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不吉な前兆?

歴史クラブの活動に参加しますか?

はい

いいえ

………………………………………。

はい←


「まあ、勝手に持って帰っちまった本を返さないとなぁ」


 ということで、気絶から目覚めたのが翌日の十三時頃。クラブの集合時間までは、あと二時間ある。さてどうしようか、行くか行かまいかと散々悩んだ末に結局集合場所の図書室の前まで来たんだが……。

 え、待って。さっきの選択肢って何?

 危うくスルーしそうになったけど、よくよく考えたら選択肢が表示されるっておかしくないか? それってまるでギャルゲーみたいじゃない!

 もしかして、今までも同じようなもの出てた?


「………………………………………」


 いや? 別に変でもないか…。よくよくよくよく考えてみたら、重要なシーンで選択肢が表示されるって当然のことだろ。何らおかしいことはない。

 なんだろう……むしろ、選択肢が表示されることを不自然だと思ったこと、それ自体が不自然なんですよね。つまりそんな常識的なことで疑問を抱いたことに疑問を覚えた自分に驚いたんだよね。だって海外では当り前のことじゃないですか、脳内に選択肢が表示されるって。


 …………そうだよな? 


 ああ、何だかすごく頭が痛い。脳が今にもオーバーヒートしそうだ………。


ブレイン中尉「動け! 動けってんだよ、アドレイン三号!」


 脳内世紀〇〇七九年、ナショナリズムを掲げる神経細胞はグリア細胞に独立戦争を挑んできた。この一カ月余りの戦いで、神経細胞とグリア細胞は総細胞の半分を死に至らしめていた。


ブレイン中尉「アドレイン三号、動け! アンドレイン三号…! 何故動かん⁉︎」

???「YOU……フォースを使いなYO……」

ブレイン中尉「ファ、FATHER……⁉︎」

GODFATHER「フォースを使いチャイナYO………!」

機械音声「オーバーヒート! オーバーヒート! バクハツシマス! バクハツシマス!」

ブレイン中尉「フォースってなんだぁよようよおおおおおおお⁉⁉⁉」


 刹那、脳内宇宙に一つの光芒がきらめいた。

 やがてそれは強く、彼方まで広がって、暗き宇宙を優しい光で包み込んでいく。その光景をはるか遠い地球で二人の細胞人が見ていた。


「おじいちゃん、あれは何? ほら、空が輝いているよ」

「わしにもわからん」


 この戦いの後、グリア細胞連邦政府と神経細胞共和国の間に終戦協定が結ばれた。


「りゅ…す……ん⁉」

「…………うぅ…」

「リュウスケ君⁉︎」

「はうあ⁉︎」


 目を開ければ、愛美がいた。


「だ、大丈夫?」

「ああ……うん……」


 俺は慌てて立ち上がると服に付いたホコリを払う。


「また気絶してたのか……」

「また?」

「あ、いや何でもないよ」

「でも……」

「そんなことより。一旦図書室の中に入ろうよ。ちょっとここ寒いし、夜空はもう来てるのかな?」

「ううん」

「え、マジ? 遅いなぁ」


 腕時計で時刻を確認すると、約束の十五時はとっくに過ぎていた。


「アイツ遅刻かよ」

「ううん。夜空さん、今日は来れないって」

「あ……そう」


 てことは、愛美と二人っきりりりりりぃぃぃ⁉


「おじいちゃん、竜介嬉しそうだね。急にどうしたんだろ?」

「わしにもわからん」

「見てみて顔がニヤついているよ。キモイね、キモオタだね。ありゃ女子にモテないだろうね。おじいちゃんもそう思うでしょう?」

「わしにもわからん」

「うるせぇよ⁉ 細胞如きが黙ってろ! てか、ジジイ! おめぇ、それしか言えねぇのか!」


 あっ………え? 今俺、誰にツッコミを…? え? え?


「…………………………リュウスケ君、もしかしてまだ体調が悪いんじゃないの? だったら無理しないで、今日は帰った方が良いよ」


 愛美が、ものすご~く憐れみに満ちた眼差しを俺に向けている。


「いや全然っ大丈夫だから! むしろ絶好調まである!」

「本当に…?」

「うん!」

「変なクスリとかキメてない?」

「うぃーす! マッタクw シラフで~すwwwwwwwwww」


 愛美と二人っきり! こんな絶好の機会逃してなるものか! 前回の失敗を挽回するチャンスなんだから! 


「そう、なら良いけど」

「で、今日の歴史クラブは何をするんですか⁉ 隊長!」


 すると愛美がくすりと笑った。

 

「え?」

「うふ、リュウスケ君って面白いね」

「面白い?」

「うん。何だか一緒にいて楽しい……」

 

 キターーー(゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜) (゜∀゜)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!


挿絵(By みてみん)


 

 落ち着け。

 

 ここで調子に乗ったら、この前と変わらないじゃないか。

 

「今日の歴史クラブの活動は、お掃除です」

「…………………掃除?」

「うん。はいこれ」

 

 彼女は清掃ロッカーから箒を取り出し一本俺に手渡す。

 

「マジ? エッ~何で掃除なの?」

「大丈夫。ちゃんと歴史クラブの活動でもあるから」

「え?」

「ほら行くよ。リュウスケ君」

「ちょ、ちょっと⁉」


 で、やって来たのが例のお社。ニャン様のね。 

 

「お、おい、勝手に入っていいのかよ?」

「うん。先生に許可は取ってあるから」

 

 そう言って愛美はポケットから鍵を取り出し、厳重に施錠されている社の扉を開ける。たちまちカビ臭い匂いが鼻を突き、外光に照らされた無数のホコリが宙を漂う。

 社の中は薄暗くジメジメとした感じだった。おまけに狭苦しく、色々と珍妙な品々がごちゃごちゃ置かれていた。


「なんか社の中って言うより、物置の中にいるようだな」

「うん……」


 愛美の生半可な返事。

 見てみれば、彼女は目を輝かせながら前方を見つめていた。


「あれが御神体よ」


 彼女の視線の先へ振り向くと、奥には祭壇があった。


「あの掛け軸に書かれている絵……あれがきっとニャン様なんだわ!」


 愛美は近付いて、祭壇の中央に設置されている掛け軸を隅々と観察しだした。

 猫……。確かにそれは黒い猫の絵だった。けどまあ、ヤケに愛嬌のあること。猫のくせして一丁前に座禅を組んでは肉球で印を結び、更には信徒へのファンサービスと、こちらに向かってウィンクまでしてやがる。


「か………か…」

「ん?」

「かかあああああああああああああああああああああああああああーああああああ〜わわわわわわあわわわわわわわわわわわぁいいいいい〜‼ なんて可愛らしいニャンちゃんううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーー!」

「…………………………ハハ……」

「ね、ねっ! リュウスケ君もそう思うでしょう⁉︎」

「…………なんやコイツ(うん、そうだね)」

「あ、いけない! そんなことより早く掃除を済ませなくちゃ!」

「え、ここを?」

「うん。だから掃除用具を持って来たんじゃない」

「ま……そうだけど、どうして俺達が?」

「先生に、歴史クラブの活動としてニャン様を調べたいからお社の中に入って良いか聞いたの。それで、まあ返事はYESだったんだけど、ただ条件としてついでにお社の中を掃除するよう言われたの」

「なるほど」

「だから暗くなる前に片付けなくちゃね」

「OK!」

「でも……その前に…」

 

 不意に彼女は頬を赤らめる。

 

「私、ちょっとお花を摘みに……」

「え、ああ…うん」

「失礼」


 愛美が慌てた素振りで出て行く。


「…………………………」


 why do she go to pick flowers?(彼女はどうしてお花を摘みに行ったのですか?)


「祭壇にでも飾るのかな?」


 まあ、どうでもいいや。じゃあ、俺は適当に床でも掃いて………と、その前に、何気なくもう一度ニャン様の掛け軸を見た。


「猫の神様ねぇ、そんなのが本当に実在するなら………」


 その時である。

 にゃ~あおおおぅ~。

 びっくりして体が飛び跳ねた拍子に、ズボンのポケットから何かがズリ落ちてしまう。


「いけねぇ」


 さっき図書室にいた時に『死霊秘法』を愛美に返し忘れていた。俺は床に落っことしたそれを慌てて拾おうとしたが、


「……………………ニャルラトホテプ…………」


 開いていたページに注意がいく。


「………………………えっ?」


 そしてふと顔を上げると……どこだ?


 「えっ……えええぇ⁉」


 あ…ありのまま今起こったことを話すぜ! 俺は社の中で掃除をしていた、いやこれからしようと思ったら、いつのまにか一面おっぱい丸出しの巨大女に囲まれていた……。な…何を言っているのか、わからねーと思うが俺も何が起きたのかわからなかった……。

 

 ぼいん、ぼい~ん、ぼいん、ぼい~ん。

 ぼいん、ぼい~ん、ぼいん、ぼい~ん。

 

 なんだコイツらは⁉ 


「というより、ここどこだよ‼」

「竜介」


 誰かが俺の名を呼んだ。


「お、お前は⁉」


 振り向くと、ナント…⁉


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