレが――!!」


 無理やりにでも足を動かそうとするが、全くいうことを効かず俺は自分の奥底に眠る魂魄に叫ぶ。


(俺の命は、もう無いに等しいんだ。だから、

 だから、寄越しやがれ! 灯せ。燃やせ。真っ赤に染め上げろ!)


 ドックン‥――。

 心臓ボールの鼓動が早くなり、温かい血流を全身に駆け巡らせる。

 コハクから頂いた本来なら暗闇を照らす松明専用の油【サンオイル】と【火打石】をここで撒き散らかす。ここで発動する構築能力は決まっている。


「【発火】!!」

 

 シュボン。と小さな火球を作って一気に燃焼する床一面を覆うのは熱と火炎のオレンジ色の波だった。

 火炎の熱で溶かされた氷の膜が剥がれた瞬間を狙って連技【反射装甲リミットカウンター】を発動させて、周囲に広がっていく熱と火炎の燃え盛る波から剥離させる。

 ザラムは俺が作り出した火炎の空間から逃げるように走り去っていく。…と言ってもだ。幽鬼種には足がない。幽体となった白いベールが駆け抜けていくの方が、しっくりくる。


 俺は逃がしまいとザラムに巨人の血液を用いて作った【アウトブレイカー】太刀の形をした刀身に構築能力【弾道加速】を組み込んで射出させる。

 攻撃はそれだけでは終わらない。

 クルスから貰ったガーディアンライトの特性を使って、自身で作った火炎の波を今度は刀身に纏わせてオレンジ光で染め上げた刃の熱を斬撃に変換させて飛ばす。


「弾けろ! オーダー、ソードスキル【ブラストブレイカー】―――!!!」


 ガーディアンライトの刀身に嵌めこまれた水晶玉は、魔法や魔力に反応するという。松明用の油【サンオイル】と【火打石】には、それぞれ魔力・魔素が含まれているがザラムの生み出した冷気に含まれる魔素をも利用して、このスキルを発動させたのだ。

 この水晶玉の特性で俺がいま使えるのは、周囲に満ちた魔力や魔素が含んだエネルギーを定着させることと。それをエネルギーの塊として飛来させることが出来る。


 太刀の形をした【アウトブレイカー】は当たらなかったものの、ザラムの動きを鈍らせると同時に行く手を刀身で阻む。身動きを封じられて振り向くザラムが見たのは、俺が放ったオレンジ光の斬撃だった。

 頭部の頭蓋骨は、その飛んできた斬撃によって砕かれる。それと同じくして胴体の骨を隠した紺碧の衣服が紫色の粒子となって消えると、灰色の骨がパラパラと灰化して粉末に変わる。


「よく分かったよ。倒し方は、理解した」


 自身の全身に構築能力【加速】を掛けて発動するのは連技【加速装甲アクセルメーカー】。コア三つを代償に全身の筋肉と神経系への伝達速度を増幅させる効果によって生まれた高速移動法で、颯爽と駆け抜けていく。

 混濁水路に生きる幽鬼種ゴーストの頭蓋骨を次々と砕いていく俺は、鬼神の形相で水路を抜け出る。

 冷気で生まれた白い濃霧は、熱と火炎によって真っ赤に染め上がり乾いた水蒸気が水浸しにしていた。



{ヒロキは混濁水路Aブロックに【サンオイル】と【火打石】を投下しました。}

{ヒロキは構築能力【発火】を発動しました。}

{ヒロキはソードスキル【アウトランサー】を発動しました。}

{ソードスキル【アウトランサー】での攻撃は外れました。}

{ヒロキはガーディアンライトに「火炎」を付加させました。}

{ヒロキはソードスキル【ブラストブレイカー】を発動させました。}

{幽鬼種ゴーストのザラムにクリティカルダメージを与えました。

 カウントダメージ[頭蓋骨];10,000ポイント}

{ヒロキは幽鬼種ゴーストのザラムをオーバーキル討伐しました。}

{ヒロキは全身に構築能力【加速】を発動させました。}

{ヒロキは新しい連技【加速装甲アクセルメーカー】を獲得しました。}

{ヒロキは幽鬼種ゴーストを累計14体を討伐しました。}

{ヒロキは称号【*ゴーストバスター*】を獲得しました。}

{ヒロキは特別報酬金;150,000Cを獲得しました。}

{ヒロキは特別経験値;Exp.5000を獲得しました。}

{ヒロキは称号【*ゴーストバスター*】獲得報酬品;

 幽鬼の灰骨粉瓶×20、幽鬼の頭蓋骨×2、幽鬼の紺碧服×5、幽鬼の霊魂×13を獲得しました。}

{ヒロキはレベルアップしました。}

{ヒロキのステータスが更新。

 Level;23→25。体力値;3458→3500。筋力値;115→118。俊敏値;141→152。耐久値;150→156。器用値;197→204。魔力値;0→0。}

{ヒロキのバッドステータス【凍傷】が回復しました。}



♢黒結晶洞窟 4F 屍者の牢獄♢


「やれやれ、とんでもないところに来たもんだ」


 ログ上には「屍者の牢獄」とある。

 ご覧の通り、同じ水路に見えて実際はそうではない。

 中央のいま俺が歩いているのは水路なのだが、相も変わらずちょろちょろと水が流れているだけでほとんど変わりない。…が脇。壁際には牢獄を模した黒い鉄の棒でドームを作った牢屋がいくつも見える。

 その中では生きている人がいる。人と言ってもだ。崩れた肉体をしたゾンビが譫言を言って彷徨うように歩いているだけである。


「――にしても、くっせぇな」


 鼻を摘まんで歩き進める。

 ゾンビの肉体からカビが生えて胞子を吐きだしてくる。それらは生臭いなんてもんじゃないのだ。


「メンドウだけど、仕方ない」


 腐敗臭に堪らず痺れを切らした俺がすることは一つ。

 焼き払うこと以外に何があると?

 各牢屋に【火打石】に構築能力【増幅】と時間差発動させる構築能力【爆裂】を込めて設置させて、距離を取って耳を塞ぐ。


「【発火】!!」

 

 ボン。ボン。ボォン。ボォン。ボッシュン。ボッシュン。と奥に仕込んでいた牢屋から爆発の連鎖が始まる。

 腐敗・腐乱した肉片は燃え盛る火炎と爆発によって、ぐちゃぐちゃになって牢屋にねっとりした黒い血液と黒炭の肉片が撒かれる。

 肉片の中には強い酸性もあったのか茶色くなった鉄の檻を腐敗させて溶かす牢屋もあるが既に生命反応はそこにない。あるのは潰れた気色の悪い眼球や内臓物だけである。



{Level.15の屍者種ゾンビの魂亡き遺体×50が出現しました。}

{ヒロキは【火打石】に構築能力【増幅】と時間差発動する構築能力【爆裂】を各牢屋[12棟]に設置しました。}

{ヒロキは構築能力【発火】を発動しました。}

{屍者種ゾンビの魂亡き遺体にクリティカルダメージを与えました。

 カウントダメージ[全身];10,000ポイント}

{ヒロキは屍者種ゾンビの魂亡き遺体×50をオーバーキル討伐しました。}

{ヒロキは称号【*虐殺者*】を獲得しました。}

{ヒロキは特別報酬金;100,000Cを獲得しました。}

{ヒロキは特別経験値;Exp.2,500を獲得しました。}

{ヒロキは称号【*虐殺者*】獲得報酬品;

 屍者の血肉瓶×25、屍者の腐乱心臓×20、屍者の潰れた眼球×40、屍者の霊魂×50を獲得しました。}



「コイツ等、ゴブリンより弱くない?」


 俺は何を勘違いしたのか、この時の自分にはそれが正しい答えだと思っていた。

 今覚えば、幽鬼種と屍者種の因果関係を知らない俺の失敗だった。

 

 混濁水路を解放したことによって、生命反応はなくとも魂の反応があったにもかかわらず、それを放置した失態で事態は急変する。

 一つの幽鬼種の霊魂は、彷徨うというよりも何かを求めてここにやって来たのだ。

 求める物は一つ、肉体である。

 幽鬼種が受肉を果たすには、二つの方法がある。

 一つは自分の肉体を見つけて魂魄融合すればいいが、肉体が残っている確率は一割を切るとされ、多くは二つ目に委託される。

 それは魂のない肉体を見つけて魂魄融合することだ。自分の肉体でなかろうと、しっかりした骨格と整った内臓物を掻き集めることが出来れば「受肉」に至るのだ。

 そして幽鬼種の「受肉」が齎す結果は、モンスター。一つの個体の進化に変わりないのだ。


 受肉を果たすべくザラムの霊魂は、溶けた血肉に含まれる魔素を利用して求める物を掻き集め始める。

 眼球。内臓。胴体。脚部。肉片。血液。…などを自分の魂魄に溶け込ませて容姿を整えていく。形作る上で必要な骨格は、黒い鉄の檻を分解させて鉄分を多く含んだ丈夫な骨へと作り変えていく。

 骨格が出来たところで、幽鬼種だった頃の【幽鬼の灰骨粉瓶[一本]】を肉片と脂肪に溶け込ませて上質な肉体に錬成させる。大方の肉付きが出来たところで、内臓物と眼球を元の位置に配置させると【幽鬼の紺碧服[5着]】を一度分解させて【不死王の深淵ローブ】を作り出して雄叫びを上げる。


「キャアアアアアア」


 女の鳴き声に聞こえるが、これは仕方がないのだ。

 まだ完全に進化を果たしたわけではないからだ。

 進化に必要なのは器官と魔導の杖となる素材である。

 不死王の雄叫びの影響でか、繁殖期の影響でか不明だが、偶然イレギュラーな産まれを果たした「悪鬼種オニのホブゴブリン」五体と「悪鬼種オニのゴブリン」十体の霊魂と肉体を喰らう。

 不死王はここで必要な器官【魔物級の声帯】を手にする。

 本当ならば、【天災級の声帯】が自分の望むところではあるがこの際仕方がないと思う不死王は新しく自分の容姿を作り変えていく。


「オロカナ、ニンゲンヲワレハ、ユルサンゾ!

 我ガ名ハ、ザラム。不死ノ王ナリ、同胞ヨ。我ニ従イテ魂ヲ与エン!

 復活ノ刻ハ来タ。剣トナリ、盾トナリ。我ニ尽クセ!」


 いま、俺の前に世にも恐ろしい怪物が姿を現したのだった。

 それも怪物級モンスター「巨人種ジャイアントのサイクロプス」や「大獣種ヘビのオロチ」「堅甲種サメのシロザメ」を超越する天災級モンスターが降臨したのだ。

 その姿は人型モンスターだが、明らかにゴブリンやゾンビとは格が違う。

 モンスターよりも人間に近しいそれは干からびた肉体に【深淵ローブ】という薄くも黒いローブで身を守り、何よりも魂の波動が出鱈目だった。

 

 そんなことよりもだ。

 人語を喋ってる時点で相当な知力が備わっていることが分かる。

 そして、俺にはコイツの正体が分かっている。古書の最期のページ欄「天災級篇」に記載された「絶対に相手にしてはいけないモンスターの部類」だと。



不死種リッチーのザラム

生存分布;????[変異体の為、不明] 

希少価値;☆9[30,000,000Cセル~]

階級;天災級

討伐達成証明部位;不死王の頭蓋骨

備考欄;ファンタジーゲームの墓場ステージに登場するゴースト系最強種。

全ての幽鬼種と屍者種を保有する魔力と魂魄の力で操る不死の肉体を持つ。【深淵ローブ】の色で個体レベルを計ることが出来る。青;Level.25。紺;Level.35。赤;Level.45。黒;Level.60。白;Level.90。不死の人型モンスター。

怪物級モンスターの肉を喰らうことで、更なる成長を果たして【禍々しい魔法の杖】の色で個体のレベルと魔法攻撃力が向上する。青;+Level.10。赤;+Level.20。銀;+Level.30。【禍々しい魔法の杖】を所持した状態で<不死王>から<深淵の不死王>となる。

主に単体でも行動するが、複数体の同胞を作り出して一緒に行動することは目撃されている。

幽鬼種の魂魄に刻まれた生前の本名が起用されている。

不死種の生態系の全容は掴めていない。



 ぞろぞろと群がる甲冑を装備したゾンビの兵団と大鎌を振りかぶり冷気を放つ幽体たちは、俺の前で陣形を作り出して徐々に囲んでいく。

 ゴブリンたちと違って、それぞれが知性と理性と自我を持った怪物たちは何かを待っているように見えてならない。恐らく彼等が待っているのは、自分たちの主である<不死王>の開戦宣誓だろう。

 じりじりと距離を詰めても、攻撃の姿勢に入ることがないのだ。

 

 呼吸を荒げていた俺は、心を静に。魂魄を動にして連技【反射装甲リミットカウンター】と【加速装甲アクセルメーカー】で準備を整えていく。

 それを待っていたかのように<不死王>が高らかに宣言する。


「――ッシ。人間ニ死ヲ与エン!」


 とそれを合図にゾンビの兵団が構えていた槍を収め、背中から取り出した大楯を前で構えて中心に向かって走り出す。

 咄嗟に【反射装甲】で防御カバーするが、彼等はこれの弱点を知っていたように突撃して来た。

 ズ、ズ、ズ、ズズン――。

 周囲八面の大楯が【反射装甲】目掛けて突撃した衝撃音が俺の耳の鼓膜を圧迫する。それがこの連技の弱点なのだ。そもそも、この連技は戦いの中で身を隠す物であって防御する物ではないのだ。

 接触した衝撃と音は、外界ではなく内側に全部やって来る。結果、俺の耳の鼓膜は破れて録に声の聴けない状態へと陥っていた。


「ちっ、やってくれる」


 現状を打開すべく構築能力【跳躍】で上空に飛び出すが、これもだった。待っていました。と言わんばかりに幽鬼たちが大鎌を振るう。


「なに!?」


 反射的に構築能力【硬化】で大ダメージは免れたが、少なからず衝撃波を受けた俺は一時的にバッドステータス【麻痺】を受けて地面に着地する。――が彼等は俺に猶予など与えてはくれなかった。

 そこで待ち受けていたのは、ゾンビの兵団の槍部隊。

 俺は驚いた。

 先陣にいたのは、槍部隊ではなく最初から大楯を装備した突撃兵であり、そこ後衛。突撃兵の大きな甲冑の裏手に軽装の彼等が潜んでいたのだ。

 これは既にモンスターの知性ではない。と思う俺の前に現れた<不死王>は言う。


「我ガ名ハ、ザラム。嘗テ、ファルマン王国ニ仕エシ参謀ナリ。

 生贄トナッテ我ガ一部トナルガイイ人間ヨ」

「………」


 俺は全身がどうしようもなくガタガタと震えていた。

 怖い訳じゃないのに。

 口元が三日月になって歪んでしまう俺は、もう壊れていたのかもしれない。

 人間じゃなくなっているのか知れない。

 それでもいい。

 だってさ。俺には、もう時間がないんだ。

 【巨人の心臓】を生命力に変えているからと言っても、これだけ動いていれば数日も持たないんだろ。そうだろ、コハク。それが分かってたから、俺を引き止めたんだろ。でもさ。もう、俺は人間じゃない。


「勇敢な死なんて糞喰らえだ。俺は、ここからバケモノになるよ」


 理性も。

 知性も。

 感覚も。

 俺はいらない。

 俺は本能だけに生きるバケモノとなろう。


 コハクから貰った力を増幅させる錠剤の全てを呑み込んだ俺は、自身の自我を棄てて今までにない速度を武器に槍部隊をコンマの世界を暗躍する。

 すべてが静止した世界で、俺はただ歩いて首筋を掻っ攫い。

 素手に込めた莫大な力を持って、大楯を貫通させて甲冑をも砕いて。

 心臓をもぎとって割る。潰す。喰う。を繰り返して場を制圧した俺は<不死王>の首をガーディアンライトで切り落とす。

 無論、今度は失敗しない。

 


{…}

{……}

{………}

{ヒロキは称号【*不死狩り*】を獲得しました。}

{ヒロキは特別報酬金;30,000,000Cを獲得しました。}

{ヒロキは特別経験値;Exp.1,500,000を獲得しました。}

{ヒロキは称号【*不死狩り*】獲得報酬品;

 不死王の血液瓶×2、不死王の頭蓋骨×1、屍者[亜種]の甲冑×8、屍者[亜種]の大楯×8、屍者[亜種]の大槍×10、幽鬼[亜種]の大鎌×8、不死王の霊魂×1、屍者の霊魂×16、幽鬼の霊魂×8を獲得しました。}

{ヒロキはレベルアップしました。}

{ヒロキの人間DNALevelが更新。

基礎能力とコアがレベルアップしました。}

{ヒロキのステータスが更新。

 Level;25→31。体力値;3500→4528。筋力値;118→130。俊敏値;152→184。耐久値;156→169。器用値;204→218。魔力値;0→0。コア;13→25。}



 もう、何も怖いものなんてない。

 俺はただ進むだけでいい。

 ん? アレ、何の為だっけか…いやいいさ。

 すべての霊魂を自分の中に取り込んで俺は、次のエリア「王の間」に足を踏み入れる。


続けて二話を凌ぐ無双の回になりそうです。多分ね。

期待はほどほどに。

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