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一般人ですが、頭の中に勇者と魔王を飼ってます。  作者: 本間□□
メインストーリー:人造天使編
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第25話

日間ランキングに入りました!わーい。

ということで今日は少し早い投稿です。



「草壁ミカゲ――ッ、なぜここに!? 貴様は姉と別のダンジョンに出向いていたはず……くっ、まさか誘い込まれたか! だがこちらは全員Bランクのシーカー、貴様一人であの小娘を守り通せるものかッ!」


 拙――草壁ミカゲは喚き散らかす男を冷ややかな目で見ていた。


 滑稽も通り越して、憐れにすら思う。


 拙なんかよりミナトのほうがずっと強いのに。足止めしてるつもりで、実際は無駄に戦力を分散してるだけ。


『こっちに来たのは消しておくから手出さなくていいよ。残り(そっち)の人間は生かして捕らえてくれる?』

『ん。証拠品になりそうな物の回収とダンジョンの攻略もついでにしとく?』

『最悪を想定するならダンジョンは潰しておくに限りるか。お願い』


 情報源の確保は拙に任せて、ミナトは自分のほうへ追いかけてきた数人の目撃者を消すつもりらしい。情報が洩れる可能性を考えれば当然の対応とも言える。


 あの極度の秘密主義である親友が自分を頼ってくれる。その優越感は何物にも代えがたい。でもこの程度じゃ大事な人(シオンお姉ちゃん)を守ってくれた恩返しも、隣に立つこともできない。


 もっと拙は強くなりたい。


 でも今は気分が良い。少し本気を見せることにしよう。


「|Welcome|into the shadow(ようこそ拙の世界へ)」


 足元の影を広げる。逃げようとしたってもう遅い。


 スキルも魔術も銃弾も、まとめて影は呑み込む。


「Aランクを舐め過ぎ。Bランクがいくら束になろうと、上位《足切り》にすら届かないようじゃ戦力にもならないよ?」


 さて、掃除は済んだし次は工藤教官の手助けに向かおう。




 そう思って教官の後を追いかけるとちょうど、二〇体以上のモンスターと戦っているところに出くわした。しかもそこには九条院の高飛車お嬢様とそのお供のパーティまでいる。


「なんですの――ッ、この気持ちの悪いモンスターは!! こんなのEランクダンジョンに出ていい強さではありませんことよ!」


 面影はあるものの、全てのモンスターが体の一部が肥大化してたり、白い羽根が生えたりと変異している。事前にミナトから聞かされてたけど、これが天使化とやらの変異を利用した特攻兵器なのだろう。想定していたのは天使化した人間だったけど、モンスターに使ったか。


 おそらくこれを持ち込んだのも星月公司の工作員だ。


「手、貸す?」


 パシャリと証拠となる変異モンスターの画像を何枚か確保してから合流した。


「ミカゲさん!? 不参加だったはずでは?」

「今はそんなことどうでもいい。助けは要る?」

「お願いします!」

「ん」


 影で作った短剣を投げるが打ち消された。


「む……?」

「大丈夫ですの!?」

「問題ない」


 良く見れば異形のモンスターの体が薄っすら発光してるように見える。影が打ち消されたのもそれが原因?


 高飛車お嬢様の攻撃は普通に消されてないのを見るにどうやら天使に由来する力と拙の影は相性が悪いらしい。


 ならもっと出力を上げるだけ。所詮、元となったモンスターはEランク。能力的にはBに届くかどうかまで強化されているけど、単純な出力勝負なら負けない。


 ほら、あっさり切り裂けた。


 この程度なら問題ない。あっ……あれ使ってたらもっと簡単に済んでた? まあいっか今からでも使っとこ。


 ミナトとミラが用意していた対天使用抑制術式を組み込んだDデバイス。その一つに一定範囲内で天使の力を抑制する結界型がある。


「ん、動きが鈍くなった」


 Dデバイスを起動させるのと同時に周囲のモンスターが力が抜けたように体勢を崩す。その隙を見逃さず、鋭利な影を鞭のようにしならせまとめて薙ぎ払っておく。


 抑制術式下でなら特に力を込めずともスキル()は効くみたい、打ち消されることもなく紙切れのように切り裂くことができた。


 それに弱体化さえしてしまえば、この場のメンバーでも簡単に狩れる。


 その後、あっさり異形のモンスターを壊滅させた工藤教官から当然、拙がここに居る理由を尋ねられる。


「なぜ草壁がここに?」


 事態が動き出した今、護衛の拙も隠れてる必要もなくなったので素直に話すことにした。


「テロリストが襲撃を計画しているとわかったので、相手方の狙いであるミナトの影に隠れて護衛をしてました。ダンジョンの侵入については統括機構から許可を得てるので問題ありません」

「知っていたならこちらにも情報共有をしてもらいたかったものだな」

「あくまで可能性が高いというだけで確証はなかったのと、不用意に知らせてこちらの動きが察知されても困るので」


 襲撃計画を知りながら黙っていたと聞かされて、工藤教官は一瞬不快感が顔に出る。当事者の一人、それも教官という立場でありながら蚊帳の外だった。思うところはあって当然。


 けど学園側にも内通者がいる可能性を暗に言われては強く批判するわけにもいかない。そもそも拙に文句を言ったところでお門違いなのは教官もわかってるはず。


「うちもしばらく騒がしくなるだろうな……水無瀬は?」

「他の護衛と一緒にダンジョンを脱出している頃だと思います」

「そうか。草壁はこの後どうする予定だ」

「拙は証拠品の確保とダンジョンの攻略を済ませます」

「演習中にダンジョンが攻略されては困るが……中止もやむを得ないか。人手は必要か?」

「大丈夫です。それより教官はキャンプに戻って生徒の護衛をお願いします」

「私は少しは信用されているらしいな」

「少なくともこれまでの行動で不審なものはありませんでしたので」

「ならその信用を裏切らぬようにしなくてはな。いくぞ九条院、悪いがお前も戦力に数えさせてもらう」

「それが力有る者の務めだというなら喜んで」


 一人、奥へ進もうとしたら高飛車お嬢様が何か言いたげに話しかけてきた。


「草壁さん、その……えっと」


 人付き合いは面倒だ。でもたまには歩み寄るのも良いかもしれない。


「帰りは隠れないから」

「え?」

「帰り道は同じ」

「――ッ! ええ、是非! その時は皆さんと一緒にお話ししましょう! 留守の間はこの九条院エリカにお任せを。水無瀬さんも私が守って差し上げますわ」


 悪い人ではない。ただ少し……うるさいだけ。


「若者の青春ってのは眩しいですね」

「年寄臭いぞ」

「こっちはもういい歳なんでね、工藤先輩」


 大人たちの会話を背に走り出す。


 早く、ミナトのところへ帰りたい。

ブクマ、評価等してくださった皆様には感謝を。そしてまだだよー、という方はこの機会に是非ともポチっとしてくれると嬉しいな。

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