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ウォーキング
秋の穏やかな昼下がりに、私は住宅街をひたすら歩いていた。
ダイエットのためにウォーキングをすると決意したのだ。
二十分ほど歩いていると、もう足が疲れてきた。
帰ろうかな、と迷いながら前を見ると数メートル先をおじいさんがスタスタ歩いている。
悔しい。あのおじいさんだけは追い抜かしてみせる。
必死に歩くスピードを上げて、老人の背中を追いかけた。
近づいてみると、なんとその老人は子どもを抱っこしているようだ。
おじいさんの首に小さな手が前から抱きついている。
左の肩の向こうに、子どもの黒い頭頂部が見え隠れしていた。
何というパワフルな高齢者。
きっとお孫さんを抱っこしているのだろう。
ところが、おじいさんの両手は下に降ろされたまま、歩調に合わせて前後に振られている。
明らかに子どもを抱きかかえてなどいない。
私はほとんど走るようにおじいさんを追い越し、距離をとって振り返った。
住宅の並ぶ道路を、さっきの老人がたった一人で歩いていた。




