命に変えてもついてきなさい宣言?
漆黒に輝く黒髪を風に遊ばせ、貴方は僕の前に現れた。
悪魔が舞い降りたとその黒い瞳を見て僕は思った。
凍え死ぬかと思った。
俯き力の入らない身体を抱きしめる。
ガチガチと歯を鳴らし、僕は不意に顔をあげた。
そこには真っ白な服を真っ赤に染めた幼き少女の姿。
闇に染まった真っ黒な髪と、意思の強そうな黒い瞳を僕に向け少女は呟いた。
「お前、天使?」
第一声が驚きの言葉で僕は思わず噴出しそうになるが、体力の限界でそんな力は無かった。
「…どうしてそう思うの?」
僕は少女を見つめた。
少女は真っ黒で、服だけ真っ赤で悪魔のようだ。
「目も肌も髪も真っ白だ。」
そういわれ俯いてしまう。
僕にとって色素の薄い白い髪も、白い瞳もコンプレックス以外の何者でもないのだから。
隠してしまいたい衝動に駆られる。
「…雪とどうかしてる。羨ましい。」
女の笑顔がこれほど奇麗だと感じたことは無い。
気がつけば少女に手を伸ばしていた。
触れることをためらい静止した手を見つめ、僕は顔を真っ赤に染める。
「おまえ。名前は?」
少女は制止したままの手を見つめ、僕を見下ろした。
「銀。キミは?」
少女は一瞬ためらったのか、言葉を飲み込んだ。
「なんだ。人間か。せっかく奇麗だったのに。」
なんていった?
”人間”であることに幻滅された?
「え、と?キミは人間じゃないの?」
そう聞き返すと恐ろしいほど鋭い瞳で睨まれた。
「汚らわしい人間の分際で私に質問するな。」
先ほどの悪魔と言う表現は間違っていないようだった。
真っ黒な目が恐ろしい。まるで別の生き物のようにみえる。
何故睨まれる?僕は寒さで震える手を急いで引っ込めた。
「行き場もないようだし…
仕方ない。私が雇ってやる。宿付き。三色食事つきだ。拒否権は無い。」
ビシリと言い捨てられ僕は呆然とした。
「え?だってキミ僕より歳下じゃないの?」
どうみては少女は幼く、僕より年下に見えた。
「だから?年齢なんてどうだっていい。
大切なのは…学!」
頭いい奴が一番?
学のない僕はこうして彼女についていく事になったんだ。