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第11話 SS

 これは勇者と魔王がサブカル文化にどっぷり浸かるより前――シオンの協力でダンジョン資源を売却し色々買った直後の話。


「これが魔力式発電機で、こっちが一般的なDデバイスの携帯端末スマホのようなものと個人端末《PCのようなもの》。それと家電一式と……まあ魔力で直接動くのか発電した電気で動くのかって点とプログラムに魔術式が組み込まれている点以外は前世にあった電化製品とそう変わらんな」

『やはりこの世界の魔道具はずいぶん進んでおるのう』


 魔道具じゃなくてDデバイス、あるいは電化製品ね。異世界出身だとバレたら面倒だからその辺はちゃんとしてくれ。


 さて共犯になったとはいえ、一度草壁家を介して入手した物は発信機や盗聴器の類が仕込まれていないか調べる必要がある。物理的にも世界的にも隔離されたダンジョンの中で使用する分には、実は気にする必要はない――その辺の対策は既に魔王が施している――のだが、念のためだ。


 魔術的なものなら魔王が、機械的なものなら《《オレ》》がなんとかできる。そのために電波や電磁波を探知する魔道具なども用意してもらった。


『てっきり細工の一つや二つあると思っていたが、特に怪しいものはないのじゃ』


 そうして調べてみた結果、発信機も盗聴器もなかった。


 シオンによると取引の話は草壁家の中でも当主と次期後継者の長男、そしてシオンの三名だけが知っているそうだ。一族の裏切り者があの叔父だけとは限らない上、亜人会にもスパイが潜り込んでる可能性も考えて、この話を知る人間は最小限に抑えるとのこと。


 亜人会はまだわからないが、少なくとも乗っ取られる前の草壁家はある程度信用していいかもしれないな。


「ミナト様、設置作業はこのまま進めてもよろしいでしょうか」


 魔王が他のダンジョンで鍛えた結果、デモンゴートはさらにヒトへと近づく形で進化していた。今では上級悪魔から下級魔人に進化を果たし、魔王によると一段階――感覚的にはAクラス下位から中位――ぐらい強くなったらしい。


 まだ全身山羊の体毛で覆われてるけど、そろそろちゃんとした服とか用意したほうが良いかもしれない。


 そんな進化したことで流暢に言葉を話すようになり、幾分か小さくなったゴート娘たちは大型家電をものともせず搬入を手伝いを申し出てくれた。


「悪いね。必要な物とか欲しい物があるなら言ってね。問題無いなら買っとくから」

「ありがとうございます」


 安全とわかったものから家電はゴート娘たちが設置する。


 ちなみに配線等はオレが考えて魔王の≪迷宮掌握≫で配線工事しておいた。多少、見栄えの悪い所はあるが使う分には問題ないだろう。


 問題は端末関連《次》だ。


『確かこれを使って、“いんたーねっと”なるものにアクセスするんじゃったか』


 そうなんだけどね。回線をどうするかなんだよねえ。回線そのものは地球側と繋がる極小の穴を用意して中継器とか用意すれば良いだけの話なんけど、通信会社がなー。


 企業のランクには特定業種の開業権がある。通信サービスであれば回線事業を行うにはA級である必要があるが、プロバイダーはB級でもいける。


 ちなみに回線事業者は高速道路そのものを設置・管理する企業だとすれば、プロバイダーはその高速道路に入るための諸々を用意する企業と思えば良い。


 なのでネットワークへの接続自体は草壁家から亜人会系列の企業プロバイダーと契約すれば使える。実際、シオンが用意した携帯端末は亜人会系列の企業と契約してある。


 でもこれをそのまま使うとこっちの通信は全部筒抜けになるんだよなあ。仮想専用線《VPN》のような物があればいいんだけど、ちょっと調べてみるか。


『そこは妥協するしかないのではありませんか?』


 そうだな。最悪見られても良いよう各自、気を付けて使ってもろて。あっ……これ同時に使うとこっちが複数いるのもバレるよな?


 いっそのこと二人も同居人として紹介するか。


『それならゴートたち眷属は召喚物として扱うのじゃ』


 【正体不明】の持つスキルを召喚術系ってことにするのか。


 おっけー。ならここも空間系のアーティファクトで作った隠れ家――ダンジョンで発見される魔法的なお宝――ってことにして、シオンも招待しちゃうか。


 バレて困るのは前世有りなことと、迷宮を掌握するスキルを持つってことぐらいで、転移魔法やダンジョンの探知方法とかは広めちゃっても構わない。


 転移魔法はそもそも魔術化して再現するには維持費含めてコストも規模もとんでもないことになるみたいだし、探知方法も広まったところでだし、うん問題無し。


 統括機構の探知方法と魔王の探知方法の違いについて。


 統括機構は全世界に魔力波を観測する装置を設置することで、魔力の異常――ダンジョンの発生を観測する。


 一方、魔王は前者に加えてダンジョンが発生する際に発生する次元震動を探知して見つける方法を併用している。


 魔力波観測式――前者はダンジョンから魔力が流出して異常を察知するまでのズレが生じる。ただし魔力波の乱れはダンジョン発生以外の異常事態にも対応できるというメリットもある。また流出する魔力からダンジョン内に生息するモンスターの強さを外から予想することができる。

 次元震動観測式――後者は発生とほぼ同時に探知できるが、ダンジョン発生か次元に異常があった場合にしか対応できない。こちらはダンジョンの規模そのものは震動の大きさで図ることができるがモンスターの強さまでは予測できない。


 つまり併用すればメリットしかない。

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