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子連れステュワードの縁由  作者: ことわりめぐむ
31/35

9 - 8

 占い師‥‥。

 熊の話を作ってる時に今回の占い師様話は作っていたのですが、まだ内容的に早いと放置してたら、世間がそんな話題に‥‥。

 

 今回は、占い師もローレン様も無しの会話回です。



 夜も更けた執事室。パーシャを寝かしつけるためローレンが部屋に子守る。

 音がしなくなったことを確認して、三人は話をはじめた。

「今回のは四番目なのか、三番目狙いかどっちだろうな?」

「アルトゥール様がこの上を飛行されていたのは偶然でしょう。」

 ダヴィードの言葉に反論しつつミハイールは人数分のグラスを用意して、透明に近い薄い萌黄色の液体を注ぐ。

「そう、単純かな」

 その一つをヴィオロンの前に置いてズブロッカ草を挿す。自分の分も確保するとダヴィードは口をつけてそう言った。

「単純でしょう」

 意味ありげなダヴィードの言葉を否定し無表情で息と一緒に言葉を吐き出すと、同じように液体を口に含む。

「どれだけ濃いやつ出してきたんだよ。酒なのか草なのかわからねぇじゃねぇか」

「ヴィオロン様と久々の酒盛りですからね。贅沢品です。疲労回復にはぴったりでしょう」

 ミハイールの言葉にはこれからの業務を差している。

「疲労回復‥‥ね」

「さて、タヴィードの考える単純じゃない理由を検証しましょうか」

 三人の話題は、今日の飛行機である。

 パイロットはこの国の第四王子。ソロヴィヨーフ・アルトゥール・カールルエヴィチ。戦闘機での戦いにおいてたくさん功績をあげ『英雄』と呼ばれている男である。

 飛行機は彼所有のプロペラ機。所々破壊されているが、爆発もせず庭にめり込んだまま放置してある。

 被害は、庭と庭師の小屋。乗っていた王子の負傷。彼は、事故以来意識喪失のままだ。

 屋敷側には物理的損害しかないため、さして議論する必要は無いと考えられる。だが、アンダー・バトラー達は単純にそうは考えていなかった。

「普通に考えれば四番目の単純なミス‥‥なんだろうな。でも、三番目を気づかれないように消すには‥‥四番目を爆弾にすることなんて考えてもおかしか無いぜ」

 王子達は内側から狙われている。

 今回の飛行機事故はただの墜落事故ではなくて、ヴラディーミルを狙った事件ではないかというのが、ダヴィードの読みだ。

「まさか、考えすぎでしょう」

「あの才女様や英雄はもともと忌み子だぜ。英雄が居なくなるのはむしろ願ったりじゃねえか?それに、三番目に会うために飛行機だすって、そんな細かい予定が分かるのは」

「同じ屋敷の人間の可能性が高い‥‥と」

「しかも、ラベルが確認した飛行機自体には何にも異常はなかった」

「四番目自身の体調不良。それとも、わざとか」

「四番目が咬まされてるのかただの被害者かは知らないが、今回のは三番目狙いだと思う。しかもシュル家が」

 シュル家は第二王妃ユーディフィの嫁いできた名門貴族だ。彼女が産んだ継承者は四番目と九番目である。

 そのうち四番目の双子の片割オーリガが二番目の王位継承者と婚姻することで、シュル家としてはより近くなる椅子。

 だが、一番目と二番目は軍人でなぜか前線に出されているため、その生命は不確かなものである。

 外交中心にのらりくらりと生きているヴラディーミルは、そういう意味で王座に一番近い。

「ダヴィード」

「すいません」

 あくまでも一個人の想像だ。確証がなければ、誹謗中傷。名門貴族の名前を簡単に出したことにヴィオロンは戒める為に名を呼んだ。

 確かに余計な事を言い過ぎたと素直に謝罪するダヴィード。その向かいで、ミハイールは考え込み静かにはじめる。

「僕はその案、考え過ぎだと思いますが、否定はできません」

 考えすぎと言いうが、ヴラディーミルに危険が及ぶ可能性がある以上。ダヴィードの意見を考慮した警備を考える必要がある。

 双子の部屋は、西館に確保している以上、誰よりもそれを気にしていなければならない。

「なら結論は出たでしょう」

 ミハイールの言葉にヴィオロンが会議を終了させようとする。双方ともに納得のいく結論が出た時点で議論を終えるべきだからだ。

「あともう一つ。直接は関係ないが、あの黒い野郎は何なんだ?」

 一つの議題が終了した事でダヴィードが別の疑問を提示する。黒い野郎とは、夫人の周りをうろうろするようになった黒いフードに身を包んでいる占い師の事だ。

「占い師‥‥らしいですよ」

「あいつ、死臭してるじゃねーか。最近は死体を占いに使うのかよ」

「占いに死体を使わない方が少ないですよ」

 バカにしたようにミハイールが軽く笑うと、ダヴィードは目をそらして嫌味を言う。

「西館の臭いで、ワケわからなくなってるのかと心配したのは無駄だったか」

 流石に自分への敵意を感じたミハイールは笑顔を崩す。

「気がついて見ているのかと思えば、死臭ごときで相手を測るとは浅はかですよ」

 空のグラスをダヴィードに向け、思慮の足りなさをつつく。

「十分だろうが」

 売り言葉に買い言葉。双方は意見を出す事よりも、責め立てる暴走行為に変わりはじめていた。

 元々の意見交換の結論は出ているのだから、好きに言い合せておけば良いのだが、このままエスカレートしてローレンの安眠の妨害となっては困る。

「ミハイール。具体的に」ヴィオロンの静止の声に、ミハイールは向けていたグラスを、ダヴィードは背けていた椅子を元に戻す。

「まぁ、彼の目的はよく分からないのが現状です。ホントにつまらない会話をエリン様と交わしています。ただ‥‥」

「ただ?」

「彼の視線はローレン様をよく追いかけているのが気になります」

「ローレン様に?」

 ローレンの名前が出たことでヴィオロンの意識が議題へと向く。

「間違いかも知れないですが」

 ミハイールが見ていると占い師は良く窓の外を見ている。窓の外には大体ローレンとパーシャがいる。

 エリンと何かを話している時でも、顔は彼女のほうを向いておらず、見ている先にはヴラディーミルとローレンが一緒に居る。

 気にしただけでも数回、彼はローレンと誰かを見ていた。偶然とするには多い回数である。

「出来るだけローレン様には独りにはさせないように私が付きます」

 占い師の話題など全く気にしていなかったヴィオロンは主の名前が出たことで他人事ではなくなってしまい、議論を正常化させるために第三者的に進めていた会話を自分で結論付けてしまう。

「あなた方は、とりあえず先ほどの件に気をつけてください」

 そして、決定事項を端的に伝えると今夜の意見交換は終了した。





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