第14話
お待たせしました。本編です
ひっそりちょっぴりタイトルが変更されていたり、文章の修正が入ったりしてますが大きな変更はないはずです。
春のうららかな陽気、真新しい制服で身を包んだ新入生たちがこれからの生活に胸躍らせならが通学路を軽い足取りで進む。
そんな初々しい若人の群れの中、二度目の学生生活を送ることになった私はといえば、
「まあ似合っておるのじゃ」
「ええ! 素晴らしい、素晴らしい――――――これぞ合法ロリですわ!」
魔王と妙にテンションの高い勇者に挟まれて歩いていた。
この二人が「学校に行くならミナトも女の子じゃな(ですよね)」と意味不明なことを言い出した結果、
私、女子高生になりました。それも女子小学生ボディで。
まずひとつ言っとくとこれは魔王謹製の義体じゃない、本体だ。本体なのに……なぜか七年前からほとんど成長の兆しが見えなくなった。それどころか男の象徴も消え去った。
とうとう体を貸してもいないのに日常的にTS化してしまったのである。前々からTS化計画を立てていたあの二人以外に犯人は考えられない。
その容疑者の片割れである魔王を問い詰めたこともあったが「さ、さあ? 余は知らんぞ?」なんてわかりやすく誤魔化された。
この様子ではこれ以上聞いたところで吐かないのはわかりきってるけど、勇者はどこまで堕ちていくんだ。この体、お前の癖だよな?
まあこの体を嘆いたところでしょうがない。私は草壁家が用意した戸籍を使い、日本の異能都市である高天原にある中等部へ入り込んだ。それが三年前。目的は勇者と魔王を本編開始に合わせて高等部へ送り込むためである。なので二人は私より一足先――つまり先輩として先に潜り込んでいる。
うん、二人が義体だとまだバレてないよ。
さすがに精密検査を受けたらバレるだろうが、この学園は各企業の関係者も所属する性質上健康診断などの“第三者による検査”は嫌がられる。中には薬物や催眠療やなどを使った後天性強化人間だったり、遺伝子改造による先天性強化人間だったりが《《まだ》》存在する、なんて話がまことしやかに語られているぐらいだ。
学園側も変なゴタゴタに巻き込まれたくないから、希望者以外は自社でやってくれということになったのだろう。
統括機構としては適正ランク試験さえ受けるのであれば特段問題にする気はないと思われる。ランク制度でダンジョンがスムーズに処理されている現状、よほどヘマして不祥事が露わにならない限り不干渉の立場のままでいてくれるようだ。
「いつも思うけど、どうやってランクを誤魔化してるの?」
まあ本編に合わせるということは当然、草壁ミカゲもいる。今では成長して私よりも背が高く(それでも平均より下だが)なった。復讐という動機がなくなった影響か、ランクはAで止まっている。ちなみに姉のほうはすでに学園を卒業して企業所属のシーカーとして活躍している。
「さあなんのこと?」
現在、私たちのランクは勇者と魔王はSランク、私がCランク。
種明かしするとそもそもの話、私の力の《《主な》》源はSランク二名だ。自身の魔力の核心を理解した者――二次覚醒を迎えたものがSランクとなるのだが、私は疑似的に二人分の覚醒魔力を持つことになる。さらには緩衝材の私を含めた三者で魔力を共鳴させることで起こる魔力増幅効果。これによって無限にも等しい莫大な魔力を発生させることができる。
勇者と魔王が義体に意識を移してる間は私の中の彼女らは休眠状態に入っているので、これらの力も完全にオフとなる。
要するに超人二人抜きの私の素のスペックはCランクというわけだ。これぞ一般人! モブの証明!
「Cランク以下は戦闘系科目が必須科目じゃないからじゃないの?」
「そんなわけないじゃない」
中等部は義務教育的な教養や最低限の力の使い方を教えるだけだったが、高等部になると教える内容も専門化し戦闘科、魔術科の二つに分かれ、カリキュラムも選択制となる。
一般人な私は高等部に入ったら戦闘系のカリキュラムは取らず、学問系のカリキュラムを中心に取る予定だ。そもそも魔術科とは戦闘系魔術師ではなく、技術者や科学者などの非戦闘員を育てる学科である。
荒事は勇者と魔王に任せて、本体はひっそり専属メカニックとなるのだ。
「なんて考えてる顔じゃな」
「勇者《私》の戦闘術と魔王の魔術を叩きこまれて一般人は無理ですよ?」
「ランク詐欺もいいとこ」
さあて、主人公はどこかなー。私の代わりにバッドエンド回避がために矢面に立ってもらうんだー。
シーカーの企業所属とフリーランスについて。
企業所属といってるが正式にはスポンサー企業付シーカーのこと。
Bランク以上のシーカーにダンジョン駆除を依頼する際は必ず統括機構を通す必要がある。無許可で行った場合は企業にもシーカーにも(脅迫などの事情があれば情状酌量の余地があるものとして罪には問われない場合もある。金銭目的などは一発アウトで重いペナルティが科される。最悪、統括機構直属の執行部隊による粛正もありえる。
これは企業による高ランクシーカーの私的利用と独占によるダンジョン攻略が滞るのを防ぐため。
では企業所属になる両者のメリットについて。
企業側は管轄エリアでダンジョンが発生した場合、信頼のできるシーカーに優先的に攻略を依頼できる。ただし受注済みの攻略依頼がある場合はタイミング次第でそちらが優先される。
またダンジョンは資源が大量に取れ、できるだけ資源を回収してからダンジョンを潰したい企業サイドとしては所属シーカーのほうがその辺りの融通が利く。
シーカー側のメリットについて。
自由に依頼を受けられなくなる代わりにダンジョンを攻略せずとも常に一定の支援金がもらえ、シーカーを引退後の再就職先となることもある。また企業側と統括機構側で依頼の調整を行うので、自分で依頼を決めたり装備の調達・メンテナンスなどの雑事を全て企業に任せることができる。
フリーランスのメリットは大体、今挙げたメリットの反対。




