十五話 異世界の材料
『──なんで!!』
ざしゅっ。
『このオレがぁ!?』
スパッ。
『木なんぞを!』
ズダーン。
『切らなきゃならねぇんだーー!!!!』
「めちゃめちゃ怒りながら切ってる……」
尻尾を鞭のようにしならせ、そこから風の刃を発生させて木を切るセロー。
風の木こりといったところだ。
現在ミラウッドとルナリアは長老たちに報告中。
俺とセローは休んでおくよう言われたが、どうにも体を動かしていないと理由のない不安が襲ってきそうで、また職人エルフのところに見学へ向かった。
この世界における『弓』を作れないと本心では思っているのに、しかし興味がある。
変な話だ。
でも、落ちこぼれなりに弓と真剣に向き合ってきた自分らしいとも思う。
そこで一緒に作業していた矢師のエルフが木材を欲していたので、彼を手伝うことに。
俺は鑑定の練習にもなるし、セローは力を持て余して発散したそうだったのでちょうどいい。
村の一角には、既に切り倒された木がそのまま横たわっており、これを加工していろいろ作るようだ。
セローは矢師エルフの指示どおりに、風の刃で木を加工しやすい大きさに切る。
俺は、いろんな木々を鑑定で視て回ることに。
「……おお」
真っ二つに割れた丸太。
中には妙な空洞があり、まるで割れた水瓶のようだ。
人為的なものではない。
集中して視てみると、
【チルの木:水をたっぷり貯える習性がある】
とあった。
「このくぼみに水を溜め込んでいたのか……?」
「お、噂の鑑定魔法ですか。そうです。水辺によく見られる木で、水の精霊魔法と相性がいいのですよ」
「へぇ……」
面白い。
矢は専門外だが、それにしたって異世界の材料は面白い。
材料にこだわるというのは同じだが、その目的からして異なる。
「たとえば魚を射る時に水の精霊様に力を借りれば、一射目で水柱を起こして逃げ場を塞ぎ、二射目で的中させる……のような使い方ですね」
「なるほどなぁ」
そうか。この世界で弓を射るというのは、一射一射に時間を要するものではなく、即次の矢をつがえることも多いのか。
そういうところも俺の思い描く射とは異なるな。
「こっちは……?」
隣にある木は、なぜだか所々樹皮に黒い跡がある。
集中して視てみると、
【フラマの木:身に危険が迫ると、発火して樹皮を燃やす】
とあった。
「木が……発火!? だ、大丈夫なのか?」
「ええ。あくまで表面を焼く程度。他に燃え移ることはありませんよ。なにかあれば森の精霊様たちも協力してくださいますし」
「へぇ……」
魔物がいるっていう環境が、いろんな生態に影響を及ぼしているんだろうな。
まさか自衛の手段で植物が発火するとは。
ん? 待てよ。
……ってことは、精霊たちが眠っている今は何かあるとまずいのでは?
何事もないことを祈ろう……。
「い、いろんな木があるんですね」
「ええ。森に来てくださる火の精霊様は少ないですから、フラマの木は魔術矢として使うことが多いですね。たとえば呪文を筆で描いたり、火を得意とする魔物の羽根や骨を加工して取り付けたり。あるいは炎を扱う魔術師の援護に使ったり」
「なるほどなぁ」
そういえば精霊魔法ってのは、セローの風の魔法みたいなものを人が使えるようになるって感じだろうけど。
魔術っていうのはどんな感じなんだろう。
呪文が長いとかか?
……あ。
というか、精霊の力を借りるってことは、自分の魔力が尽きていても使えるってことか?
うーん。素人考えでも、精霊魔法の方が優れていそうなのは分かるな。
こう、魔物との戦いとかは怖いけど、せっかく異世界に来たならカッコいい魔法を人が使っているところは一度見てみたいよな。




