四話 なぜか覚醒した弓師
「──……お」
さすがに『本気で謎の人物』に、ご丁寧に村を案内するわけにもいかない。
エルフたちにとって、俺は現在扱いに困る人間って位置づけのようだ。
長老たちの会議が終わるまで、俺は村の中心っぽい広場で武装したイケメンエルフたちに囲まれて待機している。
とんでもない絵面だ……。
暇を持て余した俺は、エルフ達の装備を失礼にならない程度に横目で盗み見ている。
ファンタジーな世界観のゲームや漫画が好きだし、こういった状況でなければもっと興奮していたかもしれない。
しかも、ミラウッドさん含め弓を持っている者も多いなら、なおさら興味がある。
肩掛けのベルトで矢筒や弓を背負えるようにし、腰には中くらいの剣も。
人によっては小型のナイフやポシェットなんかも付いていて、本当に異世界なんだなと改めて実感した。
まさか、この眼で剣を見るなんてな……。
彼らの装備が意味するところは、やはりファンタジー作品のように自分たちで食料を狩猟で得る。あるいは魔物のような存在がいるってことだろう。
彼らの背負う弓は、形としては似ているがなんだか知らない物のように思えた。
「木、か」
「? なんだ?」
「! あ、いや。周りの木々が、大きいなと……あはは」
彼らの弓は木製だ。
金属や動物の素材等を貼り合わせた複合弓ではなく、単一の材料のみで作られた丸木弓。
長さは日本人のように『弓道』といわれて想像する二メートル超えの和弓ではなく、人の身長より短い。
それだけでも自分にとっては見慣れない光景だが、もう一つ見慣れない点がある。
右手に弽がはめられていない。
弓を引く際の補助となるグローブのようなものだが、エルフの皆さんは素手だ。
引く時の力が和弓ほど必要ないのかもしれない。
やはり自分の知っている弓とは別物として考えた方がいいだろう。
「…………ん?」
そう心の中で結論づけると、ミラウッドさんの背から顔をのぞかせる弓に異変が起きた。
「んん? ……まりょ、く……でん……魔力、伝導、効率C?」
「「「「!!??」」」」
ぼんやりと弓の横に浮かび上がる文字。
なぜか弓から得られた謎の情報をぼそっと呟くと、エルフの皆さんは一斉に俺を見た。
「な、なんでしょう……!?」
「コーヤ。いま、魔法を使ったのか?」
「いやいや! そんなすごそうなもの使えませんよ」
やっぱり異世界。
魔法のようなものがあるんだなぁ。
「鑑定魔法ということは……まさか」
「誰か! 長老たちに報告を!」
「えええ!?」
ヤバい。なんだかまた話がややこしくなってしまったような……。
「なぜ隠していた?」
「俺も今突然視えたので、もうなにがなにやら……」
ミラウッドさんは俺が何らかの能力を隠していたと勘違いしているようだ。
いったいこれが何なのか、俺が聞きたいくらいだというのに……。
「もしや……コーヤ、君は……」
神妙な面持ちで俺をじっと見つめるミラウッドさん。
いったい俺が……な、なんだっていうんですか──!!




