内外
これは、大学時代に作成した劇の台本です。
なので、小説とは異なる形式で書かれています。
読みにくいとは、思いますが、楽しんで頂けたら幸いです。
遙夏
「ようく、聞いて・・・。世界は何の前触れもなく突然、戦争を始めたの。何がきっかけで戦争が始まったのか世界は知らなかった。条約と主張の連鎖、テロ集団による無差別攻撃により被害拡大。いつの間にか世界は、戦争を始めたわ。そして、世界が戦争を始めて半年、この国では自衛権を発動し、20歳から50歳までの男の人と女の人には徴集がかかったの。兵隊になりなさいという事。その例外として、50万円支払った人には徴集免除というのがあったの。兵隊さんにならなくて良いよって事ね。50万円という額はその当時にとっては莫大な金額だったわ。その時、全ての物の値段が高くなっていたの。食料の大体は自衛隊が持って行っちゃって、私たちには中々手に入らなかった。徴集に掛からなかった人達はアスファルトを剥がし、畑を起こし野菜の種を蒔いた。いっぱい蒔いたわ。そんな中、政府は宝くじを発行したの。少しでも国民からお金を徴収したかったからだと私達は後から気付いたわ。最高金額は100万円。徴集免除額の二倍の金額だった。その宝くじは「青い鳥」と名前が付けられて、安いお金で幸せを運ぶという謳い文句で売り出された。その安い金額で買える宝くじを私達はお金を貯めて買った。でも、当たったお金のほとんどが税金として政府に取られてしまう事を知らなかった。知っている人達、当選した人達にはきつく口止めされてたの。周りの人達はその事を知らないから、当たった人を陰で非国民と言ってたわ。羨ましいからね。でも、お金が欲しいから、私達は青い鳥を追いかけたの。もう、空には戦闘機以外何も飛んでいない時代なのに。そんな時代を私達は生きたの」
舞台に椅子と机が置いてある。一人の男が本を読みながら黙って座っている
その所に一人の男が入って来る
置いてある椅子に腰をかけながら
四季「久しぶりだな」
本からは目線を放さない
樹「あぁ・・・」
四季「何、してた?」
樹「本を読んでいた。あとは手伝い」
苦笑いしながら
四季「何処も変わらないな」
樹「戦況は変わってきている。それなのに生活が変わってきてないのが不思議なくらいだ」
沈黙が続く。
笑って
四季「お前も変わらないな」
樹「そう簡単に人は変わらない」
四季「そうか?」
樹「何か面白いか?」
四季「いや、こうしてお前とココで話してるのも久しぶりだなってさ。あの頃に戻ったみたいで変な感じ」
樹「もう、戻らない」
四季「そうだろうな。もう、あの時には戻らないだろうな。なんと言うか老けたな」
樹「まだ、19歳だ。そして、もう20歳になる。来年には徴集だ」
笑うのを止めて怒り声で
四季「うっせよー」
本から目線を外して四季を見る
樹「嫌なのか?」
自分の足元を見る
四季「嫌だね」
本に目線を戻す
樹「そうか」
また、沈黙
四季「お前も呼ばれたのか?」
こくん、と頭を下げる
樹「・・・」
四季「あいつの遅刻癖はいつまで経っても直らないんだよ」
樹「その内、来るだろ」
四季「そうだな」
樹「まだ、付き合ってるのか?」
四季「あいつと?」
樹「それ以外なのか?」
四季「いや、付き合ってるよ」
樹「そうか。大変だな。がんばれ」
笑って
四季「そういう風に謝る癖も直らないだな」
少し恥ずかしそうに
樹「簡単に人は変わるものではない」
本を読んでいる樹を見ながら
四季「そうみたいだな」
勢い良く女性が出てくる
遙夏「久しぶり~!」
四季「昨日、振り!」
樹を見て、四季を見て 樹を見る
遙夏「アンタは良いのよ。久しぶり」
樹「大学が休校、サークル活動休止が約半年前、それからだ」
遙夏「そうだね」
四季「あぁ・・・。そうだな。」
樹の方を向いて、少し笑う
遙夏「樹は変わらないね」
少し黙ってから
樹「話があると聞いたが?」
遙夏「あ、そうそう」
体勢を遙夏の方に向ける
四季「そうだよ! なんの話だよ。俺も何も聞いてないぞ」
遙夏「アンタは黙ってなさい。みんな来てから話すから」
四季「あいつら来るのかよ?」
遙夏「ちゃんと連絡したもん」
四季「そうですか」
樹「どうして集合場所に学校を選んだ?」
遙夏「集まるんだったら、学校が一番だよ」
客席や天井を見て
四季「この部室でよく話したからな。あ!」
樹(首を少し動かすぐらい)と遙夏は四季を見る
遙夏「どうしたの?」
天井を指差しながら
四季「宗一郎が景を叩いたスリッパが飛んで天井に当たって出来た汚れがまだ、残ってる!」
笑顔で宗一郎が出てくる
宗一郎「俺がなんだって?」
四季(手を叩いて)と遙夏が大笑いする
四季「タイミング良過ぎ!」
宗一郎「うん!? 何?」
遙夏「あの時、花火みたいにスリッパが飛んで行ったよね!」
宗一郎「あぁ、あん時のね。それがどうしたの?」
四季「跡が残ってんだよ!」
ビックリして四季を見る
宗一郎「マジで!?」
遙夏「ホント、ホント」
四季が指を指す
四季「ほら、あそこ」
指を指された所を見る
宗一郎「ドコ?」
四季「あそこだって!」
宗一郎「あぁ・・・本当だ。マジで残ってる・・・。あん時、スリッパについてたガムがあいつの頭にくっ付いたんだよね」
遙夏「本当?」
四季は手を叩いて笑う
四季「あはは。そうそう!」
遙夏「その後、どうしたの?」
宗一郎「髪の毛にくっ付いて取れないから髪を鋏で切った」
四季「10円ハゲみたいになって面白かったな!」
遙夏「笑い事じゃないよ!」
樹「そういえば、その次の日に髪の毛を切って来たのは、そういう理由だったのか」
四季「そうそう。よく覚えてるな!」
驚きながら
宗一郎「あ、いっちゃん、居たんだ」
笑いながら
遙夏「うわぁ、ヒドイ」
四季「ひでぇ!」
宗一郎「だって、影が薄いんだもん!」
笑いながら
四季「うわぁ!」
笑いながら
遙「樹、可哀想!」
笑いながら樹に近づいていく
宗一郎「また、影が薄くなった?」
樹は隣に来た宗一郎を見上げる
樹「痩せたか?」
宗一郎は少しびっくりして、苦笑いする 最後は笑う
宗一郎「こんな世の中だからな。いっちゃんも食べてるか? 食べないともっと影が薄くなるぞ」
樹「秋庭は、自衛隊に抗議してれば影は濃くなるだろうな・・・」
困惑の表情
遥夏「うん!?」
宗一郎「知ってんだ?」
樹の方を見る
四季「何が?」
樹「あんだけ騒げばな」
樹と宗一郎を交互に見る
遙夏「え!? なになに?」
笑いながら
宗一郎「自衛隊に喧嘩売った」
四季「はぁ!? バカじゃねぇの?」
遙夏「大丈夫なの?」
樹「大丈夫なわけがない。秋庭が一人で抗議していたらそんな問題にはならなかっただろう。だが、秋庭がやったのは暴動だ」
遙夏「どういう事?」
四季「集団デモか?」
宗一郎「あぁ」
四季「つい最近、法律で決まったばっかじゃねぇか」
宗一郎「知ってるよ」
四季「何人かパクられたのか?」
宗一郎「結構。捕まった」
樹「何人か何も関係ない人間も巻き込み捕まった」
遙夏「えぇ!?」
宗一郎の胸倉を掴む
四季「お前・・・! デモには何人か犠牲者が出るんだから俺達もその法律に従って、みんなで頑張ると決めたんじゃないのか?」
宗一郎「あぁ。俺が悪い」
樹「時期と場所とやり方を考えた方が良い。あとは・・・。」
顔は宗一郎に向いている
四季「あとは何だよ。樹、何が言いたい?」
樹「がんばれ」
宗一郎が笑う
宗一郎「ふっ」
宗一郎を見ながら
四季「何、笑ってんだよ!? 樹も何、応援してんだよ!」
四季を真っ直ぐ見ながら
宗一郎「わりぃ。悪かった。次は気をつける」
四季「本当だな?」
宗一郎「うん」
四季は宗一郎の胸倉を放す
四季「気をつけろよ」
宗一郎「あんがと。いっちゃんもな」
一同、沈黙
四季が席に着くのを見てから、自分も席に座る
宗一郎「そういえば、景が来ないな」
不機嫌ぽく
四季「あぁ」
無理に明るく
遙夏「そうだね!」
宗一郎「ところで、呼んだ理由って何?」
遙夏「ナイショ!」
樹「信義に二種あり。秘密を守ると正直を守るとなり。両立すべきことにあらず」
笑いながら
遙夏「それって、ひどくない?」
樹「秘密なきは誠なし」
笑いながら
四季「それ、ギャグか? 俺も知らないんだよね」
宗一郎「へぇ。 そうなんだ。そういえば、お前らってまだ付き合ってるの?」
一同黙る
宗一郎「え!? え!? 禁句だった?」
恥ずかしそうに
遙夏「ううん。付き合ってるよ」
安心した表情で
宗一郎「あ、え!? 今の間は何?」
四季「いや、別に何もないけど」
笑いながら
宗一郎「お前らって前からそうだよなぁ。なんかウジウジしてる」
四季「ウジウジしてねぇよ」
樹「恥ずかしいのだろ」
宗一郎「小学生の男が個室で踏ん張ってるのバレタみたいだな」
四季「そんなのと一緒にするな! というか、そういう風に例えるな」
遙夏「一緒なんだ・・・」
遙夏を見て
四季「そこ、凹むな!」
二人を見ながら
宗一郎「そういうトコロは変わらないな」
四季「どういうトコロだよ!」
遙夏を見ながら
宗一郎「どういうトコロって、ねぇ?」
ビックリして恥ずかしげに
遙夏「なんで、私に聞くの?」
宗一郎「恥ずかしがっちゃって!」
遙夏「うっさいなぁ!」
宗一郎「ま、喧嘩しないようにがんばってくれ!」
樹「今、世界中が喧嘩してるがな」
苦笑いしながら
遙夏「そういう事、言わないの!」
景がのっそりと出てくる
景「うーっす」
四季「おぉ! 来た来た!」
遙夏「久しぶり~!」
宗一郎「おっせーよ!」
遙夏「本当にみんな、揃ったねぇ!」
四季「なんか、自分自身でビックリしてないか?」
裏で樹と景が挨拶する
景「うっす」
樹「元気か?」
景がうなずく
挨拶したら景は席に座る
宗一郎「最初の頃とは大違いだ」
遙夏「え!? え!? どういう意味?」
宗一郎「お前、景の事を(遙夏の真似して)「邪魔なんだけど、どいてくんない?」って言ってたぞ!」
口に手を当ててビックリする
遙夏「え!? そんな事、言ってないんだけど!」
景を見て
宗一郎「な?」
景が苦笑いする
遙夏「え!? うっそだー!」
四季「ま、最初とは随分変わったな」
遙夏「え・・・。少しは変わったとは思うけど・・・」
樹「下が熱くなると、上にも熱が伝わるという事だ」
四季「風呂?」
樹「違う」
遙夏「最初の頃って?」
景の前に立ち上がって劇っぽく
宗一郎「だから~。見てなさい!(ここから立ち上がる)何? 私に関わらないでよ!」
景「そんなに強がるな」
宗一郎「アンタに何が分かるのよ!」
景が宗一郎に触ろうとする
景「分からない。けど、何か話したら分かるかもしれない」
宗一郎「触らないで!」
景「そんなに強がるな! 俺は・・・。お前が・・・」
宗一郎「私が?」
景「お前が・・・。俺はお前が」
笑いながら四季が景の口を押さえる。
四季「殺されたい?」
景「勘弁してください」
宗一郎を見る
四季「お前も」
宗一郎は顔の前で手を振る
遙夏「あの時、かっこ良かったなぁ」
四季「お前も変な事を言うな! 恥ずかしくないのか?!」
遙夏「恥ずかしいかも・・・」
四季「かも・・・。かも、なのか・・・。」
宗一郎「あ、あっつい」
四季「自分で振っといてソレかよ」
宗一郎「あの事件からもう三年ぐらい経つのか・・・」
四季「勝手に思いに耽るな。それに事件じゃねぇ」
景を見て
宗一郎「いや、事件だろ! お前に彼女が出来るなんて! なぁ?」
景「うん。びっくりした」
樹「よく、出来たな」
四季「なんでだよ!」
宗一郎「こんな変態に・・・」
四季「変態じゃねぇ!」
遙夏「私、変態と付き合ってるんだ」
宗一郎と景が笑う
四季「変態、変態言うな!」
樹「自分の面が曲がっているのに、鏡を責めてなんになる」
四季「曲がってないから」
宗一郎「なんか、いっちゃんは会わない間に腕上げたな」
四季「そんな腕を上げるな」
景「みんな、笑いに飢えてたんじゃない?」
樹「自分が自分でいるには結構、代償がいるものだ」
遙夏「でも、みんなでこういう風に馬鹿出来るのもホント、久しぶり」
景「ところで呼んだ用件ってなんなの?」
ポケットを漁り出す。宝くじの紙を出す
遙夏「あ、そうだ! えっと・・・。あった、あった! じゃーん!」
景「青い鳥の宝くじ?」
遙夏「うん!」
景「それがどうしたの?」
遙夏「誰か、今月の政府新聞持ってる人~?」
四季「持ってねぇよ」
遙夏「アンタには期待してないわよ」
宗一郎「俺、持ってるけど」
遙夏「青い鳥のトコロ見てみて!」
宗一郎は新聞紙をめくる
四季「え!? 当たってんの?」
満面の笑みで
遙夏「ま、見てみて!」
四季と景が席を立って宗一郎の後ろに回る
宗一郎「あった、あった」
景「開いて! 開いて!」
宗一郎は新聞を広げる
宗一郎「宝くじ貸して!」
遙夏は笑顔で宝くじを宗一郎に渡す
遙夏「すぐ、見つかるよ!」
景「何番? 何番?」
宗一郎「えっと・・・。11組・・・1122・・・・4214・・・・」
四季と宗一郎と景はびっくりする
四季「え!? マジで!?」
宗一郎「これ本当に今月の新聞か」
景「自分で持ってきたんだろ」
宗一郎「あぁ」
四季が座っていた所に戻る
四季「マジかよ・・・。どうすんの?」
笑いながら
遙夏「どうしよっかな~?」
樹「何等だったんだ?」
四季「一等・・・」
樹「良かったな」
遙夏「ありがとう」
宗一郎「本気でどうするの?」
笑いながら
遙夏「悩んでる」
宗一郎「悩む必要ないだろ。100万だろ? 四季とお前の徴集免除費用にしろよ」
遙夏「うん。それにしようと思ってる」
四季「え!?」
四季を見て
宗一郎「何、驚いてんだよ」
遙夏を見て
四季「いや、だって・・・。良いのか?」
遙夏「うん・・・。でも、最初はみんなで分けようかと思った」
宗一郎「は!? 馬鹿じゃないの?」
景「え!? 本当?」
景を見て
宗一郎「何、喜んでるんだよ」
樹「そうだな。免除費にした方が良い」
遙夏「うん・・・。分かった」
遙夏を見て
四季「良いのか?」
遙夏「うん。お母さんにも言ったんだ。そうしたら、私がしたいようにしなさいって。お母さんの事は考えなくて良いから。って」
四季「そうか・・・。そうしたら、遙夏の親父さんの墓参りに行かないとな」
遙夏「うん!」
樹「集めた理由は、それか?」
遙夏「うん。ごめん。あと、みんなに会いたかったから・・・。ごめん。忙しいのに。迷惑だった?」
樹「いや、謝る必要はない」
笑って
遙夏「良かった! 樹もみんなに会いたかったの?」
樹「そうだな」
四季「珍しい!」
遙夏「ホント!」
宗一郎「変わったなぁ!」
景「そうだね。樹がそういう事、言うなんて」
樹「たまにはな」
四季「半年に一回か」
宗一郎「そのくらいが丁度、良いんじゃん?」
景「次に会うのは半年後にする?」
遙夏「そうだね!」
宗一郎「そのくらいには、徴集の紙が来てんだろうなぁ!」
苦笑いしながら
四季「そうだな」
四季を見ながら
宗一郎「良いなぁ! 誰かさん達は行かなくて!」
樹を見て
四季「そう言うなって。俺だってさっきまでは行く気満々だったんだぞ! な?」
遙夏「い、行きたかったの?」
四季「違うよ! なんというか・・・」
樹「行かざるを得ない。諦めだったな」
四季「そんな感じ!」
景「僕は行くよ! その為に訓練してるんだから」
宗一郎「は?!」
景「大野教に入ってるんだ!」
一同、景を見る
四季「マジで!?」
景「うん!」
宗一郎「馬鹿じゃねぇの?」
景「なんで?」
遙夏「だって、みんな怪しいって言ってるよ。みんなからお金、巻き上げてるんでしょ?」
景「そんなの嘘だよ!」
宗一郎「何、言ってんの? いいから抜けろ」
景「やだ」
四季「訓練してるってのは?」
樹「本土決戦になった場合と、戦場での人殺しの訓練だ」
景「よく、知ってるね!」
宗一郎「そんなのやって楽しいのか?」
景「楽しいとか、楽しくないとじゃないよ。敵がいるんだよ!」
四季「敵じゃねぇ! 人間だ!」
景「みんなだって、ゲームで人間を倒すじゃん!」
宗一郎「戦争はゲームじゃない!」
景「なんで、みんな敵の味方するの?」
四季・宗一郎「してねぇよ」
一同、沈黙
遙夏「辞めなよ」
景「やだ」
宗一郎「あのなぁ」
立ち上がって舞台から降りる
景「もう、訓練の時間だから帰るね!」
宗一郎「おい!」
四季「待てよ!」
秋庭が手を掴むが冬月が手を振り払う
冬月は舞台から降りる
樹「冬月を助けたければ、一人にしない事だ」
宗一郎「あぁ・・・。行って来る!」
秋庭が舞台から降りる
遙夏「二人とも、行っちゃったね・・・」
不機嫌に
四季「好きにさせろ」
樹「辞めさせた方が良いのは確かだ。最近、拡大してきたから政府から睨まれている。一斉摘発されるかもしれない。あと、怪しい噂も聞いた」
遙夏「どんな?」
樹「武器を調達してるらしい。あいつらの敵は外じゃなくて内かもしれない」
遙夏「どういう意味?」
四季「俺らって事だ」
遙夏「なんで?」
四季「知るか!」
樹「歴史は繰り返す。また、戦乱の世。もしくは世界の終わりが来る」
四季「馬鹿が!」
遙夏「もう、帰る?」
立ち上がって
四季「そうだな」
樹「待て四季。話がある」
四季「何?」
樹が遙夏を見る
遙夏「私、いない方が良い?」
四季「あぁ」
遙夏「じゃ、入り口で待ってるね」
四季「分かった」
遙夏が舞台から降りる
樹「悪いな」
四季「気にするな。で、なんだ?」
樹「俺はもうすぐ死ぬ。だから、徴集はされない」
四季「は!? どういう意味?」
樹「二度も言わせるな。俺は死ぬ」
四季「なんで?」
樹が四季に薬を投げる
四季「何? コレ?」
樹「薬だ」
四季「うんなん、見れば分かるよ」
樹「中身は麻薬だがな」
四季「は!?」
樹「さっき、冬月が言っていた宗教団体「大野教」が配ってる薬だ。この薬には三種類の効き目がある。一つは脳が活性化し一週間程、寝なくても大丈夫になる。もう一つは痛覚を無くす効き目がある。最後に麻薬以上の依存性を持っている。そして、麻薬と違うのは常用し続けると、1日に何回か飲まないと死ぬ。この薬は人体を作り変える」
四季「そんな薬がある訳・・・ないだろ?」
樹「試してみろ、というのが早いが止めておけ。俺が言っているのは本当だ」
席を立つ
四季「じゃ、景がやばいじゃん」
樹「そうだ」
四季「待てよ。それでお前が死ぬのと何の関係が・・・。飲んだのか?」
樹「あぁ。飲んだ」
四季「なんでだ?」
樹「そのくらい、簡単に帰結するはずだ。俺は「大野教」の信者だった。だが、何らかの理由で脱退した。そして、薬を飲めなくなった」
顔を下に向けている
四季「もう良い・・・。なんで、抜けた?」
樹「あそこには信者の階級がある。その一番上になる為に最後、何をすると思う?」
四季「なんだ?」
樹「答えを隠すな。さっき、言ったはずだ。人殺しの訓練をしていると。自分の一番、大切な人を殺す。自分の手で大切な人を殺す。それが出来れば他の人間など躊躇しない。俺にとってそれは親だった。」
四季「殺したのか?」
樹「そうだ。殺した」
四季「なんで?」
樹「理由は言った」
四季は薬を樹に投げつける
四季「バカ野郎! ぶっ殺すぞ!」
樹「あぁ、殺してくれ。その為にここへ来た」
四季と樹が睨み合う
樹「殺せ」
怒鳴り声で
四季「うっせー! 黙れ! 」
樹「逃げるな。俺は死を受け入れた。」
四季「逃げたのはお前だろう! 受け入れてもない! 薬の事を知らなかったかもしれないけど、薬に逃げたのはお前だ!」
樹「確かにそうだ」
テンションを下げる
四季「中途半端に目覚めるなよ・・・」
樹「悪い」
黙る
四季「これからどうする気だ?」
樹「四季が俺を殺さないなら・・・」
四季「殺さねぇ! ぜってぇ、殺さねぇ!」
樹「そうか・・・。なら、禁断症状と酸素不足でのた打ち回って死ぬだけだ」
四季「本当に薬を飲む以外、助からないのか?」
樹「そうだ。今日、飲まなかったら明日の午後には死ぬ」
四季が散らばった薬を指差して
四季「なら、飲め。生きろ」
樹「断る」
四季「俺にお前を見殺しにしろって言うのか?」
樹「そうだ。もしくは殺せ」
四季「調子コイてんじゃねぇよ! お前は生きる事から逃げたんだ。死ぬ事なんか受け入れてない。ただ、生きる事が怖いんだ。その薬を拾って惨めに生きていくしかないんだよ! お前は! 俺達も惨めに生きていくしかないんだよ!」
樹「百も承知だ。だが、これ以上生きたくもない」
四季「知らねぇよ! もう、勝手に死ね! ただし、俺の目の前で死ぬな! どっか行け!」
樹「それもワガママだが、分かった」
立って樹が四季に背を向けて
樹「言っておきたい事がある。俺は何も残せなかった。四季は何かを残してくれ。何もない男にはなるな。あと、冬月を止めてやれ。こんな時代に言うのもなんだが、幸せになれ」
四季「うっせー! 俺に説教するな!」
樹が舞台から降りる
四季が机を殴る
四季「ちっきしょう!」
日記を持った孫が舞台に上がって来る
孫「なんで、戦争なんかやってんの?」
四季は孫を見る
四季「誰だ! てめぇ!」
孫「誰でも良いじゃん」
四季「喧嘩売ってんのか?」
孫「売ってねぇよ。木でも買って心に余裕を持てよ! 俺はなんで、戦争なんかしてるか聞いてんだよ」
四季「知るか! 勝手に戦争になってたんだよ!」
孫「そうやって戦争に負けるだな」
四季「まだ、この国は負けてねぇ!」
孫「そうじゃねぇ! 人間が戦争に負けるんだ」
四季「政府が悪いんだ!」
孫「そうやって人の所為にしてんじゃねぇ。勝ちたいなら生きろ」
四季「お前に言われなくても生きるさ!」
孫「じゃ、聞いて良いか? 戦争を忘れる事が平和なのか、戦争を忘れない事が平和になるか。どっちだ?」
四季は怒りながら悩みながら椅子に座る。頭は下げる
四季「分かんねぇよ」
孫は四季が「分かんねぇよ」と言ったら舞台から降りる
「だけど」で顔を上げる。そして、周りを見回る。「どいつもこいつも」で立ち上がって、最後の「生きれば良いんだろ!」は顔を上に上げて叫ぶ
四季「分からない・・・。だけど・・・・。生きるさ・・・。どいつもこいつも・・・。生ければ良いんだろ!」
四季が舞台から降りる
孫
「この日記によるとですね・・・・。この後、冬月景は無事に自分の手で親を殺す事は免れたが、その教団に銃殺された。凶弾に倒れたという事ですね。あはは! 笑えませんか? それは失礼しました。そして、春山樹は次の日の夜に先程、皆さんが集まっていた教室で宣告通りのた打ち回り息を引き取りました・・・。ちなみに、いっちゃんこと春山樹の死体は戦争が終わるまで発見されませんでした。自衛隊に喧嘩を売った秋庭宗一郎は戦争反対を貫き監獄の中で獄死しました。秋庭宗一郎の家族は非国民というレッテルを貼られ、徴集を免れていた兄弟や親が一家丸ごと引越しを命じられ強制労働を強いられました・・・。さすが、宗一郎の家族と言えましょう。その強制労働者を集めてクーデターを起こしました。しかし、1時間と経たず鎮圧され秋庭宗一郎の家族は射殺されました。宗一郎の目の前で。秋庭宗一郎は天原四季にこんな手紙を送っています。
「死ぬ事が全てじゃない。生きる事が全てでもない。守る人と待ってくれる人が全てなんだ」
その天原四季とその彼女上原遙夏ですが、当たった宝くじは勿論100万円という金額は貰えませんでした。貰った金額は50万円ちょい。二人は50万円を上原遙夏の徴集免除に使い。その残ったお金で苗木を買いました・・・。天原四季は徴集され、戦場に行きましたが無事に帰ってきました。無事と言っても右足の踝に銃弾が当たりそのまま国に帰されました。1年程で歩けるようになりましたとさ・・・。じいさん、ばあさん達の日記、読み終わったよ!」
ナレーションが舞台から降りる
最後が、かなりのファンタジーです(笑)
まぁ、何故、こんな終わり方にしたかというと、人には言えない理由があるんです。
あと、すごい、どっかの某有名小説の名前が出ていますが、気にしないでください。
名前だけが一緒なだけです。全然、名前が決まらなかったので、適当につけた偽名みたいなものですので(苦笑)
気軽にバシバシ叩いてください!
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