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感染者(ゾンビ)と死者(ゾンビ)と追放された悪役令嬢とその他大勢 第3章

「さて、これからどうする?」

 館を追い出された康大達は、すぐに今後の方針について話し合った。

 ザルマの問いかけに、康大は少し考えてから話始める。


「思うにこの場所も一応都の範疇に入るよなあ?」

「領土的には都と言ってもいいでしょう。多くの人は天城がある街だけが都と思っているようですが」

 康大の疑問にはボロネーゼが答えた。


「だったらもうこの辺りからレッドハーブを探してもいいんじゃないか?」

「レッドハーブ?」

 初耳のボロネーゼだけが首をかしげる。

 目的さえ教えなければレッドバーブについて話しても問題ないだろうと思い、康大はボロネーゼに素直に尋ねた。


「都にあるらしいレッドハーブという植物を探しているんですが、ボロネーゼさんは知りませんか?」

「申し訳ありませんが私には……。何か大事な物なのでしょうね」

「はい」

 康大は素直に認める。

 下手に隠せば逆に詮索されそうな気がした。

 多少足元を見られようが、ここは取り繕はない方がいい。


 それを聞いたボロネーゼは黙ったまま、記憶の棚を片っ端から開けているような顔をしていたが、その中にレッドハーブに関する情報はなかったようである。


「申し訳ありませんが、聞いたこともありません。部下に聞くこともできますが如何しますか?」

「そうですね……私も人に尋ねるつもりでしたから、お願いします」

「かしこまりました」

 そう言うと、ボロネーゼは先に急斜面を降り、往来で突発の市を開いている商隊の方へと向かっていく。


「それで、俺達はどうする?」

「そうだなー、とりあえず日が完全に暮れるまで、村の人にでも手分けして話を聞いてみるか」

「然らば拙者は村の周囲を調査し、自主的に探してみるでござる。実物を見たことがないとはいえ、りあん殿から聞いた情報があれば、おおよその見当もつくでござる」

「まああの特徴は滅多にないっすからね」

「然らば御免」

 そう言うと、ボロネーゼ以上の速さで斜面を()()、どこかへと姿を消した。


「それじゃあ俺達も聞き込みをするか、とりあえずそれぞれが手分けして探すか?」

「いや、ザルマはリアンと一緒に聞きまわってくれ。俺はハイアサースと一緒に聞いてみる」

「分かった」

 ザルマは頷き、戦力になるかどうかわからないリアンと共に近くにいた人間に話を聞きに行った。


 ちなみにこの人選は、なにも康大がハイアサース一緒にいたかったからしたわけでもない。


 外見だけならザルマとハイアサースは美男美女で、初対面から好感度は高い。

 一方自分とリアンは地味な上口が上手いわけでもなく、いきなり話しかけても2人ほどの好感度は得られないだろう


 それを踏まえての組わけだ。


 下心はほんの少ししかない。


「よし、ならば私達も行くぞ」

「ああ」

 ハイアサースに対して康大は頷く。


 それから4人の聞き込みは始まった。



「あのー……」

 まず康大は話しやすそうな、中年女性に話しかける。

 どこのセカイでもこの年代の女性は話し好きで、口の戸が立てられないものだ。


 しかし康大を胡散臭げに見るだけで、その女性はそそくさとどこかへ行ってしまった。


「う……結構ショックかも」

「私は気にはならんが、少し怪しかったかもな。ボロネーゼさんの話が事実なら、村民もどうしても閉鎖的になってしまうものだ。さらに話し方も丁寧ではあるが他人行儀だ」

「うーん、"あの"しか言ってないんだけどなあ……」

 珍しく康大はハイアサースに諭される。

 同じ田舎者だけあって、彼女の方が村人の気持ちは理解していた


「これからは私が話しかけた方がいいだろう。コータは後ろで聞いて、気になることがあったらフォローしてくれ」

「分かった」

 今回に限り婚約者が頼もしく見える。

 そう思いながらハイアサースが別の女性に話しかけるのを見ていたが、


「あなた顔色悪いけど大丈夫?」


 頼もしく見える以前に、一般人には死にそうに見えていた。

 ハイアサースは慌てて回復魔法をかけ、仕切り直してから再び話す。


「おら東の山奥から来たんだけど」

 最近はあまり聞かない、訛りを全開にした口調でハイアサースは話を切り出した。

 話しかけられた女性は外見からは想像でいない口調に最初面食らったようだが、すぐに表情を崩し、警戒心を解いて同じような方言で話し始める。


 これは現実セカイでも同じだが、どうも方言には相手を安心させる効果があるらしい。

 田舎者は純朴で、自分を騙すような真似をする可能性は低いと思い込んでいるからであろうか。

 埼玉県民とはいえ東京の学校に通っている康大には、そのあたりの感情はよくわからなかった。


 ハイアサースと女性の会話順調に進み、ところどころで脱線しながらも目的は果たされる。


「……結局何も知らないみたいだな。大きい口を叩いておきながらすまない」

「まあ仕方ないさ。俺もそこまで期待はしてなかったし」

「では次にいこう!」

 ハイアサースはへこたれることなく、次のターゲットを見つけて話しかける。

 彼女のたくましさを康大は素直に感心しながら、後ついていった。



 そんなこんなですっかり日も暮れ、ザルマとリアンも戻ってくる。



 結局ハイアサースを中心に色々聞いてみたが、めぼしい情報は何もなかった。

 それは合流したザルマの方も同じで、レッドハーブについて知っている人間は誰1人いなかった。


 ザルマの場合、ハイアサースのような親近感を与えるのではなく、文字通り口説くような口調だったが、同様に効果的ではあったようだ。


 さらに馬車を止めている場所まで戻りボロネーゼに話を聞いてみてが首を振られ、その日の調査は完全な空振りに終わった……。

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