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うりと夏休み〜正月〜

作者: ぬこ@nuko_nuko



 「あけましておめでとうございますっ!」

 「本年も昨年同様宜しくお願い致します。」

 「あしゅ!」


 とりあえず、新年ってことで!

 三つ指ついて、向き合って、ぺこりと頭を下げて。

 三人、向かい合って頭を下げて新年の挨拶をしたところでっ。


 いろんなことがあったなぁ、なんて思ってみる。

 ジィちゃん家に住めるようになったこと、遺産の事、雲罫に逢えた事。


 そして、うりにあえたこと。


 数え上げりゃきりがないっていう位。

 ほんといろんなことがあったなぁって思ってみる、この一年(っていうより夏以降か)だ・・・って、もう去年になるのか。


 あっというまだったよなー、なんて思って、なんか妙な気分。

 去年の今頃と、どんだけちがうんだろうって。

 一年。

 それが、こんなにも変わるもんなんだなぁ、なんて思わずしみじみ。

 


 「隼人。」

 「ん?」


 

 手渡してくれるのは、ポチ袋。


 「そして、是はうり嬢に。」

 「ぅ?」

 

 うりにも、ポチ袋。


 「お、お年玉ってやつかっ!?」

 「うむ。」

 「いいのかっ!?」

 「うむ。饅頭でも買って食うように。」

 「・・・初めてもらった、お年玉っ!」


 手渡してくれたそれは、リボンつけたネコが書いてあるポチ袋。

 実は、お年玉もらうのってこれが人生初めてかもしれない。

 おもわず、顔がにやーっとして、どうしたらいいのかわからなくて、うりを見る。


 「まっ!ぅーあっ♪」

 

 えらく分厚い、その袋の中に手を突っ込むうり。

 ・・・やけに分厚すぎないか?


 「雲罫?」

 「ん?」

 「うりのって・・・」

 

 ん、と涼しげに笑ってうりを見ている雲罫。

 その、うりはといえば。


 「チョコかっ!」

 「うむ。喜んでもらえたようで何よりだ。」

 「ぅまっ♪まー!」


 ご機嫌でさっそく口に入れては嬉しそうに口を開けてみせる(見せなくてもいいぞっ!)うり。

 

 「俺も雲罫にお年玉をっ!」

 「では、ここはやはり王道の肩叩き券で頂こう。」

 「お、王道なのか?」

 「うむ。風呂上りにでもそうしてもらえれば良い。そしてこれはえこ殿に。」


 そういって、ポチ袋から煮干をだしてやる雲罫。

 にあー、と鳴いてしゃくしゃく、と音を立てて旨そうに食べる、えこ。


 「ごったまえった!」

 「うり、もう食ったのか?」

 「ぁゃと、ぃくちゃも!」


 そういって、ベタベタの手の平に載せているのは、チョコ。

 おまけに口の周りは…(てか、顔の周りだな、既にっ!)チョコまみれ。

 それを、一つずつ雲罫と受け取ると、同じく口に入れる。


 うりのお年玉──終了っ!


 初夢、って今夜の夢がそうなんだったっけ。

 新年元日っ!天気も良くて積もった雪に反射して、すっげぇ眩しい。


 今日は、バァちゃん家に挨拶行って、帰りに森んとこにあった神社におまいりでもして。


 「では、雑煮を作るとしよう。」

 「おお!昨日モチもらったもんなっ♪」

 「うむ。うり嬢と隼人、餅は幾つ入れようか。」

 「俺は3つかな。」

 「ぁっちゅ!」

 

 ・・・8こは無理だろう、うりっ!




 「ここで小松菜を入れるのがコツなのだ。ダシは是で良い。」

 「雲罫、ほんとすげぇよな。俺こうした雑煮って始めて食う!」

 「ふむ。では腕によりを掛けて作らねばな。」

 

 杵つき餅も初めて。

 ババァん家では食ったことないし、一人暮らししてからはそれこそますますない。

 囲炉裏で餅を焼いて(その餅がぷーっと膨らむのを見てうりが大喜びして)、今年初の食事になるわけで。

 

 「あ、雲罫。」

 「ん?」

 「・・・や、天気いいなー?」

 「うむ。どうした?」


 ふと。

 正月、よく俺バイトしてたんだけど。

 実家帰るからって休みになる人多くてさ。

 雲罫は、帰らなくていいのかなと、一瞬思って。


 「ぃーくーちゃっ!」

 「お、うり嬢。餅は焼けたか?」

 「ぷーって!そぇで、うり、あーぅって!そったぁ、ぉぉおおお!」

 

 どうやら、餅が膨らんで、ついつい食べてみたら伸びて、旨かった、ということかっ。

 うん、摘んでみたくなるよな、こう伸びてると。

 

 「では、そろそろ盛り付けるとしようか。」

 「お、おうっ!」

 「うりも!」


 刻んでおいた具を少しずつ取り分けて。

 焼いた餅を乗せて、この上から雲罫特製だし汁をかければ、完成!

 さっきからしてるすっげぇ旨そうなニオイが既にたまらない。

 

 一年の計は元旦に在り、っていうけど、今年も旨いもの食えるってことだよなっ?



 「すっげぇうまい!」

 「っま!」

 「実に満足だ。」


 小松菜に、かまぼこに、卵に豆腐にミツバが散らしてあって、見た目もキレイ。

 いいダシがきいてて焼いた餅が香ばしくて。


 「ところで、正月なのだが。」

 

 思わず、びくっとして、飲み込みかけた餅が喉に詰まりそうになる。

 

 「っげほっ、っがっ!・・・あー、びっくりしたっ!」

 「ぁゃと、いたい?」

 「うり嬢、そういう場合は背中をとんとん、とたたいてやると良い。」

 「ぁぃっ!」


 とんとん、と背中を叩いてくれるうり。

 激しくむせこんで・・・あー、よく正月に餅喉につまらせて、っていうのはこういう心境なんだな、多分。

 いや、実際これはしゃれにならないぞっ!

 掃除機で吸いだせって、絶対きついんじゃないのかってくらい、焦る焦る!

 ま、まあ、無事でよかったっ。


 「しょ、正月だな、うんっ。」

 「うむ。茶はどうだ?」

 「いや、大丈夫っ!」

 「ぅ?」


 正月なのだし、我はそろそろ家に帰らねば。


 なんて言われるんじゃないかと、実は怖かったりする。

 確かに、実家だし、行ったっきりもう来ない訳じゃないんだよな。

 そうなんだけど、なんていうか・・・


 聞けばいいことなんだろうけど、なんとなく、聞けなくて。

 去年があんまりにも幸せだった分、今年はもしかしたら?とか、あれこれ出てきてみたり。

 新年早々自分の情けなさがイヤになってきたりもするが、どうしようもないよな。

 

 「ぁゃと?」

 「ん?」

 「いたい?」

 

 じーっと俺の顔を覗き込むうり(の口の端には餅)。

 餅を焼く時についたんだろう、白い粉が指先についたままの小さな手。

 うり専用の小さなお椀をもったまま、どうしたのか、と見上げている。


 「いや、なんでもないぞっ。雑煮がうまいなーとおもってな?」


 そういって、そのおでこを撫でてやる。

 

 「うま?」

 「うん、うまいっ!」

 「うまねー♪」


 にこっと笑うと、同じように満面の笑みで応えてくれる、うり。

 そして、それをじっとみる、雲罫。


 「喜んでもらえて何よりだ。」

 「うん、うまいぞっ、雲罫、ありがとなっ!」

 「うむ。隼人。」

 「ん?」


 応えて。

 気になって、思わず言葉が遅れそうになるのを、隠す。

 

 もし、雲罫が実家に帰りたいっていったのなら、それは仕方ない事だし、何より、家族のところなんだ。

 こうして、ずっとここにいてくれて、俺が嬉しかった分、雲罫の家族に淋しい思いをさせているのかもしれない。

 

 ならば、又来てくれよなっていって、土産を持たせて送ってっていうのが、それこそ「王道」だろうって。


 元々、一人。

 うりと出会って、二人。

 そして、雲罫と出会って、三人になって。


 それが、また二人に戻る。


 元々一人で、淋しいなんて思わなかったのに。

 一緒に居る事になれちゃうと、淋しい、が怖くなるんだな。


 これで、もし、うりまで居なくなったら。



 ・・・元の、一人に戻る。


 言葉にしてみたら、「元通り」ってやつだろう。



 一人。

 元通り。



 ただ、それだけ。

 

 ・・・それが、「ただ、それだけ」に思えないから、思えなくなったから、こんなに怖いんだろうな。

 

 朝起きたら、隣に居て。

 飯を食うのも、一緒で。

 いい事も、悪い事も、一人じゃなくて。


 それが、日常になると、今からまた一人に、一人きりになる。

 それが怖くて。


 

 「隼人、雑煮はうまいか?」

 「最高にうまいっ!」


 

 勝手に、想像して。

 それで、今こうして掛けてくれる声をきいて。

 もし、もし、と、想像がリアルに感じて、怖い。


 

 「では、食べ終わったら、でかけようか。」

 「ぁーちゃ、いよちゃ♪もちつくの!」

 「おう、餅つきさせてもらおうなっ!」

 「うむ。」

 「ぉぉぉおおおお!」

 

 初めての餅つき、楽しみ。

 すごい、楽しみなんだ。


 これから、毎年こうして皆でできると、いいな。


 「隼人。」

 「ん?」

 「我は。」

 

 言いかけた、言葉の先。

 

 「茶を一杯所望する。」

 「お、おう!うりも飲むだろ?今もってくる。」

 「ぁぃっ!」


 想像していた言葉と違うことに安心して、それでいて、変な緊張感。

 せっかくこれからばぁちゃん家にいくのに、こんなんじゃダメだよなって思うんだけど。

 どうしても、時々気になってたことがこう・・・


  ──正月。

 

 「実家で家族と過ごす」


 っていう定番のイベントってことで。

 このままで、いいのかって。

 そんなことが、頭から離れなかったりする。


 しゅわっ、と急須のなかの茶葉に湯を注いで、立てる音と香り。


 この瞬間って俺割りと好きで。


 あれこれ考えてる事とかが、この音と香りでふわっと消える感じでさ。

 

 いつもの、その感覚を思い出してほんの少し気持ちが楽になる。

 また来てくれるんだし。


 

 ふと、自分でそう呟いて、ここが、「家」じゃなくて、「遊びに来ている」場所なんだって、思ってまた気持ちが暗くなる。


 なんだよ、俺、ほんっとに情けねえな。

 家に遊びに来てくれた友達を送る、それがこんなになんともいえない気持ちになるなんてさ。

 部屋に遊びに来た奴ならいたけど、送っていく事もなかった。

 ただ来て、帰って行って。

 

 なんてことない、ただそれだけなのに。


 一緒に居てくれる事が、そんな毎日が永遠じゃないってことが、こんなにも、・・・なんて。

 

 「隼人、どうした?」

 「・・・ん?」

 「戻りが遅いのでな、様子を見に来てみたのだ。」

 「あ、ごめんごめん、丁度今入ったとこだ。」

 「では、一つ持とうか。」


 湯飲みを一つ渡すと、じっと俺を見て。


 「では、行こうか。」

 

 そういって、優しく笑うと居間に戻る。

 



 「ぃゃとっ♪」

 「うむ、旨い。」


 二人して満足そうに茶をすする。

 それを見ながら、同じように俺も茶を飲む。


 ・・・すこし、渋いかな。

 時間置き過ぎた感じがして、ほんの少し渋い。


 「ごめん、渋くないか?」

 「ぅまよー?」

 「旨いぞ。」


 でも、それをうまい、と飲んでくれる二人。


 うりからしたら、間違いなく渋いだろうし、飲みにくいんじゃないかと思う。

 でも、目があうとにこっと笑ってくれて。

 雲罫も、同じように姿勢正しくいつものように旨いと言ってくれて。


 二人が気を使ってくれているのかもしれない、と思って。


 もしかしたら、雲罫も気を使って、言わない、言えないのかもしれないと、ふと気になって。







 「ぁちゃっ!」

 「うり、大丈夫かっ!?」

 「うり嬢、手を。」

 「ぅー・・・いちゃいの、ぁぃっ!」


 バァちゃん家に向かって、いつもの道。

 雪が一面に積もっていて真っ白で。

 地面が雪でふかふかしてて、そこにてんてんと足跡がついていくのがなんか嬉しい。


 一面の雪に嬉しそうに走り出したうりが滑って転んで、それでもにこーっとしてる気持ちがなんか懐かしくて、抱き上げてやりながら俺も思わず顔が笑う。


 バサッ!!!!!


 「ぉぉぉぉお!」


 いきなり、後の木の枝に積もった雪が落ちる。

 その後にはキラキラと光が降りてきて。


 「すっげぇキレイだなー!」

 「うむ。実に良いものを見た。」

 「きえー♪」


 上を向いて口を開けたままのうり。

 キラキラの粉が少しずつ落ちていって、少し離れた此処から見ていると光を浴びているみたいで。

 まるで、映画とかにあるシーンみたいに。

 くるくるマフラーして、帽子被って手袋したうりが光に包まれていて、凄いキレイ。


 ・・・ほんと、自分がどうしようもなく嫌になる。


 映画みたいに。

 実際にはありえないみたいに。

 うり。

 現実では、ありえない?

 今、此処に居てくれる。

 でも、いつまで。


 本当に、今の幸せは、いつまで。


 雲罫も、きっといつか帰る。

 うりも、いつか、居なくなるかもしれない?


 考え始めたら、どうしようもなくて。

 自分で、バカだってわかる。

 なのに、ふとした瞬間に思い出しては消えてくれない。


 今が、こんなに幸せなのに。


 また、「またね」といって、見送る日が来るのだろうかって。

 「またね」っていって、何事も変わりなく会える日が来るのかって。

 その、「またね」は「さよなら」とは違うんだろうかなんて、考えては自分が嫌になる。

 

 あの時、「ただいま」って言ってくれたんだ。

 ここが、家で、居場所なんだって。

 そう思って、もう何も怖いことなんてないはずなのに。


 怖いんだ。


 また、もしかしたら、「すぐ帰ってくるからね。」っていったのにって。

 一人で、暗い家でじっと帰りを待って。

 帰ってきたのは、何も「ない」、誰も「いない」白い箱。


 そんなこと、ないって、思ってる。

 信じてる。


 それでも、時々こうしてどうしようもなく不安になる。

 それをどうしたらいいかなんて、わからなくて。


 一緒に居てくれるから、幸せで嬉しいのに、怖くなるなんて、贅沢だよな。

 そんな悩みなんて、今まで感じた事なかったのに。

 幸せになって、そしたらそれが怖くなるなんて、どこまで自分が贅沢なんだって。


 一年の計は・・・って、新年早々、俺、こんなんじゃダメだろって、思うのに。

 


 「ぁゃと?」

 「んっ。」

 「こぇ、きえいねー?」

 「だなっ、うり、すっげーきれいだぞっ!」

 「ぁー♪」


 座り込んで今度は雪を拾ってはぎゅっと丸めているうり。

 その手袋に雪がくっついているのが、何回やっても楽しいらしい。

 ぶんぶん、と手を振って雪が離れていくのを見ては「ぁー♪」なんて嬉しそうに笑っている。


 「隼人。」

 

 その様子を見てなんとなく俺も嬉しくて。

 しゃがみこんで雪を同じように集めていると、後から雲罫の声。


 「ん?」


 振り返る。


 「正月だからな。」

 「・・・うん。」

 

 バシュッ。

 

 「ぶっ!」


 視界が、真っ白に。

 と、同時にひんやりとした感触。


 「雲罫っ!?」

 「ゃとっ?」

 「うり嬢、これは雪合戦といってな。こうして雪玉をぶつけ合うことで最後には夕暮れの川辺でお互いを認め合うというものなのだ。」

 「ぅーぐえのかああ?」

 「うそつけっ!」


 顔に付いた雪を払うと、雪玉を俺も丸めて作る。


 「さぁこい。受けて立とう。」

 「いくぞっ!」

 

 バシュッ!


 ヒット!・・・とおもったらっ!


 「ふふふ。」

 「や、やるなっ!」


 あっさり顔の前に出した右手でそれを受け止める雲罫。


 「うりもやう!」

 「うむ、来るが良い。」


 大きく振りかぶってうりが雲罫に向かって雪玉を投げる!


 ・・・が。


 手袋にはりついていた雪玉は飛んでいかず、真下にっ!

 

 「ぅ?」

 「ぶはっ!」

 「うり嬢、雪玉はそっと握ってすぐに投げるのがコツだ。」

 「ぁぃっ!」

 「よし、うり、こいっ!」

 「ぁー!」


 しゃがみこんで、きゅっ、きゅっ、と雪玉を握るうり。

 満面の笑みで立ち上がると、俺に向かって雪玉を投げる・・・がっ!


 「・・・・・。」


 握るのが弱かったのか、見事に空中分解っ!


 「・・・ぅー。」

 「うり、ほらっ、キレイだぞ!キラキラしてるなー?」

 「きえぃ?」

 「うんうんっ!キレイで俺うれしいなー?」

 「ぁー♪」


 嬉しそうに雪をまた集めるうり。

 しゃがみこんで、こうしてみるとうりも玉みたいでなんだか面白い。


 と。


 バシュッ。


 「うぉっ!」


 俺の肩のあたりに当たって細かい光に変わる雪玉。


 「隙在りっ!」

 「不意打ちとは!それでも武士かーっ!」

 「残念ながら我は武士ではないっ!行くぞ隼人っ!」

 

 急いで雪をかき集めて雲罫に投げる、がっ!

 片っ端からうけとめてはそれを投げ返してくる雲罫。

 こ、こっちは玉作りながらなんだぞっ!


 「くっそー!うり!連合組むぞ!」

 「えんこー?」

 「それはとても危険だっ!れ・ん・ご・うっ!」

 「え・ん・ご!」


 バシッ!


 「特殊な趣味はその辺にしておくのだ、覚悟っ!」

 「ちっ、ちっ、ちがあああああ!」

 「ぅ?」


 第二弾をかわすと、うりを抱き上げる。

 そして、かなりでかくなった雪を抱えたうりに、


 「よし、うり!いくぞ!それを雲罫にあてるんだ!」

 「ぁぃっ!」

 「とつげきいいいいいい!!!!」

 「ぃぃぃいいいいい!」


 そういって、うりを抱えて雲罫に一直線に走るっ!

 

 「いまだ!いけっ!うりっ!」

 「ぁぃっ!」


 大きく振りかぶって・・・っ!


 「ぶがっ!」

 「ぅ?」

 「うり嬢、ナイス戦略!その作戦は素晴らしい。」

 

 抱きかかえたうりが大きく振りかぶった雪玉、俺の顔面にクリーンヒットっ!

 そ、それでもうりを離さなかったあたり、俺は自分を褒めてやりたいっ!

 (しりもちついて腹にうり直撃くらったのはヒミツだっ!)



 「実にいい正月だ。勝利と共に迎える正月というのは実に心地よい。」

 「しょーいー!」

 「うむ。うり嬢はその功績を讃えられ、少尉に認定されよう。」

 「って、こらっ!俺だけ敗者かぁぁ!」

 

 うりの帽子の上に、雪で作った王冠みたいなものを載せてやる雲罫。

 それを嬉しそうに受けるうり。


 「うむ。」

 「うむ、ってっ・・・。」

 「ぁゃと、あいっちゃ?」

 「うむ。なので我はうり嬢を連れて、隼人を置いて行こう。」


 ふっと、真顔で倒れたままの俺に言う、雲罫。

 

 「ぅ?」

 「うり嬢、我が好きか?」

 「ぁぃっ♪」

 「では、我と共に。」


 そういって、俺の腹の上からうりを抱き上げる。

 

 「では、行こうか。」

 

 と、にこりともせずにじっと俺を見る雲罫。

 くるり、と背を向けると一歩、二歩、と歩き出す。


 「雲罫?」

 

 三歩、四歩。


 「雲罫っ?」


 五歩。


 「ぁゃとも、すき。」


 六歩。

 

 「な、なんだよ、おいてかないでくれよっ?」


 立ち止まる。

 でも、こちらを振り返ることはないまま。

 ひょこっとその肩から、うりが顔をだす。


 「ぁゃと?」

 「うりっ、雲罫っ?」


 振り返らない、雲罫。

 肩越しに俺を不思議そうに見つめる、うり。

 雪の上に、しりもちをついたまま起き上がれない俺。


 そしてまた、雲罫が歩き出す。


 「お、おいっ!」


 また、一歩、二歩。

 

 「待ってくれってっ・・・。」


 ぴたり、と立ち止まる。

 それでも、こちらを振り返らない。

 黙ったままの雲罫と、こちらに手を伸ばす、うり。


 一体、何がっ・・・?

 雲罫、どうしたんだ・・・?


 どうして?

 さっきまで、一緒に雪合戦して、笑ってて。

 それが、今は無言で俺から去っていって・・・?


 「雲罫・・・?」

 

 じっと立ったままの雲罫。

 座り込んだ尻と、手がじんわりと冷えてくる。


 どうして、どうしてこっちをむいてくれない?

 冗談だよな?

 何か、仕組んでて、きっと、おいかけたらまた雪玉で・・・


 しんと静かな空気が、穏やかで。

 ドキドキしてた鼓動の音だけが耳に響いて落ち着いていいのか落ち着かないのか。

 時折吹く風が立てる音以外は何も聞こえてこない。

 

 一体、何が起きてる?


 再び、歩き出す雲罫の背中をじっとみつめて、動けない俺。


 「ぁゃと?ぃくちゃ?」


 うりの声が少しずつ小さくなる。

 さくっさくっ、と雪を踏み分ける雲罫の足音。


 「なぁ、どうしたんだよっ・・・?」

 

 その足音が小さくなる。

 これから、バァちゃん家にいくんだよな?

 このままどっかいっちゃったりしないよな・・・?


 それでも、ゆっくりと歩いていく雲罫。

 一度も、振り返らない。

 どうして?


 「雲罫っ!」


 ぴたり、と立ち止まる。

 

 「雲罫、どうしたんだよっ・・・。」


 止まったまま、うりの小さい手が俺に向けて伸ばされたままで。

 その手を掴むにも、距離が離れすぎて。

 

 「ちょっとまってくれってっ・・・。」


 再び、歩き出す雲罫。

 また、距離が遠くなる。


 「お・・・置いてかないでくれっ!」


 また、立ち止まる。

 冷たくなった手をついて、起き上がる。


 こうして、このままどっかに行っちゃうのか?

 正月に、帰っちゃうのか?

 

 一歩、一歩と二人に近づいて歩き出す。


 立ち止まったままの雲罫にむかって走り出す。

 

 

 一人で、走って。

 このまま二人が居なくなったら、向かって走っていく相手なんて居なくて。


 雪合戦は、相手がいなくちゃ成り立たない。

 会話だって、一人じゃダメだ。


 どこにも、行っちゃダメだ。

 俺のワガママなのもわかってるし、迷惑かけてるのだってわかってる。

 でも、嫌なんだ。

 

 「いかないでくれよっ・・・。」


 側に、これからもずっと側にっ。

 どこにも行っちゃダメだ。

 これからも、ずっとこうして一緒にいてくれないと、嫌だ。


 どこにも、行くなよっ、なぁ・・・

 遊びに「来る」んじゃなくて、「帰って」きてくれよ、



 ・・・ほんとの、ほんとの家族に、なってくれよ・・・。



 言えない言葉が、胸の中でぐるぐると回る。

 今まで、こんなに二人と離れていた事なんてなかったって、思い知る。

 ・・・そうだ、本当に、家族になってくれたらって、ずっと思ってたんだ。


 でも、そんなこと、言っていいはずが、ない。

 淋しいから、ずっと居てくれなんて。


 俺だけの為に世界があるわけじゃないんだ。

 皆、淋しかったり、辛かったりして。

 なのに、俺だけが淋しいからってそんな事、いっていいはずが、ないって。


 だけど、ほんとは、ずっと、・・・このままで居たいんだ。

 


 目の前に、雲罫の背中。

 肩越しに手を伸ばしたうりの手を掴む。


 「行かないで・・・っ。」

 

 これからバァちゃん家に行くんだ。

 そして、餅つきして、帰ったらまた一緒に飯食って。


 バァちゃん家、一緒に行こうって。

 

 「俺を置いていかないでくれっ・・・。」

 

 このまま、これからもずっと一緒に居てくれよっ!

 どこにもいかないで、ずっとっ・・・。


 「バァちゃん家、一緒に、行くって言ってただろっ・・・?」

 「うむ。」


 無言だった、雲罫が口を開く。

 でも、背中越しで、表情はわからなくて。


 「一緒に、餅つきして、帰って、飯食うだろっ?」

 「うむ。」

 

 ぎゅうっと握った手袋越しのうりの手。

 それが、ぎゅっと握り返してくれるのに力づけられる。


 「どうして、急に・・・っ」

 「それから。」

 「・・・え?」

 

 再び、無言の雲罫。

 それから、・・・それから・・・?


 「それから、皆で風呂入って、また朝起きて・・・。」

 「うむ。」

 「飯食って・・・。」

 「それから?」


 それから。

 ・・・どうしたんだろう。

 それから、・・・なんだろう・・・?


 「それから、また雪合戦して・・・。」

 「いつまで、だ?」

 「いつまで・・・雪合戦は、雪が溶けるまでで・・・。」

 「雪が、溶けたら?」

 

 雪が、溶けたら。

 また、春になって、初めての春になるわけで。


 「花見して・・・。」


 でも、そこまで居てくれるのか?

 実家があって、帰らないといけないんじゃないか?


 「花が散ったら?」

 

 淡々、と問いかけてくる雲罫。


 「また、夏がきて・・・。」

 「一年、たつのだな。」

 「皆で、一年、迎えて・・・。」

 「一年、だけなのか。」

 

 一年、だけなのか。

 問いかける、雲罫の顔が見たい。

 どういう気持ちで、言っているのだろう。


 思わず黙り込んだ俺を置いて、再び歩き出そうとする雲罫。

 つないだままのうりの手に、くいっと引っ張られて。


 「言っても、いいのかっ?」

 

 ぴたり、と立ち止まる、雲罫。

 立ち止まったのは、肯定の返事なのかと思って。


 「ぁゃと?」

 「うり、このままずっと、俺と居てくれよ!絶対、居なくならないでくれよなっ!」

 「ぅ?」

 「どこにも行ったらダメなんだ・・・。」

 「うり、いっしょ、ずっといっしょ♪」

 

 ぎゅっと手を握ると同じように握り返してくれる。

 

 「ずっと、一緒だっ。」

 

 そして。


 「雲罫、どこにもいかないでくれよ!俺を置いていかないでくれっ!」

 

 そのまま雲罫に言う。


 「正月だし、実家帰らないとまずいんじゃないかとかっ・・・。」

 

 反応を待つ、が、無言のままだ。

 でも、立ち止まったまま。

 

 「ずっと、引き止めてたら悪いかって、雲罫の家族だって心配するかって、俺が幸せな分、淋しい思いさせてるんじゃないかって・・・っ。」

 

 それでも、雲罫は無言のまま、何も言わない。


 「でも、居なくなったら嫌なんだ!どこにもいかないでくれ、おいてかないでくれっ!」

 「我は、どこにも行かぬ。」

 

 口を開く、雲罫。

 続きを待つ、が、それ以上は何も言わない。


 「家のこととか、平気なのか?淋しくさせてたり・・・。」

 「隼人。」

 「・・・ん。」

 「うり嬢と、隼人は、家族であるな?」

 「う、うん。」

 「何故、口ごもる?」


 それは、・・・気になるから。

 戸籍だとか、色々と考えないといけないことや、うまくいえないけど、色々あるんじゃないかって、思うから。


 「隼人、我は前に言ったはずだ。」

 「ん?」

 「我を、信じろ、と。」

 

 そういって、じっと俺を見る。

 確かに、聞いた。

 忘れたわけなんかじゃない。


 「隼人は、我を信じているか?」

 「それは、もちろんだ。」

 「ならば、何故何も言わぬ。」

 「それは・・・。」

 「信じているのなら、話せ。信じられないのなら、黙れ。」

 「迷惑かけたらとか・・・。」

 

 くるり、と振り返る雲罫。

 

 「信じているのなら、頼れ。我は言ったはずだ。我に願うが良いぞ、と。」

 「・・・。」

 「沈黙は、信じられないが故の沈黙とみなして良いのだろうか。」

 「ち、ちがうっ!信じてる。迷惑じゃ」

 「信じているなら話せ、頼れ、願え、求めろ。」

 

 じっと、俺の目を見る雲罫。

 同じように、手を繋いだまま俺を見るうり。


 「俺が、ずっといてくれっていったら、雲罫の家族にだって、迷惑なんじゃって。」

 「何も言わないままでは、わからぬ。」

 「言ったら、気にするかって・・・。」

 「言わずに沈んでいる、家族に何もできないのでは、我は、うり嬢は。」

 「・・・家族・・・?」

 「家族だ、と思っているのは我らだけであるのなら話は別だ。」

 

 家族、って、・・・。

 喉の奥が熱くて、ぐっと唇を噛む。

 目の奥が熱くて、瞬きをする。


 「言ってくれなければ、我らはどうすれば良いのだ。」

 「言ったら、気にするんじゃって・・・。」

 「言ってもらえなければ、わからない。」

 「迷惑じゃ、ないのか・・・?」

 「何も出来ず、わからず、途方にくれて我の頭髪は全て抜け落ちてしまった。」

 

 そういって、帽子を取ってみせる雲罫。

 つるつるの、形のいい頭が見える。 


 「そ、剃ってるんじゃないのかっ!?」

 「剃っているのだ。」

 「えっ・・・あ、よ、よかったっ・・・。」

 「で、あろう。話してもらえれば、安心するのだ。」


 再び、帽子を被る。

 一瞬焦った気持ちが、ほっとして、力が抜ける。


 「・・・ごめん、俺が悪かった。」

 「うむ。隼人が悪い。」

 「そ、そっかっ・・・。」

 「だが、我も悪い。」

 「そ、そうだぞっ!」

 「隼人程ではないがな。」

 「うっ・・・。」


 そういわれて、言葉に詰まると、そんな俺を見て、雲罫がにっと笑う。

 

 「我の家には手紙を出している。何より、我は今は修行中の身なのでな、家を離れて自立できる力をつけねばならんのだ。」


 ずり落ちそうになるうりを抱きなおす、雲罫。

 きゅうっと嬉しそうにしがみつくと、俺の手をぎゅっとにぎる、うり。


 「修行が終わったら?」

 「そうすれば、帰ることも出来るが、我の家は世間一般とは若干違うのだ。」

 「・・・っていうと?」

 「元々我の兄が家を継ぐのでな、我は新しい流派を築くなりせねばならんだろうな。」

 

 新しい流派を築く、っていうのは、寺を建てるのだろうかっ?

 それとも?


 「願わくば、この村で一介の坊主として生きていくつもりなのだが。」

 「・・・え?」

 「我の家にも、いづれ案内しようぞ。勿論、うり嬢も、えこ殿も。」

 

 そういって、一泊おくと。


 「無論、望むのなら、だ。」

 「うん、いつか行ってみたい。」

 「案ずるな、我の家は金持ちだ。空を飛んで帰ることくらいは可能だ。」

 「・・・って、マジかっ!?」

 「我を」

 「しんじてるぞっ!!」

 「ならば」

 

 押せ──行き先を。


 思い出して、雲罫の額に、人差し指をつける。

 そして、うりのおでこを。


 「ぅっ?」


 不思議そうに俺を見上げて、そして、にこーっと笑ううりと、

 

 「では、参ろうか。」

 

 同じく、最高の笑顔で俺の肩を叩く、雲罫。


 「おう、行くぞ!うまい餅食わしてもらうんだ!」

 「ぉぉぉぉおおお!」

 「実に、楽しみだ。」



 これからも、ずっとこうして一緒に居られるんだって、思ったら嬉しくて。

 うりも、ずっと一緒。

 言ってくれて、同じように思っていてくれてるっていうのが、嬉しくて。

 雲罫が「家族」だって思っていてくれたのが、嬉しくて。

 


 夕暮れの川辺で、じゃぁないけど、ほんとに話せて良かったって、そう思って。

 

 「雲罫、うり、ありがとなっ!」

 「ん。」

 「ぁいっ♪」

 

 あれこれ、俺が勝手に考えてるのよりもずっと、考えててくれたんだろうって思う。

 俺が一人で考え込んで、やつあたりみたいになってたのを、ずっと受け止めててくれたんだっておもうと、申し訳なくて、ありがたくて。


 それでも、こうして、打ち明けさせてくれて。

 

 それでいて、今みたいに、笑ってくれて。

 

 多分、どうした?ってきかれても、上手く言えなかったんだろうなって、思う。

 何をどうしたらいいか、って、まとまってなくて。

 それを、少しずつ少しずつ言わせてくれて。


 「我は、幸せだな。家族がむこうにも、此処にも。」

 「ぃくちゃ、しやあせ?」

 「うむ。ちなみにこの場合、隼人が父親になるのだろうか?」

 「おっ、俺かっ!?」

 「うむ。」

 「お・・・同じ年の息子か・・・。」

 「冗談だ。」

 「冗談かっ!」


 ふふ、となにやら含み笑いを見せて、うりを肩車する、雲罫。

 その帽子に手を突っ込んで脱がせて見たりする、うり。

 抜け落ちたんじゃないっ、剃ってるその頭にすりすり、としては、


 「ぶるいあー!」


 とか、なにやら言っては、また頬擦りして、にやーっとしてる。

 その、すぐ横でそんな二人を見てて、顔がにやけるのを隠すのに必死な、俺。

 幸せで、くすぐったくて、なんていうか、たまらなくて。

 

 「うしししっ♪」

 「ん?」

 

 そんな俺を見て、うりがまた、にやーっと笑うと、


 「だばーん♪」

 「うぉっ!」

 

 雲罫の帽子にみっちり詰め込んだ雪攻撃がっ!

 なにかしてると思ったらっ!


 

 


 


 「あけましておめでとうございまーすっ!」

 「はい、おめでとぅさんねぇ。」


 皆で、向かい合って挨拶を交わす。

 バァちゃんと、ミヨコさんと、俺と雲罫と、うりと。

 


 「はい、これ、バァちゃんとミヨちゃんからだよぅ。」

 「い、いいんですかっ?」

 「ぉぉぉお!」

 「我にまで?」

 

 ミヨコさんが、俺と、雲罫と、うりに手渡してくれるのは、ポチ袋。

 ちゃんと、名前が書いてあって。

 

 「いいのよぅ、お年玉なんだからねぇ。」

 

 そういって渡してくれるのを、お礼をいって受け取る。

 可愛い絵がかいてあるその袋をポケットに入れて、なんていうか、嬉しくて。

 三人で顔を見合わせて、にやーってして。


 「ほんと、ありがとうございましたっ!」

 「ぃゃとー♪」

 「かたじけない。」

 

 来年は、俺もうりとえこと、雲罫にお年玉あげようって、こっそり企んでみるのは勿論秘密だっ!

 そして、ミヨコさんとバァちゃんにもプレゼントしたいな。

 

 家族ができて、心配することなくて。

 なんか、一気に幸せだなぁって思って、何もかもがほんとに嬉しくて。

 

 ただ、普通にしてるだけで、顔が笑っちゃって。

 今が幸せだから、いつか悪くなっちゃうんじゃないかって不安になるたび、雲罫を信じる。そして、願う。

 

 信じるものは救われるって言ってたし、それに、信じろっていってくれた。

 だから、これからも、ずっとこういう幸せが続きますようにって、密かに願って。

 


 「さぁて、できたよぅ。」


 そういって、杵と臼を指差すバァちゃん。

 広い庭に置かれたそれ、テレビでみたことあるやつとほんとに同じ!

 あれで、ぺったんぺったん、ってして、餅か、なんて思わずにやけて。


 昨日、ソバと一緒にもらった餅はバァちゃんの弟さんがついてもって来てくれたやつだっていってた。

 だから、ちょっとつきたてから時間たっちゃったけどって言ってたけど、それでも十分俺の人生初めての味なわけでっ!

 今日はさらに、ついたらその場で味見させてくれるって、楽しみでたまらないぞっ!


 


 「実に素晴らしい。ご指導願います。」

 「まかせときなぁ、ミヨちゃんは餅つき名人だからねぇ?」


 上着をぬいて、手を洗う雲罫。

 笑いながら、ミヨコさんがふかしあがったもち米を器に入れて運んでくるのがいいニオイ。

 天気は晴れてて、空気は澄んでいて、幸せな気持ちで一杯になる。

 そんななかに。

 

 「ういがー!!!」「コケーッ!!!」

 

 新年初の、うりVSニワトリーズバトルが!

 腕をばたばたさせながら、逃げるうりと、雪にまぎれてうりをおいかけるニワトリーズ(保護色かっ!?)。

 綺麗な雪の上に、うりの足跡とニワトリーズの足跡がてんてんと付いていくのを眺めて、思わず噴出す。


 「じゃっだー!」「コケッ!」

 

 雪があちこちに積もった柿の木をくるっと一周して、うりがニワトリーズを追いかけている。

 腕を振り上げて、奇声を発しながらうり勝利!?


 「ふじゃっ!?」「ケッケー!!」


 い、いまニワトリーズ笑わなかったかっ!?

 さすがは保護色、畑からさらにニワトリーズが現れ、うりピンチ!

 慌てて今度は牛小屋のほうに逃げていくうりを追いかけるニワトリーズ。


 「ブモーーーッ!」「きぁぁあぁぁああああ!?」「コケーッ!」


 


 うん、今年もいい一年になりそうだよなっ?

 

 

 「

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 正月の雰囲気が、グッと湧き上がってくる。 雰囲気の作り方がとても良いです。 そして、雲罫がカッコイイ。 ありがとうございます、素敵なお話でした。
[一言] とても良かったです。これからも頑張って下さい。
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