そだてられるもの
「さあ、今日もたくさん食べて、自由に暮らしなさい」
いつも通りご主人様はそうおっしゃって、私達にご馳走を振舞ってくださる。
ご馳走をお腹いっぱい食べたら、後は次のご馳走が出てくるまでただ面白おかしく生活するだけなのだ。
私はご主人様のお屋敷で生まれ、それ以来ずっとそのような生活を送っていた。ご主人様はお優しく、私の健康管理や体調まで気遣ってくださっている。私だけではない。このお屋敷では私のような者がたくさん養っていただいているのだ。ご馳走をおいしそうに食べる私たちを、ただただ優しい目で見ていらっしゃるご主人様は、まるで神様のような存在であった。
「貴女も大人になったら、ご主人様に恩返しをするのですよ?」
母が私にかけた最後の言葉だ。立派な淑女に育った母はご主人様に恩返しするため、とある(といっても私はそれがどこにあるのかも知らないが)お屋敷にご奉公にあがったのだ。私たちにとってそれは最大の目標であり、唯一ご主人様に恩返しできる方法なのだった。私もいつか母のようになりたいと思っている。
数年後、遂に私もご奉公にあがれる時が来た。
「立派に人々のお役に立ってくれ」
ご主人様が笑顔で言ってくれた時には感動で涙が止まらなかった。そして私は豪華なお車に乗って、ご主人様のお屋敷を後にしたのだった。
「いいから食え!ガリガリでは売りもんにならん!」
あたしは無理やり食べたくもない不味い料理を毎日食べさせられていた。
無理やり食べさせられた後は、次の時間が来るまで狭い部屋で沢山の仲間と一緒にすし詰めにされる。
あたしは生まれつき奴隷であった。奴隷の母から生まれ、奴隷としてあの忌わしい男に縛られて生きていた。あの男はあたしやあたしの母だけではなく、多くの奴隷を抱えていた。まるでモノのようにあたしたち奴隷を管理し、気分が悪いと口汚く罵ったり、殴って発散したりする最低の男だ。
「嫌・・・やめて・・・あ・・ああぁーーーー!!!!」
あたしが最後に聞いた母の言葉だ。十分魅力的な肢体に育ったと判断された母は、とある(あの男の同類の)男に売られてしまった。それがあたしたち奴隷の行き着く先だ。奴等の欲望を満足させるための道具として育てられ、売られていくのだ。あたしも逃れることはできない運命なのだろう。
数年後、遂にあたしも売られるときが来た。
「いいか!この俺に恥はかかすな!」
男がそういい捨てたとき、あたしは自分の運命をのろった。しかし、あたしの身体は十分成長し、あたしを買おうとしている男が涎をたらすほどに魅力的に育ってしまっていた。
そして私は、
そしてあたしは、
ご主人様のお友達の、
あの男の同類の下種の、
お役に立つために、
欲望を満足させるために、
立派に育った淑女としての体を
魅力的に育った奴隷としての体を、
切り刻まれ、バラバラにされ、売られ、焼かれ、
食卓に上ったのだ。
「ママ、今日の晩御飯、なーに?」
「今日はさっちゃんの大好きな豚カツよ」
「わーい、私大好きー!!」