【#032】 Encounter -出会い-
短いです→新年早々に改稿しました。
改めまして、明けましておめでとうございます。
今年は、どんどん更新進めていきたいので、これからもお付き合い・応援のほどをよろしくお願いします。
{2016.1.2}→{2016.1.5}改稿完了。
軽蔑の目で男性プレイヤーたちを見るのは、温泉に浸かって身体を癒して肌がツヤツヤしている女性プレイヤーたちだ。
「最低です」
「ですね。
姐様の悩殺エロボディーを見ていいのは、何を隠そう私だけです。
――『黙って』……い、ツツツ。待って待って、
あああ私の抱き枕ならぬ、ポヨリとしたクッションが………」
彼女たちの多くは、この哀れみに満ちた男達が自分たちのギルドメンバーか。と思うと情けなく思うのだった。
一方で一部。……一人の女性プレイヤーが姐様と呼んではイチャイチャと百合を発揮していた。
姐様と呼ばれる人物は、絶世の美女と誰もが思うだろう。見事に整ったプロポーションをしている彼女は毎日のように男女問わず魅了するように長髪のブロンドを弄る仕草を取るのはシリカである。
彼女こそがギルド「ロビンフッド」で一番の美しさと強さを兼ね備えた女性メンバー。誰もが認める序列、四位の実力者である。
彼女に付き纏っているのが、同性にしか興味を示さない百合っ娘ちゃんであり「チミッコ」と呼ばれる少女のエニキスだ。
ワンピースの袖を無言で摘まんで止めるのは、序列三位のギルドマスターにゾッコンの一途な少女エリである。耳元でぼそぼそと何かを呟いたかと思えば、エニキスが青い顔で硬直するいつもの光景ではあるが一つだけ違っていた。
女湯を覗こうとした男達全員。顔に青あざを作ってロープでギッチリ縛られていることだ。
「シリカ…。
お前には一生掛かっても分からないだろう。
これは俺たち。漢のロマンなんだ。冒険者なら誰しもが目指すべき境地。
それこそが、湯気と壁の隙間から覗き見るスリル。
………『死刑確定…』――待て、これはおと‥おおおおおおおお」
熱く語るサブマスターのレイモンドだがシリカの一言で、小さい体をさらに縮こまらせる。
筋肉質なアマゾンの格好をするシリカの親衛隊に掴まれて、遠くへと連れていかれた。止まったと思ったらゴスッバキッ。とグロテスクな強打する効果音が聞こえてくる。
リンチに遭っているのだろう。と思う拘束された男達は冷や汗を流すのだった。
ジリジリと迫る狂気丸出しの彼女たちの目には、男達をそこいらの雑魚モンスターを狩るような虚ろな目で襲おうとしていた。
その瞬間。助け舟としてやって来たのは栗色の髪をした少女である。………が、まさかの素通り。修練ポイントに向かおうとしていたところをがっしり、とエニキスに捕まえられていた。
「レインちゃん。何処に行ってたのかなぁ?
同じ女湯に入ったはずなのに…いつの間にか消えてて探したのだぞ」
まな板のようにない胸で、素早く左手首を拘束し抑え込む。
クンカクンカ。とお風呂上がりのイイ匂いを堪能するエニキスは、必死に振り解こうにも逃がしてはくれない。
あの手この手でレインの身体を弄りまくっている。敏感な部位を見つけたようで、小さくて可愛らしい耳を厭らしく舐め始めた。
「ひゃ、ん。んんん…! そこ、だ…ダメ―――」
悶絶し始めるレイン。
男達の目は自然と小刻みに震えて悶えるレインへと向けられる。それを阻止すべくクロムが火炎魔法【ファイラ】で誰かは分からないが尻に火を点けるなり「ヘルプ」と叫ぶ。
………のだがフイッ。と頬を返して遠い別の場所に目を置く。
「ギャアアアア」
尻に火が点いたギルドメンバーを華麗にスルーしてレインが逃げようとした時ふわりとしたものが小さな顔を包み込む。
空間を捻じ曲げて修練ポイントから帰還したキリエが現れたのだ。胸中になぜ自分がいるのか分からない、という表情で困惑するレイン。
む~~~、ふいっ。と胸中から抜け出すや否や、レインを察したのかキリエは再度抱きしめて、
「ヒロキなら大丈夫」
とレインにだけ聞こえる小さな声で伝える。
キリエは温泉処に来たメンバーを目視で確認して、周囲の空間を丸ごと飲み込んでキャンプ場に転移するのだが………なぜなのか?
数秒も待たずに宴が始まった。
晩酌のように酒を酌み交わすギルドマスターとエリ。
未成年のメンバーは、この地域で人気のあるソルトジュースと料理人が作った「秋鮭のカルパッチョ」を堪能しつつ、次々と居酒屋に並ぶような品をオーダーしていく。
沢庵や胡瓜の浅漬けなどのお新香を始めに、炒飯。焼き鳥串。ピザなどの注文に調理を勤しむ料理人たちはクロムを指名する。仕方なく引き受けると、横から下拵えした食材を渡して支えるレインは、助けてくれたお礼を言いながらも「覗き魔」「ヘンタイ」などと言って罵倒するのだった。
絶えず飛び交わされる料理を物色するメンバーから漏れる笑い声が、自然と聴こえる中を徘徊するギルドマスターは酔いが回ってべろんべろんになる頃を見計らって締めの声を張り上げる。
「皆、聞いてくれ!
―――ここに集った新しい出会いを祝し、最後の締めとしようぞ!!」
全員に配れらたのは、この辺りの地域では滅多に拝むことのないヤマト大国の特産品である朱塗るしの盃である。
盃に注がれるのは、透き通った太鼓酒と呼ばれる彼等がこよなく愛す同士を祝う酒だ。酒自体はそれほど高価なものではない。単にギルドマスターが嘗て、親愛なる盟友と酒を酌み交わしたのがこの太鼓酒だった。というだけのことらしく、仲間が増える度に宴会をして最後の締めにこれを呑み干すのだとか。
乾杯の音頭を取る。
全員が一気に飲み干したところで………バタバタと倒れていく。
酔いが完全に回って酩酊した訳でも潰れた訳でもない。彼等がなぜ倒れたのかを知るのは、それから五時間もあとのことである。
……………
…………
………
数十分後のことである。
静まり返ったキャンプ場に現れたのは、完全武装を施したガラの悪い盗賊団。意識だけが僅かにあったクロムが目撃したのは、アイツ等だった。自分と妹のレインを襲った奴等と同じ武装をしていたことから仲間であることが分かる。
復讐が目的だろうか。と思っていたのだが盗賊団が始めたのは高価な品物を見つけては、盗みを働く程度でプレイヤーに危害を加える気はなさそう。………と思いきや、女性プレイヤーを物色し始めた。
「…………おい、連れ帰る奴は慎重に選べよ」
「分かってヤスよ。
既に市場の情報は掴んでヤスので、大船に乗ったつもりで任せてください。
さてと、んんんんん。白い肌に素晴らしいプロポーションをお持ちですが残念。
需要で最も高いのはロリ娘と獣人娘でヤスヤスよ。
この背丈の低い栗髪のロリ少女は、中々そそられる物がありヤス。
それに…むふふふ。キツネ尻尾の娘なら高値で売れヤスよ」
―――!! フザケンナ………!?声が出ない!? どういうことだ。
そうこう考える内にレインとカエデは、紫色のオーラを出力した魔法で拘束されて連れて行かれようとしていた。
身体を動かそうにも。口を開こうにも。痺れて全く動かない。
いつ毒を盛られたのか考える…が一向に分からない。そこへ答え合わせをするように、図体の大きなヤツに誤っている言葉を修正されながらも盗賊団の一人が自慢げに語り始めた。
「いい具合に仕上がってボカァ、蛮族っすよ。
『…満足な』――アンゴレドリアンの果肉を予め、味覚なしの液状にして混ぜておいて成敗でしたわ『…正解な』」
そうか。なるほどね。確かにドリアンとアルコールの組み合わせは危険だ、と言われているが医学的には実証されていなかった筈……って、そんなことはどうでもいい。今はレインを。俺の妹を助けるのが先決だろうが!!
動け、動け動け。動いてくれ。うごけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
クロムは力の限りを尽くして起き上がろうにも矢張り動かなかった。
痺れだけが、たちの悪いウイルスのように全身の感覚を奪われていく。
{クロムのステータスが更新、
【太鼓酒[催眠/毒/麻痺]】により体力値;1400/1520になりました。}
{クロムのステータスが更新、
状態異常【催眠】により覚醒に4~5時間ほど掛かります。}
{クロムのステータスが更新、
状態異常【毒】により秒速10のダメージを10秒間受けます。}
{クロムのステータスが更新、
状態異常【麻痺】により全身が10分程度動けなくなります。}
{クロムのステータスが更新、意識Levelが低下しました。}
……………
………
…
最後に目撃したのは、視界がボヤけて良く見えない中。
誰かがナイフで突き殺されたことだけであった。
▲
▼
その頃、修練ポイントではPVPでの余熱と余韻を訓練用のカカシにぶつけているヒロキの姿があった。
今のままじゃ…。という気持ちを込めた体術はAI仕掛けのカカシには筒抜けだったようで反射的なボディーブローでヒロキへ一撃を与える。
ヒロキも負けず、ボディーブローが当たる瞬間に構築能力【硬化】で腹部をガードする。切断系統の攻撃なら兎も角として、打撃は内側までダメージが来るだけあって片膝を着くのだった。
ダメージを負った腹部に手を当てて起き上がる。
俺は思う。
自分の弱点に向き合わなきゃなんない。この先の未来で必ずぶつかる壁だと思っていた一つの現実を…。
魔力がない。
魔法が使えないなんていう致命的な弱点を克服する為にクルスがくれたのは、冒険の楽しみ方だったことも知っている。
自分には、クロムのような料理の才能も。レインのような夢もない。
知ってる。分かってる。俺は弱い。
でも冒険をするにあたって、必ず出現するであろうモンスターや強者とぶつかり合わないと想いを伝えられない。
だから。だからこそ、俺は今のままじゃあダメなんだ。
もっと強くなって、隠れて身を守るだけの力なんていらない。
誰かを守れるような力が欲しい。
逃げないで前だけを見るような勇気が欲しい。
誰かの為に英雄になれる力が―――欲しい!!
俺は声を、喉を空にして前を見る。
中堅者コースに設定したAI仕掛けの対人訓練用カカシは、決意した目を見て二つの拳を前方で構え左右へフットワークを始める。
軽快なフットワークは、ボクサーを思い浮かべるが初心者コースもそうであったように何をしてくるか見当のつかない相手に俺がしたのは、掌を天井に向かって広げ、親指以外の四本の指を同時に曲げて挑発を促す。
身を僅かに奮わせて反応を示したカカシは、前方に跳躍して攻めに転じ挑発に乗ってきた。尽かさず武装スキル【サーチアイ】で視覚を補強する。
構築能力【加速】を同時で二重発動すると、僅かにブレが生じる現象を利用した【幻影移動】でカカシが誤認している隙を狙って背後に迫る。カカシの認識速度を僅かに超えて、手刀に魂を灯して放たれた斬撃は首を切り落としたところで、
『素手による初撃を確認。―――動作停止。初撃タイムは、五分二十四秒一一。
六分のコース合格ライン記録を更新しました。中堅者コースを無事攻略しました。
上級者コースに移りますか?』
「いいえ、だ」
『了解しました。AI機能をオフライン後、稼働を全停止。お疲れさまでした』
「ダメだ。こんなんじゃあ……。
こんなザマじゃあ―――『何がダメなんだい』…!」
独り言を呟いているつもりだった。
誰かの耳に届くような大きな声で口にしてしまったようで、同世代と思しき少年が尋ねてきた。
魔法使いという格好ではないように見える。
青と白を基調とする軽装で身を包む少年。武器スロットルには、グラディウスに酷似する大剣を差さっているところから見て剣士だと思われる。
「君は…」
「僕はユウセイ。ギルド「流星騎士団」に属する騎士だ。よろしく!!」




