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一般人ですが、頭の中に勇者と魔王を飼ってます。  作者: 本間□□
サブストーリー:いたずら娘とゆうれい娘
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第35話

 ダンジョンの出現からしばらく、シーカーの活躍によってようやく戦況が落ち着き始めた頃。


 とある都市に赤毛の幼い娘が居た。両親共に龍人という亜人化スキル持ちで、娘もまたその血を継ぎ額に小さな二本の角と体に龍の鱗のような物を持つという龍人の特徴を有していた。


 ある時、Aランクシーカーとして活躍していた父親がいつものようにダンジョンを潰して帰宅すると、我が家から血の匂いが漂っていることに気付いた。


 何か起こったと察した父親は急いで家に入る。


 するとそこには事切れた警備のシーカーと同じく息のない武装集団、そして血塗れで息絶えた娘を抱える妻の姿があった。


 唯一の生存者である妻によると、謎の集団の襲撃を受けたのだと言う。

 

 父親は伝手を使いすぐに謎の武装勢力について調べ上げた。


 その正体は国の特殊部隊であった。

 

 この時代はまだ国家が健在で、亜人種の中でも特に強力な種族とされる龍人の確保が目的と思われた。


 その後、この事実に同族の龍人たちも憤怒し血の報復が行われた。


 幼い龍人の娘の確保に協力していた政府高官は一族郎党皆殺しにされ、実行犯だった軍の特殊部隊は襲撃を受けて基地諸共壊滅、そして龍人の力と血筋を取り込み絶対的な支配者となることを企んだ独裁者の首は娘の父であったAランクシーカーの手によって落とされた。


 これが龍の逆鱗に触れた者たちの末路である。


 以降龍人の幼子に手を出すことは禁忌となり、このシーカーによって起きた反乱を引き金に各地で国家解体が進み企業主体の統治システム――世界統括機構が生まれることになるのだが、それはまた別の話。


 こうして復讐を終えた両親は国を捨て、同じくまだ健在だったアメリカに亡き娘の亡骸と愚かな祖国に愛想が尽きた他の龍人たちも一緒に亡命することとなった。





 さて、本題はここからだ。


 【小紅娘の亡霊】とは一体何なのか。


 ミナトの知るそれはゲームで起こるサブストーリー的なイベントのひとつだった。実はこの世界でもオカルト話として有名な物で、ネットで調べれば簡単に出てくるレベルの都市伝説だ。


 娘の死後しばらくして、夫婦の間には第二子が生まれる。次女も長女と同じく龍人として生まれ、陰謀に巻き込まれることもなくすくすくと育った。


 しかしある日の朝、娘は眠ったまま起きないという事件が起きた。


 幸い娘は一日で目を覚ましたが原因は何一つわからないままだった。


 目覚めた娘は「お姉ちゃんと遊んでた」と楽し気に話していたが、その指には見覚えのある指輪が在った。


 それは父親が若い頃にダンジョンで発見した物で、鑑定したところ何の効果もないただの銀の指輪だとされていた物である。


 当時の鑑定は今ほど精度が高くなく、銀に含まれたミスリルの成分分析も見落とすことが多く、何かしらの効果が付加されてあったとしてもわからない、ということも少なくなかった。


 それでもダンジョンで発見されるというものは基本的に有益だ。持ち主に害を及ぼすことは滅多にないのは経験則からわかっていた。むしろ何の効果もないと思っていたアイテムが実は所持者の身を守るような力を持ち、おかげで命が助かったという事例のほうが多かった。


 そのため父親も指輪をお守り代わりにと当時まだ恋人であった妻へ贈ることにした。


 子供ができてからも大事にしていた指輪をなぜか長女はいたく気に入り、長女が死んだ日も彼女はその指輪をしていた。


 大人になったらプレゼントするわね。そう娘と約束をしていた母親は指輪も一緒に埋葬することにした――そう、《《指輪は娘と埋葬された》》はずだった。


 墓の下から戻ってきた指輪に亡き長女の魂が宿ったのではないか。母親と次女はそのように考え、指輪を埋め直さず手元に残すことにした。


 


 さて、ここで終われば良い話? で済んだのだが、本題はこれからである。


 一時は家族の安全を考えて怪しい指輪を破壊することも検討した父親だが、それに妻と娘が反対した。


 娘(お姉ちゃん)の魂が宿っているかもしれない指輪を壊したくない。


 そう言われては父親も一概に壊せとは言えない。彼にしても手元に置いておきたいというのが本心なのだ。だからといってどんな危険があるかもよくわからない指輪をこのままにしておくわけにもいかず、せめて詳細な調査を行ってからどうするか決めてはどうか、ということで妻と娘も納得した。


 そういうわけで、とある研究機関に預けられた指輪であったがここで最初の悲劇が起こった。指輪の調査を担当となった研究員が突然、死体となって発見されたのである。


 何があったかと言えば、この研究員は指輪に未知の金属(ヒヒイロカネ)が含まれていることに気付いて、売って金にしようとしたのか溶かして研究しようと思ったのかは不明だが持ち主の家族から“奪う”ことを考えた。


 これが娘の怒り――呪いのトリガーを引いた。彼女は指輪に残された某国の特殊部隊の怨念を操り、自分を家族から引き剥がそうとする犯罪者を呪い殺したのである。


 その後、指輪は家族を求めて姿を消した。

 

 そして各地で罪なき子供には精神世界に一日だけ招待して一緒に遊ぶ無邪気な子供の霊として、また時には罪人に惨たらしい死を与える“呪いのアイテム”として彷徨い続けることとなる。


 これが後に【小紅娘の亡霊】と呼ばれる都市伝説であった。


あとがき補足

 指輪は後から魔術やスキルを注入するという物だったので、未使用状態の指輪は鑑定が難しかったという事情があります。

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