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火の玉(仮)
これは私が覚えている限り、一番古い不思議な体験だ。
小学四年生の夜、家族と外食した帰り。
街灯の無い、周りは畑だらけの田舎道だ。
家族の後ろをついて歩いていた私は、車道を挟んだ向かいの道にふと目をやった。
そこには小さい墓場がある。
暗い墓場で光が見えたのだ。
一つの墓石に、まあるい光が張り付いている。
子どもだった私は「火の玉!?」とドキドキしたが、その色はアニメで見るような赤や青でなく美しい緑色をしていた。
しかも炎で作られた球ではなく、どう見てもスポットライトのような人工的な光だ。
なんだ、火の玉じゃないんだ。
ちょっと残念な気持ちになったが、周りには光源になりそうな物もライトを持った人も見当たらない。
光はウロウロと不規則に動いている。
しかし、その一つの墓石以外は決して照らそうとしない。
ずっと同じ墓石の側面をさまようだけだ。
何だろう、あれ。
私は慌てて前を歩く妹の肩を叩いた。
「ね、ねぇ。お墓のところ見て!あの光何だろう?」
私は興奮して墓石の光を指差す。
妹はしばらく墓場をじっと見つめて、口を開いた。
「どこ?」
明らかに目立つその光を、妹はなぜか見つけることができなかった。




