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まずははじめに

見切り発車で運行いたします!

大陸の大部分を統べる竜王様には、一生忘れられない最愛の恋人がいた。妃では無いのは、彼女の身分があまりにも竜王様と釣り合いがとれなかった事で、誰も彼もが彼女を妃として据える事に反対したからだった。

その恋人は、漆黒の髪の毛に、光り輝くような青い瞳の、どこか冷たい感じのするすごい美女だったと、吟遊詩人達は歌う。

彼女はしかし、謀略に巻き込まれてしまった結果、竜王様の目の前で毒をあおって死んでしまったのだという。

その彼女は、悔やみ泣き濡れ嘆く竜王様に向かってこう言った。


「生まれ変わったら、また出会う事もありましょう」


その言葉を最後に彼女は死んでしまい、竜王様は正妃の喪に服す時と同じような長期間、彼女のために喪服を身にまとった。

そして誰一人として妃を迎え入れず、愛する女性が生まれ変わる時を待ち続けたのだ。

その時間はなんと三百年。

彼女が死んで三百年と十六年が過ぎた時、神官達にこの世界で最も偉大な神様であらせられる龍神様がこう神託を与えた。


「我が子竜王の愛する女性は、蝕まれし日に生まれて育っている」


と。

これにより、世界中で蝕まれし日、つまり日食があった日に生まれた娘を探す事が始まった。

だが、面白いほど意外な事に、その日に生まれた少女はたったの三人ぽっち。




「オーレ、早く身支度を調えるのを手伝ってちょうだい!」


「はーい、ただいま」


「あんたは本当にのろまなんだから!」


「あっはっは」


「そういう所も気に入らないのよ! いつも笑ってごまかして! 本当に、パパがどうしてもって言わなかったら、あんたじゃ無くてほかの女の子を、お付きの女性として連れてきたって言うのに」


「おらも村長様のお願いじゃなかったら、パルの村から出たくなかっただよ」


おらがにこにこ笑ってそう言うと、村長様の溺愛する、常闇の髪の毛のお嬢様、ライラ様は鼻を鳴らして、早くしろと手振りで示す。

だからおらは、急いでライラ様の本日のお召し物の用意をするのだ。


「また、どこかの伯爵様のところから宝石飾りの贈り物だべ」


「その色、嫌いなの。いつも通り宝石箱の所に入れておいて」


「はいよ」


お召し物の支度をしている間に、取り次ぎの女性達が、ライラ様のところにやってきた贈り物を見せてくる。

麗しのライラ様は、その宝石の色が好きじゃ無いから、といってそれを宝石箱の中にさっさと片付けるように指示を出す。

ライラ様は、常闇の髪の毛に青空色の瞳の、雰囲気が冷たい美少女で、だから贈り物は寒い色の方が多いんだけれども、ライラ様がお好きなのは桃色とかそんなので、どうしたってライラ様は気に入らないらしい。


「誰も彼もが、青色や銀色やらを持ってくるわ。私はかわいい色が好きなのに」


「青色でも、もっと薄くてかわいい色ならお好きだべ?」


「そうよ! ……贈られるだけいいって誰もが言うけれど、好みでないものを贈られても、笑顔になれないのだから、難しい話よ」


ライラ様はそう言って、本日のお召し物を身にまとう。いつ見てもライラ様は、伝説の美女も負けそうな美少女だと、おらは勝手に思っている。


「今日はほかの二人との顔合わせよ。気が重いわ。だってどっちも私より出身身分が高いんだもの」


「ライラ様は村長様の娘だべ、なにをそんなに嫌がるんだべ」


「あのねえオーレ! 一人は侯爵家のお育ちで、もう一人は大陸の中にある国の王女なのよ! 村長よりずっと尊敬される、私が出会う事なんて無かっただろう人達なんだから」


「ライラ様が素敵なのは、おらがよーくわかってるべ」


おらがにっこり笑って言うと、ライラ様はふくれっ面になった後に笑った。


「あなたくらいよ、笑ってそんな事言っちゃうのはね。そういう楽観的なところだけは、幼なじみのあなたをパパが選んで良かった事かもしれないわ」


「おらは都会の空気が好きじゃないんで、帰れるならさっさと帰りたいんだけども、ライラ様一人に出来ねえべ? だから頑張ってるんだ」


着替えてお化粧を施して、髪の毛も結い上げたライラ様は、お姫様も負けそうな美少女だったから、おらは笑って、後の事を、ほかの人達と顔を合わせる場所に出入りできる侍女達に任せて、支度部屋のお片付けに入ったのだった。





ライラ様は、蝕まれし日に生まれたと村で記録されている、村長様の末っ子のお嬢様であり、おらの幼なじみだ。

だから、あの日、蝕まれし日に生まれた少女がいるという記録を確認したえらい人達が、パルの村にやってきた時。


「あなたは竜王様の恋人の生まれ変わりかも知れません、そのため都に来ていただきたい」


と頭を下げられて願われて、家族と涙の別れをして、お供はおらだけで都にやってきた女の子なのである。



「本当に、色はそっくりなんだべな……でも」


支度部屋をせっせと片付けて、整理整頓して、いつでもライラ様がやりたい事が出来るように整えながらも、おらは心の中でだけ断言する。


ライラ様がいくらきれいで、かわいくて、いい女の子でも、竜王の恋人の生まれ変わりじゃないのだ。


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