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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第二章 「水晶洞窟の冒険と奴隷少女」 Episode.Ⅱ 《黒結晶洞窟での英雄譚》
33/109

【#033】 Warriors -騎士団の役回り-

三が日はお休みしようかな、と思いましたが本日より執筆開始です。

さて今回のお話を読む前に前話の改稿が先程完了しましたので、そちらから読んで戴ければ幸いです。

ブックマークの数が落ち込んだり、上がったりと不安定で気になりますが精一杯精進して面白い物語になればと思っている今日この頃です。

{2016.1.5}改稿完了。

 

 騎士団と言われ俺が最初に思いついた言葉はというと。なぜだろう……テンプル騎士団だった。


 テンプル騎士団というのは、中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会のことだ。

 正式名称は「キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち」だったとか。

 日本では「神殿騎士団」や「聖堂騎士団」などとも呼ばれている。騎士団の構成員は、修道士であると同時に戦士だったと言うが、彼を見る限り宗教染みた十字架のネックレスや修道士の服装には見えない。

 そもそも騎士団というのは、十字軍時に設立された騎士修道会及び、それを模して各国の王と貴族が作った騎士とその附属員から構成される団体である。

 前者はローマ教皇によって認可された修道会の一種であり、前提に構成員は修道士になる条件が設けられる。

 後者は実際の軍事集団として名誉と儀礼的な意味合いが強く、のちにヨーロッパの勲章システムに受け継がれていく。

 

 後者に相当するのだろう。とユウセイを目で追う。

 ユウセイは頭部のないカカシを見るなり、「素晴らしい切れ味だ」と言って絶賛している。

 いやいや、そこまで絶賛されるほどじゃないよ。と言う俺に対して。

 いやいや間違いなく達人級ですよ。と再び称賛される。

 恥ずかしく照れる俺に話題を急に切り替えて、本題に入り始めた。


「―――ところで、君は犯罪者の基準とは何だと思う?」

「はい?」


 唐突にそんなこと聞かれてもな…。


「物理的な手段で相手を傷つけることか。魔法という力で相手を罵ることか。それとも話術で心を操ることか。

 ………―――はははは、冗談だよ。冗談。

 でも、騎士団っていう役回りってのはさ、そういうことなんだ。

 領主であったり。王族の人間であったり。

 ギルド連盟とかって言う格上の組織や個人からの頼まれごとを引き受ける。

 犯罪者や脱獄囚の確保。囚われの姫君を救助したりする。

 ファンタジーゲームでいうところの王道クエストを―――っと。

 悪い悪い。本題からズレたね」

「は…はあ」


 ズレ過ぎでは? というか、騎士団というよりは警察みたいなギルドだな。


「僕等は……というよりは僕個人に振り分けられた仕事のことなんだけどね。

 いまシェンリルの町では、君自身もご存知の英雄祭の準備に日夜、いそしんでいるのは知っているよね」


 頷いて肯定する。


「うん。それでだ。

 かつてより手が伸びていた盗賊の一団が、ある物を密輸して…………『クーデターを起こそうとしている』――え?」


 ああ、やっぱり。知ってる人は、知っているのね。


「ある人達から聞いたことと。

 今までの状況を分析しての答え合わせに過ぎません。

 シェンリルの内戦事情。麻薬ポーション。盗賊団。奴隷制度。人造人間ホムンクルスの模造品の密輸から導き出される答えは、争いの前哨戦ですかね」

「そこまで知っているなら隠す必要はないな。

 僕が課せられている最優先事項は、盗賊団の確保と事情聴取…………と。

 今回の事件で暗躍している黒幕の摘発にある。

 そこでだ。君にも協力をお願いしたいんだ」


 ………!

 どういうこと!?


「ちょ、ちょっと待ってくれ。どうして俺なんだ?」

「ん? なにを驚いているんだ。

 僕もあの場で、ヒロキという挑戦者に賭けた人間の一人だからね。

 ちゃんと実力は分かっているつもりだよ。君がいま悩んでいることも、ね」

「なら、分かるでしょ。

 俺はあの中の誰よりも弱い。最弱のプレイヤーだってことは…」


 言葉を濁して、歯を食いしばる俺を見る。


「君は勘違いをしている。

 レベルも経験値(Exp)もあの中では最弱だったことは事実だ。

 でも誰にも、実現不可能な戦術であのダインを圧倒したのも事実だろ。

 それに君はまだルーキーだ。粗削りも研鑽すれば、どんなナマクラであろうと、業物へと変わっていくものだよ。

 君はもっと「自分」を信じるべきだ」


 知ってる。……いや違うな。今まで目を背けていたのかも知れない。

 何処かで今の自分を認められないでいる。まだ俺は過去から逃げている。


「……――とまあ。それはおいといてだ。

 訓練用カカシの修理費は二百万セルでは効かない。さらに言えば、カカシの修理を行うのは僕の友人だ。

 言っていること解かるよね?」


 開いた口が塞がらなかった。

 このカカシ程度に二百万セルとかぼったくりだろ。と思ったが逆に言えばユウセイは借金をチャラにする代わりに手伝ってくれないか? と言っているのだ。

 何よりもこの事件への介入により、いままで見えていなかったことが見えてくるかもしれない。

 それを前提に彼の口車に乗せられるのも悪くない。と思う俺は溜め息を着いて肯定する。


「…分かりました。

 でも具体的に俺は何を手伝えばいいんですか?」

「盗賊団が使っていた人造人間ホムンクルスの現物。もしくは端的な情報。麻薬ポーションに含まれる素材などなど、関わる情報なら何でも欲しい」


 ということなので、ヒロキはクルスには内緒でバックパックに格納していた不気味かつ気持ち悪い人造人間の一部を出現させる。

 如何やら情報に規制が掛かっているらしく欲しい情報が分からない。


人工生命素体;劣化したホムンクルスの右腕

製造場所;閲覧認証不可

製造者;閲覧認証不可

希少価値;情報公開されていません。

備考欄;人工的に生産された人間ホムンクルスの切断された右腕です。


「ふむふむ。

 これを作った奴は、臆病なのか慎重なのかは分からん。

 けど僕の前では無意味だね。分析スキル【鑑定】の出番だな」

「………そのスキルなら何でも分かるんですか?」

「ん? そうだね。何でもってわけじゃないけど、ね。

 スキルの熟練度レベルを上げていけばそれ相応の情報を閲覧できる。

 それが分析スキル【鑑定】なんだ」


 ふーむ。……確かクルスもそんなこと言ってた? ああ違うな。【鑑定】が使えないから、結局あの場ではオイルの成分が分からず仕舞いだったな。


「【鑑定】持ちでないと、情報の詳細が分からないから口で言うよ。

 えーと。まず製造場所だが、東の島国。ヤマト大国だな。

 次に製造者は………………分からない」


 え? と思わず言葉を漏らしてしまった。


「……これを作った奴は相当の曲者だな。さっきも言ったろ。

 熟練度によって情報が閲覧できると…つまり、だ。

 端的情報でさえブロックできるレベルで製造している点から見て、バックで糸を引いている人間はかなりの手練れだな。

 他にも何かあるかい?」

「いえ。ないですね。あ‥ただ。

 クルスがその右腕以外のパーツ。術式を組んだ白い付箋紙。ホムンクルスそのものを動かしていたオイルなんかを持っていますね。

 それからロビンフッドのメンバーの誰かが持っているらしいと口ずさんでいたっけかな。盗賊の一人が服用した麻薬ポーションの瓶ぐらいですかね…」


 とヒロキが言うと目の色を変えて「ぜひ紹介してくれ」というものだから仕方なく案内しようとした矢先のことだった。

 何者かの気配。悪意を感じ取ったヒロキとユウセイは、サバイバルスキル【隠蔽】を使って他人からの意識を薄めてコンテナの裏手や物陰からこっそりと覗く。

 悪意を出力する集団の中には知った顔が二つあった。一緒に旅にでかけたレイン。このダイア樹林帯で知り合ったキツネの獣人カエデの姿を目視したヒロキは、真っ先に出ようとするもののユウセイに抑え込まれる。


「待て! いま出ても助けられない。

 向こうの人数は目視できるヤツだけでも六人。

 周囲に四人配置して移動している点から見ても分かるだろ。

 ただの盗賊団じゃない」

「仲間を助けられない強さなんて、俺はいらない」


 ユウセイの手を振り解いて【隠蔽】を解除する前にそれは起きた。

 何に襲われたのか考える余裕もなく意識が奪われていく中で俺が見たのは、自分を拘束するユウセイ。囚われたレインとカエデが何らかの魔法で拘束され連れていかれる後ろ姿だけだった。

 ……………

 ………

 …

 深い闇の中で突然襲った優しい痛みが自分の意識を覚醒させる。

 目の前にある顔は知り合ったばかりの騎士と名乗り、調査している事件への協力を半ば強引に要請してきたユウセイである。

 一体どの程度意識を失ったのか、思い返していくと大声で連れていかれた二人の名前を叫ぶ。


「レインとカエデは?」

「無事だよ。少しは落ち着いたか」

「そんな訳ないだろ!!

 なんであの時に俺を眠らせて、…どうして助けに入らなかった!?」

「だから、な。落ち着けって…」


 近くで反響する俺の声が煩いらしく、両耳を掌で押さえるユウセイ。

 現状を速やかに伝えるべく周囲の状態を見ろ。と言わんばかりに二人を覆っている薄い膜を認識できるように魔力を流して色を灯す。

 黄色の膜面は球体を作っていることが分かるのだが、それ以外のことは何がなんやらである。

 膜面の外に広がるのが、鬱蒼した森や野生の小動物がドングリを食していることからダイア樹林帯にいるのだと分析するヒロキは妙なことに気付いた。

 カリカリ。と音をたててドングリの殻を砕いていくリスに酷似した小動物は、膜面の中には不思議と入って来ようとはせず遠回りして迂回していく。その様子から何となくに過ぎないが、この膜の正体に気付いたのである。


「これは構築能力【反射】+【形態補正】で作り上げた僕のオリジナル。

 反射装甲リミットカウンターだよ。

 僕等がいる地点に何かあるのか分かっていても、目視できない上に物理的な侵入を防いでくれる」

「おお…」


 素直に凄いな。と思うのだったが崖の下を見て一変する。


「!? アイツ等…」

「待てって。冷静になって物事を考えてみろ。

 いま出て行って彼女たちを助けられると本当に思っているのか。

 スキを伺うことも戦術には必要だし、今すぐ彼女たちに危害が向かないなら状況を整理することも必要なんだ。

 ここは我慢するんだ。せめて夜明けを待つんだ」


 ユウセイの答えは間違ってはいない。と思う。

 でも…。という気持ちを必死で抑えるヒロキは、二人の安否を心配しつつ木陰の反射装甲の中で夜が明ける瞬間を待つのだった。


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