初雪の妖精と太っちょ木枯らし
なろうラジオ大賞7と、冬の童話祭の参加作品です。
「おかあさん、キラキラしたのがふってきた!」
「あら、雪ね。どおりで寒いと思った」
女の子は空に手をかざして「つめたいっ」と笑うと、母親は女の子の上着のボタンをとめながら、空を見上げました。
「ほら見て。このキラキラはね、初雪の妖精が笑っているしるしなの。きっと、来年は良い年になるわ」
「妖精さん?」
「そう。太っちょ木枯らしがお仕事をしたってこと」
母親は首をかしげる女の子に「妖精さんのお話を聞きたい?」と尋ね、
女の子が頷くと、母親は話し始めました。
木枯らしの妖精は太っちょでね、見た目は雪だるまがとんがり帽子をかぶってチョッキを着ているみたいなの。
木枯らしの妖精のお仕事は、秋の終わりにたくさんの風を吹かせて冬を呼ぶこと。
それまでは風をお腹にためているから、丸いお腹になっちゃうの。
「ずっとお腹がいっぱい?」
女の子がお腹をさすりました。
「大丈夫よ。それがお仕事だから」
でもね、大変なことが起きたときもあったの。
ある年、秋が終わっても木枯らしが吹かなくてね。
心配に思った初雪の妖精が訪ねてみると、木枯らしの妖精が風をためこみすぎて、ぱんぱんにお腹を膨らませていたの。
そして初雪の妖精の顔を見たとたん、気がつかなくてごめんって、泣いて謝ってきたのですって。
理由を聞いたら、秋の妖精達から「木枯らしが強い風を吹かせると、初雪の妖精は小さくて軽いから飛ばされちゃう。もう少し風を弱めて」って言われていたことがわかったの。
「ひどい! 木枯らしさん、おなかがばくはつしちゃうよ!」
母親は、怒る女の子の頭をそっとなでた。
それでね、初雪の妖精は、みんなに聞こえるように言ったの。
木枯らしの妖精さんが、強い風でよごれを吹き飛ばしてくれるから、澄んだ空気になるんだよって。
その空気がおいしくて、幸せだから、キラキラした雪を降らせられるんだよって。
そしたら、風を弱めてと言った子たちが集まってきて、口々に謝ったらしいわ。
でも木枯らしの妖精はそれどころじゃなくて。
早く冬を呼ばなくちゃって、慌てて外に出たら転んじゃってね。
ためてた風がぷしゅーって飛び出してしまったの。その年はとても強い風が吹いたそうよ。
にこにこしながら話を聞き終えた女の子が「お仕事が終わったらどうなるの?」と尋ねました。
「また来年のために少しずつ風をためるのよ」
「そっか。じゃあまた来年、会えるね」
手を振る女の子の肩に雪が落ち、風がふわりと髪を揺らしていった。
読んでいただきありがとうございました。




