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一般人ですが、頭の中に勇者と魔王を飼ってます。  作者: 本間□□
メインストーリー:人造天使編
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第21話

 魔王は犠牲になったのだ。上司《私》の無茶な命令と納期に。


 といいつつ本当の修羅場だったのは私なんだけどね。ミラの担当である魔術そのものはほとんど完成しているのだから、あとの仕事はハード担当の私がメインとなる。ミラに頼むは細かな調整ぐらいである。


『ひどい目にあったのじゃ』


 そして珍しくミラが本体である私のもとに居た。


 限界まで酷使した影響で義体が休眠状態スリープモードに入らざるを得なくなったからだ。


 そもそも何か思いつく度にいつも徹夜で研究してるくせに、今さら三徹がなんだというのだ。


『人にやらされる徹夜と自分からやる徹夜は別物じゃ』


 はいはい、だからって動けなくなるまで義体を酷使しないことね。そんなんだから推しの配信ライブも生で視れないってしょっちゅう嘆くことになるんでしょ。


『ぐぬぬ』


 そんなやりとりを心の中でしていたら、


「少しよろしいかしら」


 三人組の同級生から話しかけられた。その中の一人を見て、魔王が叫ぶ。


『テンプレ悪役令嬢なのじゃああああああ』


 プライドが高そうな金髪縦ロール、その両脇には一般人な私にはなんとなく親近感が湧く、取り巻きと思われるモブAとモブB。


 まるでアニメのテンプレ悪役令嬢が飛び出してきたようなトリオを今日初めて見た魔王様、大興奮。


 一応、私は同じ学年なので初対面ではない。


 ちなみにダンジョンに向かうには近くの転移装置がある都市に飛んでからそこから最寄り駅まで列車で移動するわけだがその道中、私に話しかけてきたのはこの縦ロールお嬢様だけであった。


 べ、別にぼっちだとかコミュ障だとかじゃないんだからね! 性別迷子というか性別という概念がどっかいった私が女の子の輪に入るのもなあ、って悩んでる間にグループが出来てたとかじゃないんだからね!


「水無瀬さんもダンジョンに入るのですわね。それにしては草壁の娘の姿が見えないのですが……まさかおひとりでダンジョンに入るつもりではありませんよね?」

「ミカゲは別件で不参加よ。だからダンジョンに入るのは私一人ね」

「そうですか。たしか水無瀬さんのランクはCでしたわね? Eランクとはいえ単独でダンジョンに入るなんて無謀も良い所ですわ。このBランクシーカー、九条院エリカのパーティに入れて差し上げてもよろしくてよ」


『ブフゥッっ! 言動まで悪役令嬢!』


「ああ、ごめんなさい。勘違いさせちゃったみたいだけど、正確には一人というわけじゃないから」

「へ?」


 テイマーだと知らない彼女に向かって私は「こちらをご覧ください」といった感じで手を虚空に向かって差し出す


「ポチ!」

「ワン!」

「タマ」

「ふるふる」

「アオ!」

「ギャオー!」


 私のペット三人衆が虚空から頭だけ出して返事をする。


「きゃああ!」


 いきなりモンスターの生首(一体首がないのもいるが)が現れて驚いた九条院が悲鳴を上げる。


「お嬢様、これはおそらく空間系のアーティファクトです」

「正解。姉からテイムしたモンスターの持ち運び用にって貰ったの」


『実際には余の作った魔道具じゃがな』


 そう。これは魔王が錬金術や付与術などで作った純粋な魔道具マジックアイテムである。地球では現代科学に頼らない魔道具は開発されていないので、ダンジョン産のアーティファクトと見分けがつかない。というよりそもそも似たような技術で作られているので見分けようがない。なのでアーティファクトだと言い張ってもバレようがないのである。


 とりあえずポチとアオは邪魔だからお家にお帰り。タマは暇だから手ごろなサイズでぷにぷにさせて。


 そうしてモブAが縦ロールお嬢様を落ち着かせている間、私がタマを膝に乗せてぷにぷにしてるとモブBがいつでも主人を庇えるよう警戒していた。


 《《原作通り》》、随分慕われているようね。


『余ならいくらでも作れると言ってもそう軽々と魔道具を見せて良かったのか?』


 大丈夫大丈夫。


 だって別にこの子、悪役令嬢みたいな性格の悪い女の子じゃないし。むしろ言動と見た目で最初は勘違いされるけど中身は超絶《《良い娘》》だよ?


 たぶん、こうして声を掛けたのもいつも一緒のミカゲが居ない私を心配してだし。


「あの……その子、触ってもよろしくて?」


 お嬢様が恐る恐る聞いてくる。その様子はワンちゃんに「噛まない?」って聞きながら触りたくてウズウズしている子供のようであった。


 本性を隠してるこの子たちはパッと見、可愛いペットぐらいにしか見えないからなあ。触りたくなるのも仕方ない。


「どうぞ。攻撃されない限り人に危害を加えないよう言い聞かせてあるから普通にしてる分には大人しくしてるわ」


 あの聖女ケモナーの過剰なスキンシップにも耐えてきたのだ。面構えが違う――えっ? 自分たちはマスコットではない? 諦めろん、お前らは愛玩動物ペット枠だ。


「そちらのお二人も要る?」

「いいのですか?」

「乱暴にしないならね」

「もちろん!」


 ということでお前らも愛想を振りまいてこいポチ、アオ。


 スライムのぷにぷにボディの魅力に堕ちかけのお嬢様を微笑ましく見てるモブAモブBにもポチとアオを渡す。


 そういえばこの二人の名前なんだっけ?


『同級生の名前も憶えておらんとは……おぬしも大概なのじゃ』


 仕方なくなくない? この縦ロールのインパクトが強すぎなんだよ!


『それな!』

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