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第13話 SS

 私、ミナトくん。今幼女ちゃんに見つめられてるの。


「じー」


 場所は《《アヴァロンの》》外部接続管理室。


 ここはダンジョンと地球を出入りする際に使う玄関のような部屋で、前に言ったネット用の回線などもここを通してダンジョン内の端末に接続している。


 以前は地球に出入りする時だけ繋いでいたのだが、ネット回線の開通を機に常時接続に切り替えた。それに合わせて警備レベルも一気に引き上げることに。まず制御用コアに登録された者以外のスキル・魔法・魔術・Dデバイスも含む魔道具の起動を妨害する機構。さらに魔王の眷属(ペット)を最低一体(それも平均Aランク中位程度の強さを持つ)を常に門番として待機させてある。


 他にも様々な細工があり、Sランク相手であってもそう簡単には突破できないようになっている。


 ここは数少ないアヴァロンに侵入できる経路だ。これぐらいの守りは当然である。

 

 そんな厳重に守られているはずの部屋に幼女が紛れ込んだ。


「ミカゲ! どうしてここに!?」


 幼女の正体は草壁ミカゲ。


 日本エリアでは白い肌のエルフが多い中、銀髪褐色エルフ――≪ダークエルフ≫として生まれたのが彼女だった。


 家族とは全く違う容姿、それが彼女のコンプレックスであった。スキルによる肉体の変質が原因なのだが、幼い彼女にそれを理解しろというのは無茶な話である。しかし家族、特に姉のシオンは見た目の違う妹をひたすらかわいがった。


 それもあってミカゲも姉を慕うようになるのだが、草壁シオンの死を切っ掛けに復讐鬼と化し本編に置いて勇者と魔王に並ぶSランクシーカーとなる。


 だがそれは五年も先の事で、今は何の力も持たない幼女――のはずだった。


 この日、シオンはミナトに誘われてアヴァロンを訪れることになった。気分は今まで警戒して寝床にも絶対近づけさせない保護猫が初めてデレた瞬間だ。それはもうウキウキでついて来たシオンだったが、それをよく思わない者もいた。彼女の実の妹である。


「……知らない」

「ミカゲ!」


 オレからすれば、大好きな姉を知らない幼女(オレ)に取られて嫉妬する幼女《妹》の図である。


 じーっと泥棒猫であるオレを見ていた草壁ミカゲは姉に叱られて拗ねたのか。地面をしばらく見た後、不思議そうに地面を何度か足で蹴って確かめる。


「なんで?」


 彼女のスキルが何たるかを知るオレとしてはスキルを使えないことに戸惑っての行動だとすぐわかった。


 だが何もしらない姉からすればただの奇行である。


 そしてスキルが使えないと理解すると今度は困惑する姉の目を盗んで、部屋の外へ飛び出そうとする――――が、


「駄目ですよ。迷子になると大変なことになりますから」


 まだ試作品段階の義体に意識を移した勇者フレイアがキャッチした。


 魔王も勇者も後々、本編に合わせて異能都市の学園に通わせる予定だ。それに合わせて勇者の見た目は少し若く変えてある。魔王? あいつはガキのままだ。ナイスバディの義体を作ったところで虚しいだけだろ、と言ったら「のじゃ……」と諦めた。


 「その子、Dデバイスの補助も無しに独学でスキルを使いこなしてる。スキルはおそらく影に関するもの……事前にシオンの影に隠れてついて来たのはいいけど、ここの防衛機構に引っかかってスキルが解除されたってところじゃない?」

「おかしな魔力の流れがあると思ったがそれか」


 ゲーム知識(答え)から逆算してそう推測するが、内心では驚いていた。まさか草壁ミカゲがこの時点でスキルに目覚めている上に高度な影潜りまで会得しているとは思わなかった。元からSランクに成るだけの素質はあったというわけか。


 一般的に亜人化スキルのようなオンオフできないモノを除いて、ある程度成長するまでスキル因子は活性化しない。そこからスキルが覚醒するかどうかは本人次第だ。


 そして彼女の持つスキルは≪影の支配者(イントゥザ・シャドウ)≫。


 本編では影で武器を作ったり影の中を移動したりトリッキーな戦い方をしていたが、厳密には影を操るスキルではなく影を触媒に異空間を作る空間系スキルである。


 例えば剣の形に作った異空間で相手に触れた瞬間スキルを解除して空間ごと相手を切断、なんて真似もできる。ただ汎用性に優れるスキルではあるものの、空間系が故に非常に燃費が悪いという欠点もある。


 並みのシーカーであれば一回の使用でガス欠になりかねないぐらいだ。けれども草壁ミカゲは現時点でも魔力単体であればAランクを優に超える姉以上の逸材だ。


 普通膨大な魔力を持ってると制御が難しくて持て余す物だけど、なんと独学で制御法も身に着けている様子。


 人のこと言えないけど、この幼女も十分に化け物じゃね? 


 まっ、面と向かってそんなこと言わないけど。


「あなた、すごいのね」

「すごい?」

「界渡りを使おうとしたのでしょ? そのセンスは天性の才能と言ってもいい」

「……そう」


 さっきまで恋敵を見るような目だったのに、満更ではない表情で素っ気ない返事をする幼女。


 チョローん。


 当然だが、本編のあの「誰も信じない」と言いたげなツンツン復讐鬼ミカゲちゃんの面影は口調以外残っていない。

 

 いやこの年の子供ならこれが当たり前の反応か。


 エセ幼女(♂)のオレには無い純粋無垢だ。


「えっと、ミカゲはいつからスキルを使えるようになったのですか?」

「去年の春」

「お父様とお母様には言いましたか?」

「言ってない。最初にお姉ちゃんに教えたかったから」

「うっ……今年の集まりに帰ってこなかったのは謝ります。でもそういう大事なことはまずお父様たちに話しましょうね」

「わかった」


 妹とのお話が終わって、シオンが申し訳なさそうにこちらに謝罪を入れる。子供のしたことだ。目くじらを立てることではないのだが……。


「別に構わない。でも次からは気を付けて。ここはもっとも厳重に守ってる場所。許可のない者が入ればあの子と敵対することになる」


 そこにいるのは魔王の眷属兼門番をしている襤褸ボロのローブを纏った骸骨――不死者の大魔法使い(エルダーリッチ)のバアルだ。


 骸骨はカタカタと髑髏を鳴らすと優雅な礼をみせる。客人であれば歓迎しよう、と。


 言葉通りの“客”だろうと招かれざる“客”であろうとこいつは嬉々として歓迎することには違いない。前者は礼節的に、後者は物理的な意味で。


「「じー」」

「スヤァ」


 幼女枠が増えた。


 ティロはティテに引きずられて連れてこられてたのは良いがここでも居眠りしており、ティトはそんな二人の後ろからおどおどしながら見ていた。


 図体はデカいが中身は八歳児と変わらない、うちの問題児どもだ。


 話がややこしくなるから紹介するまで顔を出すな、と言ってあったがやっぱり大人しくしてられなかったか。


「でかもふ」


 うん、この幼女は大物になるな。


 常識人の姉はAランクのモンスターがそこら中にいると理解してフリーズしているぞ?


 その後、シオンだけではなくミカゲもちょくちょくアヴァロンに遊びに来るようになった。そしてそれは問題児が三人から四人に増えたことを意味したりしなかったり……。


 あとがき


 これにて前日譚は終わりとなります。ご愛読いただいた皆様、レビュー・応援等して下さった方々には心からの感謝を。


 この作品は先にタイトルを考えてからストーリーを組み立てる、といういつもと逆のスタイルで書き始めた作品だったのですがネット小説ではこの形のほうが良いのかもしれませんね。


 続きに関しては、見切り発車の勢いだけで投稿した作品ということもあって現在執筆中となっており投稿はしばらく先となります。


 ☆レビューや応援ボタンをポチっとしていただくだけで本間のモチベーションが上がります。もしかしたら投稿が早まるかもしれません。是非ともよろしくお願いします。 

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