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寄り道怪談  作者: 昼中
26/40

棺を壊した

 葬儀関連の会社に入ったばかりの頃、私は棺の用意を手伝わせてもらった。

 ダンボールから棺を出すだけだが、大事な物なので丁寧に扱わなければならない。

 今日は木製の棺ではなく、布が貼られた特別華やかな棺だ。

 私は棺の窓を開けた。

 棺の窓の部分には透明なフィルムが貼られている。

 これのおかげで、故人様の顔を見るために窓を開けていてもドライアイスの冷気が逃げないのだ。

 しかし、フィルムは静電気でホコリや糸くずが付きやすい。

 事前の点検が大事だと習ったばかりだ。

 少しでもきれいにするために、フィルムを拭いておこう。

 そう思って触れた途端、あっさりと窓のフィルムが下にずれた。


 こ、壊した!!!


 なんという恐ろしいミス。故人様の大切な棺を壊してしまった。

 頭が真っ白になりながら、上司に報告する。


「すみません、棺を……棺の蓋を壊しました……」

「えっ」


 上司が慌てて窓の蓋を点検する。


「な、何これ!?」


 ああ、もうおしまいだ。

 棺の弁償代は給料から引かれたりするのだろうか。

 他の先輩たちも、上司の声に驚いてわらわらと集まってくる。


「うわっ、何この髪の毛!?」


 え、髪の毛?髪の毛って?

 覗き込んでみると、蓋の取っ手からたくさんの糸が出ている。

 いや、糸じゃない。

 真っ黒な人毛だ。

 取っ手から生えているかのように、何本もの髪の毛がびっちり縫い付けられている。

 上司たちが取ろうとするが、完全に縫い込まれているせいで引き抜くこともできなかった。


「これは不良品として返品するから。気づいてくれて良かった」


 先輩たちが私を励ましてくれるが、私が言いたいのはそっちじゃない。

「違うんです、窓のフィルムが外れてしまって」と泣きそうになる私をポカンとした表情で見つめ、先輩は棺のフィルムに手をかけるとためらいなく力を入れた。

 すたん、と軽い音がしてフィルムが完全に下へスライドする。


「この棺はフィルム下にさげられるんよ。知らんかった?」

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