【#001】 Opening -すべてが終わる前日譚-
初めましての方もご存知の方もこの作品に触れて頂きありがとうございます。
皆様の心に住めるような作品作りをしていければと思っております。
もうすぐ…あと半年ほどありますが連載一年と二年目に入りますので、全体的に加筆していきます。
{2015.11.9}→{2016.1.2}改稿完了しました。
新しく新規執筆と編集行ったのでサブタイトル【新#001】とさせて戴きました。
これから第2章の2部まで【新タイトル】を更新していく予定です。
誤字・脱字や感想がありましたら、ご報告お願いします。
文字数は1400と少なめのプロローグです。
今後ともよろしくお願いします。
世界一の大陸を誇るアルカディア。
暗い地平線を歩く五人の一団がいた。
一人は、鍛え磨かれた巨躯をした大男。ファンタジーゲームでよく登場する重量系の大剣二本を軽々と背中の武器スロットルに差し込んで砂地をクマのように踏んでいく。
一人は、華奢で色白の肌に長い茶髪をした少女。赤い果実を実らせた異形な杖を小さな右手で持ち、彼女の兄に手を差し伸べてくれた師から譲り受けた魔導書が腰の武器スロットルで白い輝きを放っている。
一人は黒銀のローブを身に纏い、砂地を踏むのはトカゲの足。
一人は白髪の幼女。先陣を切って歩く彼の左手を握ったまま、蒼い瞳を真っ直ぐ彼に注いでいた。
彼こそが私達のリーダーであり。
希望の光であり。
心を許した親しい友であり。
家族であり英雄である。
英雄はなにかを感じ取ったのか。
頭部をすっぽりと覆っていた黒色のフードを両手で捲り上げる。
太陽のオレンジ光が暗い地平線を照らそうとしている。
日の出に笑みを浮かべる英雄は、白髪の少女の頭をういういと撫でる。
撫でる手を少女は気弱そうな顔で見詰めると、彼は答えた。
「大丈夫。もうすぐだ」
他三人の仲間たちの目を見ると、彼等は信じる英雄に向かって頷く。
英雄の瞳には大好きな彼等と同じぐらい大切な自分の気持ちをいつ度となく救ってくれた。和ませてくれた。落ち着かせてくれた。笑わせてくれた。
地平線の彼方まで広がる無限の面積を見ていた。
自分と同じ色の青空を共有した英雄は、一度瞬きして目的地の方角を見据える。
アルカディア大陸の二十五パーセントを占める茶色の大地は途絶え、懐かしき故郷に戻る帰路に見えたのは白いキャンバス。
黒や黄色の岩肌、一点の曇りのないどこまでも続く白い砂丘は数年前ここに転生した時のことを思い出す。
辛かった。苦しかった。捻じ曲がった転生前の過去。
新しい出会いが生き方を変えてくれた。多くのバケモノたちと奮闘・葛藤・研鑽を続け。そして「自分」を認めた場所。
ある事件によって灰燼となった天を衝く古代人が作ったとされる【巨壁マグナイト】があった場所に見据える英雄は仲間に自分の意志を伝えた。
「行こう―――。始まりと終わりの場所へ」
仲間たちには、その意味が分かっていた。
どういう因果なのかはさて置き、この世界の歴史上一度目の魔法大戦はここから巻き起こり多くの犠牲を払いつつ止まった戦争はここから終わりへと向かっていた。
マグナイトの代わりに青い空の一部。
黒と紫の異様な瘴気と嫌な危険信号を発生する源となっているのは黒い柱。
地上から真っ直ぐ垂直に伸びた黒い柱は、鈍い光を放ちながら天を衝く。
蒼い瞳の少女はこれに怯えていたのだ。
真っ直ぐに見る英雄の目を見た少女は、自然と勇気づけられた。
最初に出会ったあの頃の自分と同じではダメだと、その恐怖を克服するよう。彼に言葉ではなくプルプルと震わせていた手を抑えて大丈夫だよ‥‥。と表情で伝える。
ニッコリ、と笑った英雄は頷いて手を引いて抱きしめた。
その行為が反則だ、と訴える杖と魔導書を持つ仲間。
やれやれ、と顔を掌で覆うトカゲ足の仲間。
ワザとらしく咳き込んで一喝を入れる大剣を背負う仲間。
彼等は最良の朝と共に終わる寸前の世界で笑っていた。