四十三話 ナガテの加工
「いい感じ」
「ありがとう」
トントン、サクサクと繰り返す音をしばらく堪能しながら作業していると、ウィンハックが覗きに来てくれた。
一方精霊バトルの方は一時休戦状態で、ルナリアは俺の隣に座り、セローは工房のあちらこちらをふよふよ漂っている。
「そろそろいいかな。余分なものを払い落して、一つの束にしてくれ」
「こうか?」
「そうそう」
たしかに叩いていると、糸になるであろう長い繊維の他に、細かい表皮や枝なんかがポロポロと出てくる。
それを払い落して丁寧に一つにまとめる。
なんだか髪の束を切った後みたいだ。
「これで終わり……」
「と思いきや、さらに細かく叩いて柔らかくするんだなぁ、これが」
「ですよね~」
ウィンハックが取り出したのは、木製の道具。
構造としてはいくつか突起がある台にあたる部分と、片側だけ台に固定され、上下に可動することができる細長い部分。
どうやらハンマーで叩く作業を広範囲にさらに細かく行う道具のようで、台にナガテを並べて上からザクザクと可動部分を動かすようだ。
説明を受けてひたすらに手を動かす。
ハンマーでは一つ一つ丁寧に砕く、といった感じだったが、これを使うとより大胆に細かく繊維を割くことができる。
露になったナガテの繊維には、徐々にふわふわ感がでてきた。
『まぁまぁ……』
「めずらしいか? ルナリア」
『ええ、ええ』
物珍しそうにじっと隣で見守るルナリア。
エルフが弦作りをしている様子を見たことがないのかな。
『ちまちまやってねーで、風で切り裂きゃいいんじゃねぇの?』
『まぁ~~これだから野蛮な風のお方は! わたくしたちは、あなた方と違って繊細ですの! ええ、一緒にしないでくださいな』
『はぁ~~~~??』
『なにか??』
精霊バトル、第二ラウンドが勃発した。
しかし、セローの言い分も分かるがいくらナガテが植物の中でも強い繊維とはいえ、強靭な風にさらされたらひとたまりもないだろう。
俺は対峙する精霊を横目にひたすら繊維を細かくする作業に没頭した。
◇◆◇
「……ふぅ」
「よし」
ハンマーに続いて木製の道具を上下に動かしていると、さすがに手が疲れてきた。
経過をウィンハックに見てもらう。
「じゃあお次は……」
「! ま、まだだったか」
「残念だったな」
ニヤリと笑うウィンハック。
ひたすらにほぐしたナガテの繊維は、それだけでも十分糸のように見えた。
あとはこれを撚っていくだけ……と思ったが、そう甘くはないようだ。
「といっても、もうすぐだ」
「よしっ」
終わりが見えるとやる気も自然と上がる。
「叩いてほぐした繊維を、解いていくというか、とかすというか」
「本当に髪の毛みたいだな……」
今度は髪の毛をとかすブラシのような道具を持ってきたウィンハック。
しかしその突起物は鋭く、これで髪の毛をとかすと大変なことになりそうだ。
「こういう感じでな」
手本を見せてくれる。
見たままだが、やはりナガテの繊維を髪の毛に見立ててとかしていく感覚。
髪の毛のブラッシングとの違いは、道具は作業台に置いて手で固定。
ナガテの繊維の方を動かしてブラッシングしていく。
ある程度できたら、もう一度突起物の密度が異なる道具で繊維をサラサラヘアになるようにして、一旦完成らしい。
「──よしっ」
言われたとおり、再び俺は黙々とナガテの繊維と向き合った。




