【#021】 Food chain -食物連鎖-
{2015.9.23}新規更新→{2015.9.28}→{2016.2.7}改稿しました。
序盤から所々、後半に連れて大幅加筆を加えて改稿しています。
お楽しみ戴ければ幸いです。
採掘ダンジョン『水晶洞窟』内部に設けられた複数の空間を「エリア」と呼ぶ。エリア別で異なるモンスターが徘徊している。またエリアによっては、寒暖の差が激しく環境ステータスの違いもある。
それらはダンジョンそのものの大きな意味があると専門家は指摘している。
『ダイア樹林帯』と呼ばれるエリアには、多くの冒険者が安息・憩いの場を求めて足を運ぶことが多いようだ。
ここからでも多くの冒険者が見て取れる。
簡易式のテントを張ろうと準備するパーティーもいれば、バーベキューを楽しんだりする大所帯がいたり、川で釣りを楽しんだりする釣り人があちらこちらにいるところを見ると…なんか落ち着く。
エリアの名前通り。リアルでは見たことのない樹木…いや巨木と言っても差支えない大樹が苔の絨毯を突き抜けて生えており、システム上の感覚なのか、鬱蒼と生い茂る森の奥から大きな生命力を肌が感じ取る。
イヤな感じじゃない。でも何かスゴイものがいるような、この感覚はなんだろう?
「なあ、クルス。このエリアには凶悪なモンスターはいないんだよな」
「ああ、いない。…けど注意はした方がいい。
レインに懐いていたあのクマは本来レベル二十クラスの通常モンスターで「大獣種クマのハチミツベアー」だしね」
「それは、ちょっと一口のハチミツ大好きクマさんのパクリなのでは?」
「さあ、どうだろうね。
確かに「彩虫種ハチのクイーンビー」が作るハチミツが好物だけど、別に二足歩行の癒し系ではないからそっくりさんではないんじゃないかな。
それでこの先は沼地ポイントだけど、ワニでも捕獲するつもりかい?」
他愛のない世間話を兼ねて食材となるモンスターを探す俺とクルスは、誰かが架けたであろう手作り感満載な外見をしたハリボテ木造の橋を渡っていく。
橋の下には小さな川が流れている。流れに逆らって数匹の魚が泳いでいるのが見える。水面から跳ね上がる川魚だが、空中から現れた異彩の鳥が顎を大きく開けて、頬張っていく姿からこのエリアにはリアルと同じ食物連鎖があることが分かる。
ああ、なんかホッとするな。
今までの旅の中で目にしてきたのが砂ばっかりだったからかな。食べられるに側にはなりたくないけど、こういう自然の中って感じでいいな。
エリア内には様々な領域が存在するらしく、クロムが山菜を摘んでくるよと言っていた「草原領域」。
レインがクマさんと一緒にテントを張っている戦闘行為禁止という制限がシステム面に影響をもたらされた「安全圏」というように、ワニが生息する「沼地領域」に向かっていた。
イノシシが通るような地面が抉れて地肌が見えているケモノ道を歩きながら、低い樹木に実った赤や橙色の果実を千切っては▽をタッチして食べられる食材か鑑定していく。ただ、食材は実食しなければ、どんな栄養成分やカロリー・旨いか不味いかも分からないようで片っ端から実食していく。
「おお、これは美味いな」
食材[フルーツ];イチジクボウシ
採取可能分布;アルカディア大陸【ホクオウ興国領;全域】【ラインヘッセル共和国領;全域】『水晶洞窟』
希少価値;レアリティー☆1[150C~]
カロリー;50kcal[100g]
栄養成分;整腸作用が含まれている。
特徴;帽子を被ったイチジクを探してみよう。
備考欄;ツブツブした食感がおいしい甘いフルーツ。
料理スキル【菓子作り】を鍛えた上で、多くのフルーツと共にタルトはいかがですか。
「酸っぱ過ぎ、いや待てよ。熟したら甘いのか?」
食材[フルーツ];クリスタルプラム
採取可能分布;アルカディア大陸【ホクオウ興国領;全域】【ラインヘッセル共和国領;全域】『水晶洞窟』
希少価値;レアリティー☆1[130C~]
カロリー;43kcal[100g]
栄養成分;肝機能を高めて、二日酔いに効果ありです。
特徴;木になる桃色の結晶体は酸っぱさの塊。
備考欄;皮ごと食べられるが、皮には酸味があるため苦手なプレイヤーは皮を剥いて食べると良いフルーツ。
料理スキル【菓子作り】を鍛えた上で、ジャムやジュース、酢漬けなどの食べ方はいかがですか。また、料理スキル【発酵】を鍛えて絞り汁でプラム酒を作って見るのも乙です。
「これは…ホオズキなのか? 食べても食中毒で済むだろうし…」
食材[野菜];オレンジチェリー
採取可能分布;アルカディア大陸【ホクオウ興国領;全域】【ラインヘッセル共和国領;全域】『水晶洞窟』
希少価値;レアリティー☆4[季節によって価格が変化]
カロリー;???kcal[100g]
栄養成分;免疫力を高めて皮膚や血管などの老化を防止してくれます。
特徴;緑はまだまだ未熟者、鮮やかな色合いの紅葉色のホオズキが食べ頃。
備考欄;ミニトマトに似た甘酸っぱい味の野菜。
料理スキル【菓子作り】を鍛えた上で、ケーキのトッピングやシャーベットにしてはいかがですか。
「結構以外に何でも食えるものだな」
クルスが半ば呆れた顔で言う。
「ヒロキ、食べ過ぎだよ。
ここ森林領域に実っている食材のほとんどは食べてもバッドステータス【食中毒】にはならない…けど、さっきの川魚と異彩の鳥を見ただろ」
もぐもぐ食べながら思案して答える。
「食物連鎖ですか? 食べる。食べられるっていう世界の循環ですよね」
その返答に正しく知って貰うためか、クルスは歩きながら説明していく。
「そっ。
果実が熟しきると、実によっては弾けたり地面に落ちたりする。
どちらも時間の経過と共に腐っていく。腐った果実は更なる時間経過によって苗床になり、この豊かな自然の糧になっていく。
つまりは生態系なんだよ…っていっても個人が食べる分量が決まって来るから問題はないけど…、『ガサガサ』…!」
茂みの奥から何かが近づいて来るにいち早く気付いたクルスに、頭を鷲掴みされて強制的に地面に伏せられたヒロキが青い茂みの隙間から何事かと覗く。
そこに『チミチミ』と可愛らしい効果音もとい足音をたてながら現れたのは、キノコだった。
いや、まあ正確にはエリンギに見えるけどね。
俺は釘付けになっていた。
プルンとした腰つき。白い胴体だろうか細かいけど縦縞の筋が多く張りがあり、ムチッとした足に生えたシイタケのような笠があるキノコに目が行ってしまうのも当然である。
それが何とも奇妙で奇怪なファンタジー過ぎるモンスターに出会ってしまっては思考が停止してしまうだろう、ほどに珍妙な存在だったからだ。
好奇心を擽る二足歩行で両腕のないキノコモンスターに遭遇した瞬間だった。
「―――あれはエリリンギだね」
「…今更、ツッコまないですよ。
でも、アレって食材モンスターなんですよね?」
「【解体】が心配かい」
通常のモンスター。例えば「堅甲種サメのシロザメ」を討伐することでモンスター各部位の剥ぎ取りが出来る。
ただしサイズ別でホワイトダガーの場合は一回が剥ぎ取り上限。シロザメの場合は凡そ十数回の剥ぎ取りが可能でクエストやシステムの干渉によっては引き起こされる報酬でさらに多くの素材を入手できるが、食材モンスターの場合は少々違う。
食材モンスターを倒した際に行えるアクションが剥ぎ取りとは別に存在するからだ。それが白金砂丘の安全圏でバイモンに教わっていた調合スキルの【解体】と【解剖】である。
まずスキルについて簡単に説明しておこう。
スキルとはプレイヤーの誰もが持つことが出来るシステムアシストの一つである。
熟練度と呼ばれるレベルを上げるごとでアシストが向上する。例えば【調合】の場合は、より困難・繊細な技術が要求されるものを成し遂げられる他に【調合】によって完成する新しい素材を増やすことが出来る。
さて続いて【解体】がどういうスキルなのかを説明しよう。
食材モンスターにのみ適用される【解体】は、文字通りモンスターを解体して食べられる「食材部位」を取ることの出来るスキルである。
例えばモンスターを無傷で捕獲したとしよう。
捕獲した食材モンスターに対して有効なメインウェポンのクレーバーナイフや包丁を使って、ふわふわの毛皮やガチガチの堅鱗を剥いで、骨を断ち、内臓物を取り出して、肉を削ぎ落とし切り分けていく作業そのものが【解体】となるのだ。
バイモンが言うには戦闘によって傷ついたモンスターを【解体】すると、「損壊した食材部位」になってしまい鮮度を保てずに腐敗してしまうので注意が必要とのこと。
因みに食材モンスターから剥いだ毛皮や堅鱗などの素材は、衣服店で高額取引が可能でゆくゆくはブランド品に様変わりして世に出回っていく。
食材モンスターから断ち切った骨は食材として、出汁引きに使われたり、パリッと油で揚げたりというように使われる。
頭部や腹部を裂いて取り出した舌、四種の胃、心臓、肺、肝臓、腸などの内臓物は勿論。食材として多くはバーベキューで使われる。
さあ、ここで一つ問題が発生するよね。
「あのキノコって、内臓物があるのかな?」
「いや、流石にないよ―――『へ、ないの?』…いやいや、あったらあったで怖いよ」
確かにキノコの中から内臓物が出てきたら、完全にホラー映画って言うよりも正直グロテスク過ぎるな。でも、それならどうやって動いているのか? 不思議過ぎる気もするが倒せば分かるかな。
【解体】が分かったところで、次は【解剖】について説明しよう。
モンスターの【解体】する最中で隅の隅々まで目で見て、手で触って、全ての食材を取り終えるとウインドウに「Complete!」と表示される。
これが意味するのはモンスターのすべてを知り尽くしたという知らせ。モンスター図鑑にさらに詳しい情報。例えば生息地や名前の由来から各部位の調理法などの今まで知らなかった細かなことが記載される。これが【解剖】である。
切断すると鮮度が落ちるから、ここはあの笠に【瓦割り】を入れて…!
俺のその判断と次に起こすであろうステップに移ることは許されなかった。
それが数センチだったのか、数ミリだったのかは分からない。
ただあの異彩の鳥よりも早く、十数メートル後ろの恐らく木の上から一直線にヒロキの真横を通り過ぎたのは一本の矢だった。
自分を狙った訳ではないのだとエリンギっぽいキノコの胴体の中心を射抜かれた一本の矢で地面に倒れたことによって証明される。
「図星ゲットだニャー!!」
振り向いた先でヒロキの目に映ったのは、木の上でアクロバティックな動きをして大いに喜んでいる和装のように見えるエバーグリーンの忍者な軽装備でサイズが合っていないのだろうか、おへそを丸出しにしている。下にはちゃんと黒色のスパッツを履いている元気な少女がいた。
少女の右手には身の丈ほどの弓と背中に背負っているのは矢筒だろうか、複数の矢羽が見えるけれど、それよりも彼女の頭に生えているふんわりしたモノに興味がそそられた。
「ネコミミ?」
「ネコ? にゃんこは好きやけど、ちゃうよ。
わたしの名前は、カエデ!! 獣人、キツネのカエデや! 憶えときや―――?
なんや自分、狐につままれたような顔して」
紛らわしい語尾を付けるなよ。と俺は心中で叫んでいることにも気付きも知る由もなく弓使いの少女カエデはニャハハハと笑うのだった。
それでこの先は沼地ポイントだけど、ワニでも捕獲するつもりかい?」
他愛のない世間話を兼ねて食材となるモンスターを探すヒロキとクルスは、誰かが架けたであろう手作り感満載な外見をしたハリボテ木造の橋を渡っていく。
橋の下には小さな川が流れ、流れに逆らうように数匹の魚が泳いでいるのが見える。
水面から跳ね上がる川魚だが空中から現れた異彩の鳥が顎を大きく開けて、頬張っていく姿からこのエリアにはリアルと同じ食物連鎖があることが分かる。
―――ああ、なんかホッとするな。今までの旅の中で目にしてきたのが砂ばっかりだったからかな。食べられるに側にはなりたくないけど、こういう自然の中って感じでいいな。
エリア内には様々なポイントと言われる領域が存在するらしく、クロムが山菜を摘んでくるよと言っていた「草原ポイント」。
レインがクマさんと一緒にテントを張っている戦闘行為禁止という制限がシステム面に影響をもたらされた「セーフティーポイント」というように、ワニが生息する「沼地ポイント」に向かっていた。
イノシシが通るような地面が抉れて地肌が見えているケモノ道を歩きながら、低い樹木に実った赤や橙色の果実をもいでは▽をタッチして食べられる食材か鑑定していく。
ただ、どうやら食材は実食しなければどんな栄養成分やカロリー、旨いか、不味いかも分からないようで片っ端から実食していく。
「おお、これは美味いな」
食材[フルーツ];イチジクボウシ
採取可能分布;アルカディア大陸【ホクオウ興国領;全域】【ラインヘッセル共和国領;全域】『水晶洞窟』
希少価値;レアリティー☆1[150C~]
カロリー;50kcal[100g]
栄養成分;整腸作用が含まれている。
特徴;帽子を被ったイチジクを探してみよう。
備考欄;ツブツブした食感がおいしい甘いフルーツ。
料理スキル【菓子作り】を鍛えた上で、多くのフルーツと共にタルトはいかがですか。
「酸っぱ過ぎ、いや待てよ。熟したら甘いのか?」
食材[フルーツ];クリスタルプラム
採取可能分布;アルカディア大陸【ホクオウ興国領;全域】【ラインヘッセル共和国領;全域】『水晶洞窟』
希少価値;レアリティー☆1[130C~]
カロリー;43kcal[100g]
栄養成分;肝機能を高めて、二日酔いに効果ありです。
特徴;木になる桃色の結晶体は酸っぱさの塊。
備考欄;皮ごと食べられるが、皮には酸味があるため苦手なプレイヤーは皮を剥いて食べると良いフルーツ。
料理スキル【菓子作り】を鍛えた上で、ジャムやジュース、酢漬けなどの食べ方はいかがですか。また、料理スキル【発酵】を鍛えて絞り汁でプラム酒を作って見るのも乙です。
「これは…ホオズキなのか? 食べても食中毒で済むだろうし…」
食材[野菜];オレンジチェリー
採取可能分布;アルカディア大陸【ホクオウ興国領;全域】【ラインヘッセル共和国領;全域】『水晶洞窟』
希少価値;レアリティー☆4[季節によって価格が変化]
カロリー;???kcal[100g]
栄養成分;免疫力を高めて皮膚や血管などの老化を防止してくれます。
特徴;緑はまだまだ未熟者、鮮やかな色合いの紅葉色のホオズキが食べ頃。
備考欄;ミニトマトに似た甘酸っぱい味の野菜。
料理スキル【菓子作り】を鍛えた上で、ケーキのトッピングやシャーベットにしてはいかがですか。
「結構以外に何でも食えるものだな」
「ヒロキ、食べ過ぎだよ。ここ森林ポイントに実っている食材のほとんどは食べてもバッドステータスである【食中毒】にはならない…けど、さっきの川魚と異彩の鳥を見ただろ」
「食物連鎖ですか? 食べる。食べられるっていう世界の循環ですよね」
「そっ。果実が熟しきると、実によっては弾けたり地面に落ちたりする。どちらも時間の経過と共に腐っていく。腐った果実は更なる時間経過によって苗床になり、この豊かな自然の糧になっていく。つまりは生態系なんだよ…っていっても個人が食べる分量が決まって来るから問題はないが…、『ガサガサ』…!」
茂みの奥から何かが近づいて来るに逸早く気付いたクルスに、頭を鷲掴みされて強制的に地面に伏せられたヒロキが青い茂みの隙間から何事かと覗く。
そこに『チミチミ』と可愛らしい効果音もとい足音をたてながら現れたのは、キノコだった。
いや、まあ正確にはエリンギに見えるけどね。
ヒロキは釘付けになっていた。
プルンとした腰つき、白い胴体だろうか細かいけど縦縞の筋が多く張りがあり、ムチッとした足に生えたシイタケのような笠があるキノコに目が行ってしまうのも当然である。
それが何とも奇妙で奇怪なファンタジー過ぎるモンスターに出会ってしまっては思考が停止してしまうだろう、ほどに珍妙な存在だったからだ。
ヒロキの好奇心を擽る二足歩行で両腕のないキノコモンスターに遭遇した瞬間だった。
「―――あれはエリリンギだね」
「…今更、ツッコまないですよ。でも、アレって食材モンスターなんですよね?」
「【解体】が心配かい」
通常のモンスター、例えば「堅甲種サメのシロザメ」を討伐することでモンスター各部位の剥ぎ取りが出来ます。
ただしサイズ別でホワイトダガーの場合は一回が剥ぎ取り上限、シロザメの場合は凡そ十数回の剥ぎ取りが可能でクエストやシステムの干渉によっては引き起こされる報酬でさらに多くの素材を入手できますが、食材モンスターの場合は少々違うのです。
食材モンスターを倒した際に行えるアクションが剥ぎ取りとは別に存在するからだ。
ヒロキは白金砂丘の安全圏でバイモンに教わっていた調合スキルの【解体】と【解剖】である。
まずスキルについて簡単に説明しておこう。
スキルとはプレイヤーの誰もが持つことが出来るシステムアシストの一つである。
熟練度と呼ばれるレベルを上げるごとにアシストが向上し、例えば【調合】の場合より困難・繊細な技術が要求されるものを成し遂げられる他に【調合】によって完成する新しい素材を増やすことも出来る。
さて続いて【解体】がどういうスキルなのかを説明しよう。
食材モンスターにのみ適用される【解体】は、文字通りモンスターを解体して食べられる食材を取ることの出来るスキルである。
例えばモンスターを無傷で捕獲したとしよう。
捕獲した食材モンスターに対して有効なメインウェポンのクレーバーナイフを使って、ふわふわの毛皮やガチガチの堅鱗を剥いで、骨を断ち、内臓物を取り出して、肉を削ぎ落とし切り分けていく作業そのものが【解体】となるのです。
バイモンが言うには戦闘によって傷ついたモンスターを【解体】すると、損壊した食材になってしまい鮮度を保てずに腐敗してしまうので注意が必要とのこと。
因みに食材モンスターから剥いだ毛皮や堅鱗などの素材は、衣服店で高額取引が可能でゆくゆくはブランド品に様変わりして世に出回っていく。
食材モンスターから断ち切った骨は食材として、出汁引きに使われたりパリッと油で揚げたりというように使われる。
頭部や腹部を裂いて取り出した舌、四種の胃、心臓、肺、肝臓、腸などの内臓物は勿論食材として、多くはバーベキューで使われる。
さあ、ここで一つ問題が発生するよね。
「あのキノコって、内臓物があるのかな?」
「いや、流石にないよ―――『へ、ないの?』…いやいや、あったらあったで怖いよ」
―――確かにキノコの中から内臓物が出てきたら、完全にホラー映画って言うよりも正直グロテスク過ぎるな。でも、それならどうやって動いているのか? 不思議過ぎる気もするが倒せば分かるかな。
【解体】が分かったところで次は【解剖】について説明しよう。
モンスターの【解体】する最中で隅の隅々まで目で見て、手で触って、全ての食材を取り終えるとウインドウに「Complete!」と表示される。
これが意味するのはモンスターのすべてを知り尽くしたという知らせで、モンスター図鑑にさらに詳しい情報、例えば生息地や名前の由来から各部位の調理法などの今まで知らなかった細かなことが記載されるこれが【解剖】である。
―――切断すると鮮度が落ちるから、ここはあの笠に【瓦割り】を入れて…!
ヒロキのその判断と次に起こすであろうステップに移ることは許されなかった。
それが数センチだったのか数ミリだったのかは分からない。
ただあの異彩の鳥よりも早く、十数メートル後ろの恐らく木の上から一直線にヒロキの真横を通り過ぎたのは一本の矢だった。
自分を狙った訳ではないのだとエリンギっぽいキノコの胴体の中心を射抜かれた一本の矢で地面に倒れたことによって証明される。
「図星ゲットだニャー!!」
振り向いた先でヒロキの目に映ったのは、木の上でアクロバティックな動きをして大いに喜んでいる和装のように見えるエバーグリーンの忍者な軽装備でサイズが合っていないのだろうか、おへそを丸出しにしているが下にはちゃんと黒色のスパッツを履いている元気な少女がいた。
少女の右手には身の丈ほどの弓と背中に背負っているのは矢筒だろうか、複数の矢羽が見えるけれど、それよりも彼女の頭に生えているふんわりしたモノに興味がそそられた。
「ネコミミ?」
「ネコ? にゃんこは好きやけど、ちゃうよ。わたしの名前は、カエデ!! 獣人、キツネのカエデや! 憶えときや―――? なんや自分、狐につままれたような顔して」
紛らわしい語尾を付けるなよ、とヒロキは心中で叫んでいることにも気付きも知る由もなく弓使いの少女カエデはニャハハハと笑うのだった。




