【#017】 Game -とある情報屋の遊戯譚-
こんばんは~、今回も遅い投稿になりました。
主人公がこっそり出たり出なかったりする幕間では、次第に第二章へと繋がっていく内容になっています。
最後まで読んで戴ければ幸いです。
{2015.9.7}→{2016.1.26}改稿完了しました。
俺はゲームが好きだ。
人生の全てがゲームのようになれば、あの世界から戦争が無くなるではないか? と考えたことさえあるほど俺はゲームと言う名の遊戯に飢えていた。
いまもそうだ。
一触即発。危険を冒してでも手に入れたいものがあれば、手が汗ばむほどの緊張感があろうと。心臓の鼓動が早くなって抑えられない高ぶりに身を任せてしまうだろう。
とある心理学者がほざいていたな。
スリルは麻薬のようなものだ。心に作用する感情をマイナスからプラスへ、プラスからマイナスへ転じさせるジェットコースターのように変換させる緊張感はまさに麻薬と言っていいだろうと。
人生はギャンブルだ。
廃人には成りたくねぇが俺は心底、自身の人生ゲームをギャンブルにして遊んでいる。
それが俺だ。
「はい」と「いいえ」。「Yes」と「No」。シミュレーションゲームでよくある選択肢の時間が俺は一番嫌いだ。二択しかないのか? と俺以外でも思った奴はいた筈だ。
それがゲームの限界だから…だとふざけるな。
俺が遣りたいのはゲームであってゲームじゃない。
『ゲーム神@VRW好き:大切な物を自分の命を賭けるゲームがしたい。』
俺はそう望んでツイットーで拡散してやった結果がこれだ。
『戦う軍師@VRW好き:ゲーム神さん。ついに人生に飽きてしまったのですか(´・ω・`)』
『チート人間@VRW好き:自殺サイト紹介しますよ(≧▽≦)』
『勇者の靴下@VRW好き:洋ゲー「ブラッド×ブラッド×ブラッド」オススメですよ』
『ジャグリングマシン@VRW好き:↑それどんなゲームよ?』
『吸血鬼@VRW好き:↑海外の小さな田舎町で犯罪者になった自分を捕まえようとする親類や警官をいろんな方法で虐殺していくレッドレーベル作品。日本の法で規制される前に発売されたLevel.Vの【R+20】』
『女魔法使い@VRW好き:↑もうその作品、売ってないよ』
『レインボースライム@VRW好き:↑どこかでひっそりと売られている筈。探せ、地球上の果てまで行って( `―´)ノ』
『血達磨人形@VRW神:在庫一本あり、定価価格の二割増しで今なら売ってやるぞ』
『レインボースライム@VRW好き:↑マジでか!? 買います。買わせていただきます』
『監視人@ガチ警官:容疑者確保。繰り返します。血達磨人形氏、ネット喫茶にて現行犯逮捕。日本国内でLevel.IV以上のゲームソフトの転売は違反行為として懲役四年の刑に処されます』
『チート人間@VRW好き:↑ワロタ( *´艸`)』
『監視人@ガチ警官:あなたも笑い事ではありませんよ。法の規制に乗っ取り、他人に自殺を強要した罪で起訴される恐れありです』
『チート人間@VRW好き:なぬ!?』
『ニュース最速@現地:容疑者逃亡です。あ、いま警官を押しのけてツイットーに日本国内でLevel.IV以上のゲームソフトの転売を持ち掛けた容疑者の血達磨人形と名乗る男性がネット喫茶○○店から逃走を計りました』
『女魔法使い@VRW好き:↑え? これ本物なの』
『タヌキもふりんこ@ゲーマー:ネット報道キタコレ!!』
『ハートブレイク@プログラマ:これで明日の朝刊のトップは決まりだな』
『魔法のランプ@ガラケー:廃人さん乙! ○▽町へ逃走中ですとよ』
『血達磨人形@VRW好き:笑い事じゃねー。誰か逃走用の車両を求む!』
『女魔法使い@VRW好き:↑自首してください』
『閻魔大王好き@ニュース速報押し:地獄で会おうぜ』
『ゲーム神@VRW好き:血達磨人形、手を貸そう。○▽町五ノ川橋に軽車両を用意した』
『監視人@ガチ警官:容疑者に手を貸すなど馬鹿なことをしました…!?』
『チート人間@VRW好き:反則技決めやがった!?』
『女魔法使い@VRW好き:これが情報統一社会の都市伝説?』
『ハートブレイク@プログラマ:見出しタイトル決定「ツイットーでバレて、ツイットーで捕まる」』
『レインボースライム@VRW好き:買いません。ごめんなさい…って、なんです?』
『ゲーム神@信者:流石です。私たちの神様』
『戦う軍師@VRW好き:遣り過ぎですよ』
『ゲーム神@VRW好き:この世の知識を奪いすぎたただの人間ですよ』
そうだ。
俺はただの人間だった。
神様だとか、称えられたところでそんなものは嬉しくはない。
あの情報統一社会で情報と言う名の知識を知り尽くした俺にとって、この世界は退屈でしかない。
そんな時だった。
俺宛てへ知らないフォロワーからツイートメッセージが来た。
『世界@HelloWorld:わたしの作った世界に来ませんか?』
『ゲーム神@VRW好き:VRWに興味はないよ』
『世界@HelloWorld:VRWではありません。そこは現実世界と同義。そこならば見つかることでしょう。あなたの想い求める究極のスリルを味わえる。知識だけでは決して先へは進めない』
『ゲーム神@VRW好き:HelloWorldってのは、目にしたことも耳にしたこともないが。アンタは、なぜ俺と言う人間を知っている?』
『世界@HelloWorld:あなたはまだ、辿り着いていないのですね。上澄み程度の情報量で満足しているなら人間にはわかりませんよ。情報を生むのは人間だけではないのです。或いはネコやイヌであったり、或いはサルやヒトであったり、或いは雨や川、大地や火山、地球や太陽、銀河系や宇宙の法則ですら一秒いえコンマ一以下で変わるこの世界であなたが知るのは一パーセントにも満たない』
『ゲーム神@VRW好き:説教なら犬とやれ』
『世界@HelloWorld:説教? 違います。これは教育ですよ』
『ゲーム神@VRW好き:お小遣いをあげよう』
『世界@HelloWorld:なんですか? このプレゼントと見せかけたウイルスの塊は』
『ゲーム神@VRW好き:アンタがやった答えだよ。説教を教育と言うが、俺はお小遣いを良いものとは言っていない。言葉を捻じ曲げて使うアンタも人間じゃねぇーか』
『世界@HelloWorld:わたしがAIではないと、言い切れるというのですか』
『ゲーム神@VRW好き:人間舐めるな。ウイルスメールってのは、開かないから使えないんじゃない。開かないならこちらから開けるんだよ』
『世界@HelloWorld:これは一本取られました。ですが、ウイルスメールはそちらに返しましたよ。招待状付きでプレゼントです』
『ゲーム神@VRW好き:なに!? やってくれた‥』
『世界@HelloWorld:行きましたか。初めてでしたよ。彼以外にこの世界で磨き上げた牙を突き立ててきたのは。これだから人間は面白い』
次に気が付いた時、俺はこのHelloWorldという世界に人間の女へ転生していた。
なぜ女の身体なのかは定かではないが稀にそういう事がある超低確率転生ということだが、俺にとっては好都合だったな。
女の武器と言えばボインなオッパイ。すらっとしたボディーライン。丸みのある美しいヒップの筈がどこの幼女だよ!? と言いたいほどの子供スタイルに可愛い顔だけのしょぼいスペックを武器に俺がしたのはただのギャンブルだ。
ポーカー。ブラックジャック。ルーレット。ダーツ。チンチロリン。丁半。スロットマシン。
女ではあるが中身は、男の俺に寄って来るマヌケからゲーム通貨と思われるセルを貰って、一つ二つ三つとカジノを潰して俺は商人になった。
ギルドに入会したプレイヤーは、何らかの対価を払わなければならない。
例えば、冒険ギルドの場合は確かモンスターの牙や心臓などの素材の確保がクエストとして発注されたものを請け負うことだったが、商人ギルドは金がものをいう。
Gランクの商人は月一で、商人ギルドへ五千セルの納金を対価に商人として名乗れる。
冒険者から素材や金銀財宝をギルドの金で買取り仲介料金としてGランクは一回一律一千セル。F・Eランクは一回一律三千セル。D・Cランクは買取物品の十五パーセントと五千セル。B・Aランクは買取物品の三十パーセントと八千セル。S・SSランクは買取物品の五十パーセントと一万セルを受け取ることができる。
最終的に商人ギルドが儲かるシステムだが、郷に従うのは釈に合わない。そこで俺はSランクで手に入るという「とあるスキル」を手にして以降、商人ギルドを抜けてフリーの情報屋となり、ギルド「銀翼の鷹」の幹部となった。
元々、俺がこの世界に転生して一ヵ月後に出会った金づるに立ち上げさせたギルドなんだがな。
当時は何にもなかったギルドに少しずつ蓄えていた貯金に加えて、物資・素材・金銀財宝を武器にギルドメンバー五千人を動かして世界中の情報を集めている。
作った俺がギルドマスターにならなかった理由を知りたい?
勘違いしているようだから敢えて言っておこう。
ギルドマスターは俺だ。
「銀翼の鷹」の行動が本格化し始めた頃、かつて魔法大戦で味方軍の中心を築いていたギルド連合のちにギルド連盟となった組織が警戒し始めギルドマスターの素性を調べ始めたのが切っ掛けに狙われるようになった俺は公表上では幹部となっているのだ。
そっちの方がどちらかというと俺好みで好都合だしな。
影の中から支配できるとか、中二病臭いところがまたいい。
転生から四年経って一度も暗殺スキルを使ったことはないが、この【隠蔽】というスキルのお蔭で一昔前に流行ったステルスゲームを思い出す。
「ああ、いいね。また、やって見たくなったよ。
隻眼の兵士が巨大な兵器と戦う。一変させる革新的な発想は、俺を何度も擽らせたことか。―――なあ、そうは思わないか? 魔法戦争で≪破滅の異端者≫と称された味方軍の裏切り者と呼ばれたケイマンさんがここに何の用です」
裏口から音もなく現れた全身黒ずくめの人物に対して、開口一番で正体を見破った水色の髪の少女は、キャンディーを口に咥えたまま、にししし。とドヤ顔で笑っている。
「噂通りの俺っ娘。間違いないな。
ギルド「銀翼の鷹」の幹部で情報屋クモ。黄金の世代と呼ばれるプレイヤーの中で最も突出した才能で常に勝ち進んで来た最速のトッププレイヤーたちは全員が二つ名持ち。≪太陽の巫女≫。≪魔王の右腕≫。≪紅蓮の閃光≫。≪銀翼の鷹≫」
「それでここに来た理由はなにさ?
今更怖がっても仕方ないだろ。理由がないなら帰ってくんない。
英雄祭で君たちが仕掛けるトトカルチョ。誰に投資するか悩んでいるんだから」
「ぷっ、くくく。そうか済まない」
「俺を試す暇があったら、金を寄越せ」
俺はこの人物をよく知っている。無論、向こうも俺のことを知っている。
当然だ。彼、ケイマンは俺の常連客であり、大金を持ち歩く金づるの一人で確かな情報を寄越してくれる信頼に値するトレーダー。
俺が知る限りケイマンという男は、生粋の悪人だが悪い奴じゃない。
まあ、こんな見方をするのは中立の立場にある俺ぐらいなんだろうけどな。割増しで金をくれる。メシを奢ってくれる。護衛を寄越してくれる。悪人とは思えないほどイイ奴だ。
でも彼の仕事を聞けば俺以外の連中は、気が引けるだろうな。
彼の仕事は商人の中でも、ダークな存在感を持つ立ち位置に居座る。
真っ黒な闇の職業「奴隷商人」だからな。
魔法戦争後。
世界中の町や国で展開された奴隷制度の中心職として知られる仕事で、借金返済に追われる国の重要人物が金品や通貨の代わりにプレイヤーを商品として商人が買って富を手に入れた国が再建する。
それによって多くの犠牲者が今も尚絶えないが、そのお蔭でこの貿易都市シェンリルも近隣諸国も立ち直ることが出来ているのが現状だ。
奴隷商人という職はまだできて間もないが、それでもこの男は奴隷を掻き集めて、時には奴隷を作って転売する非常識なギルドを立ち上げた悪人。
それでもオレにとっては大事な顧客だ。
悪人であろうが、子供だろうが、悪魔だろうが欲しい情報には惜しみなく対価を払う。
それが俺の情報屋として突き通している理念だ。
「はいはい。一万セルでいいな」
「確かに頂戴した。それで天下の奴隷商人様が俺に頼み事ですか?」
「まあね。君に隠し事しても無駄だから全部話すよ。
ああ、対価はいいよ。独り言だと思えば安い物はないだろう」
「信用されているものだと思って、聞かなかったことにするよ」
「英雄祭のメインイベント「カーニヴァル」優勝者が決まった時点でこの領地の未来が決まる。
各ギルドから推薦を受けたレベル三十以下の「カーニヴァル」未参加のプレイヤーで決するイベントだが、今回公式設定されたトトカルチョに多くの政治家や貴族連中の他に領主セラフとゲストで呼ばれた。マイト=ゴルディーさえもが参加する。そこでクーデターを起こしている側からある提案が持ち上げられた。トトカルチョで賭けたプレイヤーもしくは、パーティーが優勝した時点で誰が次の領主になるかを決めないかと」
「それを承諾するほどセラフもバカではあるまいて」
「トトカルチョでドローもしくは受けない場合は、クーデター側はこう言って会議を黙らせて行ったな。魔法戦争の二の舞を踏むよりはマシでないかとさ」
「……、それで六王獅軍が三十六の大隊を率いて待機しているのか。クーデター側とかまどろっかしいの話はなしだぜ大将。貿易都市の財務大臣、ティム=コーエル侯爵とケイマン率いるギルド「悪魔の心臓」だろ。そこまでアンタが言った時点で欲しい情報は分かった。「カーニヴァル」優勝候補」
「流石だな。こちらは情報料として一億セルが限度一杯だ」
「へー、そうかい。なら俺のイチオシは同世代最強にして六王獅軍のトッププレイヤーの仲間入りを果たした≪魔王の右腕≫かな」
「悪いな。いつも」
一億という大金をポンと投げるようにトレード終えると、ふらりと去っていくケイマンに俺はいつもならしないことをした。
「アンタが隠し事をするとはな。
その程度の情報、アンタなら見ただけで見抜けるだろうが。
それを一億で取引するほど俺は落ちぶれちゃあいない。何を企んでいる? 答えろ、ケイマン。
アンタの目的は一体何だ。どうして戦地から離れて奴隷商人になった」
「それは手切れ金と思ってくれればいい。
これで最後だ。情報屋クモ、長い間世話になったな。
これから言うことは忠告だ。この領地を離れろ。後悔することになるぞ」
「情報屋に忠告とはいい度胸だな。
なら、俺からも忠告だ。新しい風には注意することだな」
俺は間違っていないと思いたい。
情報には情報で返す。
これもまた俺の流儀だからだ。
情報屋はまだ知らない。
彼がいつのことを言ったのかを知る時、彼は敵か? 味方か?
情報屋の日常が今日も更けていく。
後書きまで読んで戴いた方々、ありがとうございます。
さてさて、この幕間も次話で五話目。どんな展開になるかはまた次週です。お楽しみ下さいと言いたいところですが障りだけの紹介とさせていただきます。
次話では第二章のプロローグ見たくなり、冒険ものです。ワクワクドキドキの展開になるように精一杯楽しみながらの執筆を考えていますので乞うご期待下されば幸いです。