十八話 人にもよるし、精霊にもよる
「では、また来る」
「ありがとう」
ミラウッドは俺を家まで送り届けると、夕飯の時間にまた来てくれるという。
彼は現在一人暮らしのようで、どうせだからと俺たちと食事を共にすることにしてくれた。
エルフは毎食食べる必要はないが、食べても体に影響があるわけではなさそうだ。
あとで材料を持って作りに来てくれる。
この家もエルフたちから提供してもらった。
こんなに快適な異世界転移、マンガでも珍しいかもしれない。
良くしてもらってばかりでありがたい反面、心苦しいかぎりだ。
『ん? 元気ねぇな』
「そうかな? ……ちょっと、疲れたのかもな」
『まぁコーヤさま。お大事になさって。ええ、なさってください』
「ありがとうルナリア」
ベッドに腰かけ一息つく。
トコトコと近づいてきたルナリアの頭を撫でてやると、目を細めて気持ちよさそうにしてくれた。
撫でたあとに気付いたが、精霊にこんなことして大丈夫かな。
エルフの掟で不敬罪とかあったらどうしよう。
『……』
「なんだ? セロー」
『ソイツだけってのは納得いかねぇ』
反対の手にぐいっと頭を押し付けるイタチ姿のセロー。
今の姿だと可愛らしいが、これが人型だったらと思うとちょっと面白い。
『あーら、見苦しいですわよ風のお方』
『うるせぇな。ねぼすけ』
『はいーー??』
「まぁまぁ……」
相変わらずの二人。
せっかくだし、聞いてみよう。
「森の精霊と風の精霊って……仲がそんなに良くないのか?」
『はぁ? べつに。オレらの風に便乗して勢力広げようとしてるヤツのことなんて、一々気にしねぇな』
『ええ、ええ。時に荒々しい風で森に生きる者を驚かすお方なんて、まったく気になりませんわ。ええ、気にしません』
「なるほどなぁ」
植物は風に種を運んでもらって、風は気まぐれで他のことは気にしない。
イメージ通りというかなんというか。自然の摂理というか。
人間と一緒で、たまたまこの二人が特別反りが合わないだけかもしれないな。
うーん。まぁ、エスカレートしなければこのままでもいいか……。
「ほどほどにな」
『コーヤさまのご迷惑になるようでしたらわたくし、容赦しませんので! ご安心なさって。ええ、なさいませ』
『はぁ? コーヤにゃオレ一人いれば十分なんだが。オマエがどっか行け』
『きぃーーーー!!』
「お……」
セローが上位精霊ってのはルナリアも分かっているみたいだ。
一人で十分、っていうのは否定しないんだな。
やっぱりセローはすごい精霊のようだ。




