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HelloWorld -ハローワールド-  作者: 三鷹 キシュン
第一章;幕間  △▼ シェンリルの日常 ▲▽
18/109

【#018】 Distress -とある探求者の苦悩-

こんばんは~、今回はちと早い?早くはないかな。

主人公がこっそり出たり出なかったりする幕間では、次第に第二章へと繋がっていく内容になっています。

今回のお話で幕間投稿が終わりです。

最後まで読んで戴ければ幸いです。

{2015.9.13}→{2016.1.27}改稿完了しました。


 はじめまして、こんにちは。

 ボクの名前はコハクと言います。

 職業Jobは薬師ですが、この世界の真実を追求するために考古学者という二つ目の職を持つ新生者です。髪の毛は短めのエメラルドグリーン。瞳は名前の通り、夕焼けのような美しい琥珀色という女の子の容姿に見えますが、ボクはちゃんとした男の子です。


 職業「薬師」と「考古学者」はボクが産まれた時代から不遇の代名詞として不人気で良く知られていました。その大きな原因というのが成長過程にあるのです。

 まず薬師になる方法とどんな職業なのかというところから説明しましょう。

 ボク達のようにこの世界で産まれた新生者にはよく分からないけど、現実世界というリアルでいうところの薬剤師に近いらしいです。

 主に自分の持つお店で調合または調薬した処方箋を販売する者もいれば、ボクのように世界中を旅して珍しい素材を集めて調合しようとする者もいます。

 …まあ、ぶっちゃけそういう人がボクのように…。それは兎も角として、問題はここからです。


 調合と聞けば、誰しもが挑戦出来て簡単だと思われがちですが、実際は難しんです。常時、計算が必要な特殊なもの。

 リアルから来た転生者もこう言ってましたね。


『この世界の調合スキルは、数学との戦いだ』


 素材同士を組み合わせて新しい素材を作る「調合」の派生スキルである素材同士を組み合わせて薬を作る「調薬」。医学書に記されているレシピから薬を作る「調剤」というスキルを獲得かつスキル熟練度レベル三十を超えたプレイヤーのみが辿り着ける境地。それこそが「薬師」という職業なのですよ。


 なので普通にこの世界で生きていくだけでは、到底辿り着けません。それこそ血の滲むような努力。寝る魔も惜しんで学を取って、色んな人の教えから経験を蓄える必要があるのです。何よりも運がなければ絶対に辿り着けないのです。

 でもボクは辿り着いた。

 それが結果的にダークな方向に行こうとも…。

 友人や家族がボクの為に犠牲になろうとも…。

 あの時のボクには必要だったんだ。

 おっと、また暗い話になちゃったね。めんご、めんご。


 さてさて、ここまで言ってもまだ簡単なんじゃね? と思われる方がいるのではないでしょうか。

 そうです。この世界は決して甘くはないし、転生者にも新生者にも優しくない。

 転生者の長所は、過去の経験や肉体的ステータスがフィードバックされて引き継がれますが、逆にこの世界HelloWorldの知識を持ち合わせていないという短所があります。

 新生者の長所は、この世界HelloWorldに生を受けた零歳から知識と戦闘と技術を磨けますが、逆にリアルの膨大な現代科学や数式やゲームを知らない短所があるんです。

 昔。知り合った死神のような冒険者に言われたことがありました。


『ここはゲームの中じゃない。

 このHelloWorldは遊戯では済ませない。

 調合に必要なのは、素材と素材だ。その素材を入手するには自分の足で一歩を踏み出して自分で採取して調合キットで新しい素材を作る。調剤には医学書を読む語学のスキルが必要だしな。

 つまりよ、エンターテインメントやドラマを楽しむ人生なんだぞ嬢ちゃん―――「いえ、男です」…!? マジでか、スマン坊主』


 …っで、誰に話してるのかって?

 それは勿論、空気、エアにだよ。

 え? 昔流行ったエア友達だって?

 それも違うよ。

 それはボクがこんな状況だからだよ。



「うーむ、困った困った」


 そう。

 ボク事、コハクはいま大ピンチな状況にいる正に崖っぷちです。と言うのも水晶洞窟でしか取れない錬金術専用素材と言っても差し支えない【グラスポット】採取クエストを提示してきた友人ルナの依頼が主な原因なのです。


 採掘ダンジョン【水晶洞窟】は、ほとんど一本道って言われているけど実際は、少し違んだなこれが。大きなトンネルから少しでも離れたところにある脇道に入ると、そこは迷宮と変わりない危険なダンジョンになるのです。

 採取ポイントは、水晶洞窟の脇道に入って定められたルートを通っていくと、濁りのない正真正銘の透明感を見ることが出来るエリア『水神湖』の水辺にガラス細工のような橙色の蕾が錬金素材【グラスポット】がクリアな水面を彩っているのです。

 グラスポットがこの水神湖でしか採取できない主な原因は、透明感を常に保った水にあります。

 その為に人工栽培は出来ない素材なので非常に高価なのです。新人の冒険者が喉から手が出るほど欲しい物に変わりないのですが、中級の冒険者でやっと相手が出来るモンスターが蜷局とぐろを巻いて待ち構えているのです。

 ≪水神湖の守り神≫と言われる大獣種ヘビのオロチ。

 ≪白金砂丘の王者≫こと堅甲種サメのシロザメに次ぐ強いモンスターなのですが、薬師という職業を持つプレイヤーの多くはサバイバルスキル【隠蔽】を取得しているのですよ。

 しかし…! はぁ~。と覇気のない溜め息を吐くのも当然。持っていても結果がこれでは意味がない。


「はあ、ボクも【隠蔽】持ってるけど…どうしてこうなった」


 むむむ、と頭を抱えようとも手が離せれない状態の為に頭上でクエスチョンマークしか浮かべられない哀れな状況に顔が次第に青くなっていく。


「えーと…? 

 歩き疲れて丸い岩の上で寝てたらいつの間にかエリア『紫の園』って言われる毒々しい紫の霧で覆われている危険な場所にいて…? ゴロンムシに追いかけられたと思ったら…? 前方から生暖かい空気と臭みを感じたかと思いきや、ヌルドロの汁塗れで植物のツルを掴んでいるけど。ここって、どこだろ?」


 上着がジュウジュウ言って溶け出していることと体力値が数分間隔で減少傾向にあることから、純度の高い塩素がこの空間を制しているのだろうと考える。


「計算上はもって四時間前後かな。

 ああ、ボクこんな訳の分からないところで死ぬのか。

 もっとシェンリルの町で、ルナの貯金が尽きるまでゴハンをたらふく食べておけばよかったよw。

 もしくはベル君に悪戯もありだよねぇ。

 シロナさん御用達のもちもちパンが恋しいなぁ。

 こんなことになるなら、クモ君から情報を買っておくべきだったよ。とは言っても、これは本当に死ぬかもしれませんねww」


 赤い肉壁の底に見える黄色の泉。あれは高濃度の塩素であろうと察するコハクは、酸素を吸い込んで唾をのむ。それでも彼は死を安易に受け入れようとはしなかった。

 彼は知っていたからか、それとも信じていたからか。でも、それが結果を生んだ。


「…―――、これでウチもMP切れや。全力で叩き込んでーや!」

「わたしも、ごめん」

「ありがとう。カエデ、レイン。十分にやってくれたよ、サンキューな。

 ちっとばかし、冒険に行って来るよ。

 なあに、ただのヘビ退治だ」


 赤い肉壁の底に見える黄色の泉。あれは高濃度の塩素であろうと察するコハクは、酸素を吸い込んで唾をのむ。それでも彼は死を安易に受け入れようとはしなかった。

 彼は知っていたからか、それとも信じていたからか。でも、それが結果を生んだ。


「…―――、これでウチもMP切れや。全力で叩き込んでーや!」

「わたしも、ごめん」

「ありがとう。カエデ、レイン。十分にやってくれたよ、サンキューな。

 ちっとばかし、冒険に行って来るよ。

 なあに、ただのヘビ退治だ」


 一呼吸置いて、姿の見えない冒険者から膨大なエネルギーを感知する。

 コハクは、それが魔力でないことが直ぐに分かった途端に目を閉じる。


「オーバーエフェクト【ドラゴンライジング】。

 オーダー、ソードスキル【アウトブレイカー】―――!!!」


 瞬間、希望を見た。

 自分よりも遥かに劣るであろうレベルの差を埋める圧倒的な才能。英雄気質の素質が網膜に焼き付いた。彼が思い出したのは、黄金の太陽のような存在感を持った英雄王アカツキとの出会い。

 コハクの日常は一変した。

 斬り上げられた肉壁と噴出する真っ赤な血をはじく剣士とそれを見守る二人の少女との出逢いが…。 


後書きまで読んで戴いた方々、ありがとうございます。

さてさて、この幕間も今回で五話目。予定通り、次話より第二章へ入ります。

第二章ではヒロキ・クロム・レイン・クルスの四人組パーティーが挑むのは危険な駆け引きが伴う冒険とモンスターとの戦闘を経て次第に目的地に辿り着く冒険譚です。

次週の日曜日は都合により投稿出来ないかも知れませんが、連休でカバーする予定ですので、乞うご期待下さい。

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