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遺る重さ
納棺師時代に、私はこれを先輩から教わった。
「思い残したことがあると、ご遺体は重くなる」
先輩自身は、この話をある遺族さんから教わったらしい。
非科学的だとしか言えない話だが、先輩はすんなりと信じたそうだ。
「だって、ご遺体の重さが妙な時って、結構よくあるでしょ?」
細い身体をしているのに、異様に重たい故人様。
それとは逆に、重たそうな身体をしているのに驚くほど軽い故人様。
「魂の重さは二十一グラム」という話は耳にするが、明らかに二十一グラム程度の質量ではないレベルの体重差を感じることがある。
この仕事をしていると、異質な重さの故人様に出会うことは一度や二度じゃ済まない。
「よく思い返してみれば、重さが変化してるんじゃないか、って思うような故人様もいるでしょ?お支度してる時は動かせないぐらい重たかったのに、納棺する時は軽々持ち上がっちゃう故人様。あの人たちって、お支度が済んだから少し軽くなるのかも」
確かに科学的ではない話だ。
だが、私も先輩と同様に信じることにした。
亡くなったとて、人の思いの重さはそれぞれ自由なのだ。




