序章 三番目の事件
序章 三番目の事件
海に面した別荘地。
三度目の事件はそこで発生した。
「こちらチェスター。ええ、はい。カードも確認しました。間違いなく美の幼体事件です」
若い刑事――チェスター――がスマホで連絡を取っている。
幾つか話した後、フレッドは現場に向き直った。
大理石の床、鹿の剝製、革張りのソファ、オーシャンビュー。
何の変哲もない金持ちの別荘。
被害者はエーメリー・エイムズ、六十三歳。
現場は所有の別荘のダイニング。
血塗れのキッチンの隣にある広々としたテーブル。
ターキーの丸焼きを乗せるような大皿の上に遺体は乗っていた。
服は剝ぎ取られ、手足は縛られている。
内臓はくり抜かれ中には葡萄や林檎が詰められている。
遺体の表面には油が塗られ、周りは同じように果物が敷き詰められていた。
先輩――マーティン――の刑事が溜息を吐きながらテーブルを指さす。
チェスターはその先にあるカードを見た。
「最初の事件は二番目からですよね。一番目は何処なんでしょう」
「さぁな」
二番目の事件は花のように飾られたバラバラ死体だった。
何にしても悪趣味な現場なのは間違い。
『これは三番目、三重奏。美の幼体』
花と砂糖の香りが現場に満ちている。
恐らく特注であろう香水がべったりと着けられたカードにはそう書かれていた。