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お坊さんの琴
小さなお寺で、お坊さんが琴を弾いてくれるイベントがあった。
近所の人が集まって、小さなテントの下のベンチに座っている。
琴を披露してくれるお坊さんが「本日は『水の変態』という曲を弾かせていただきます」と説明を始めた。
水が雨や雪などに変化していく過程を表現した曲らしい。
「ただ、この曲を弾くと必ず雨が降るんですよね」
お坊さんは困り顔だ。
私もお客さんも皆、空を見上げた。
確かに雲が少しあるが、天気予報では降水確率十パーセントだったはず。
実際、太陽は燦々と光り輝いている。
「降るかな」「降らないでしょ」
客席からもそんな声が聞こえる。
演奏が始まった。
美しい琴の音色が流れる。
しばらくすると琴の音に混じって、ぱた、ぱたた、と何かを弾くような音がした。
「雨」
誰かの言葉に、何人もが空を見上げる。
いつのまにか、空は薄い白い雲に覆われていた。
テントに雨粒が当たり、ぱたぱたと軽い音を立てている。
その雨は曲が終わる頃にはすっかりやんでいた。
「やっぱり降りましたねぇ」
お坊さんは愉快そうに笑った。




