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魔人 VS 黒翼


「何者だ、貴様!」


 騎士たちがギルから放たれる濃密な殺気に気付き、誰何する。


 ギルはそれに答えることなく歩みを進める。


「止まれっ!」


 騎士が怒鳴り剣を向けたその時。


 動きの予兆すら見せず、いきなりギルは貫手で騎士の腹を穿った。

 鎧に穴が開き深く突き刺さる。


「が、はっ!?」

「貴様っ、よくも!」


 血を吐き倒れる騎士。その隣にいたもう一人の騎士が剣で斬りかかる。

 しかし剣が振り下ろされるよりも早く、ギルの蹴りが騎士の顔面に炸裂。


「ぶはっ!!」

 

 騎士は数メートル後ろまで蹴り飛ばされてしまった。


「馬鹿なっ」

「強いぞ、こいつ!」


 騎士たちは全員剣を抜き構える。


 しかし、ギルは騎士たちを見ていない。その奥にいる捕まった優男と、倒れたままの小男を見ていた。


「……フリオ、ヨダボント」


 ギルは小さく呟く。


「なんだ?」


 クウスがいつでも動けるよう警戒しながら聞くと、ギルはクウスを睨む。


「そこに倒れている俺の仲間の名だ!」


 ギルは先ほどの騎士への攻撃と同様に、一瞬でクウスとの間合いを詰めた。

 クウスは貫手をかわしながら突きを放つ。

 だがギルもカウンターに反応し突きを避けてみせた。


 二人の腕が交錯する。

 

 先に動いたのはギル。


 クウスに足を掛け交錯した腕を利用し地面に叩きつけた。


「がはっっ!」


 全身に強い衝撃を受けたクウスへ、さらに上から追撃が来る。


「ぐっ! うあっ!」

 

 拳をガードし、起きあがろうとしたところに蹴りが飛んできた。

 ガードの上から蹴られ、咄嗟に後ろに跳んだことで距離を取れた。


「くそ! こいつ、……強え」


 蹴りをガードした腕が痛む、後ろに跳んでいなかったら折られていたかもしれない。

 ギルはパワーもスピードも魔人化をしていないクウスより上だった。

 

 

「それに……ティッカにアシト。銀混じりのガキ、お前が殺した兄弟の名だ」


 ギルから殺気だけでなく、渦巻く魔力が感じ取れた。そして、それと同時に強い怒りも伝わって来ていた。

 大きく息を吸い込んだギル。


 

「お前ら――――皆殺しだ」


 そう呟くと、殺意に比例するように魔力が高まった。


「黒き羽は 時に滅ぼし 時に慈しむ――」


 その詠唱が始まる。

 クウスが距離を取ったことでギルは詠唱を紡ぐ時間を手に入れてしまった。

 そして詠唱は完成し、()()は具現する。

 

「――具現せし意志の羽 羽が織り成す翼は我と共に在る 《黒翼(シトーダ)》」


 発動句とともにギルの右肩に現れたのは、漆黒の翼。

 片翼だけのそれは、ギルが右手を動かすと生きているかのように連動していく。


「な、なんて魔力……!」


 その羽の一枚一枚が魔力で形成されていることに気づいたソーマは戦慄する。

 いや、ソーマだけでは無い。魔法使いでもない騎士たちすら、黒翼から漏れ出す魔力を感じて当惑している。


 

「さあ、死ね!」


 ギルが右手を前に向けると、黒翼から黒い羽が射出された。その数は十数枚。


 高速で飛来する羽を、クウスは咄嗟に剣鉈で弾いた。

 弾いた瞬間に腕がわずかに痺れるほどの衝撃が伝わる。やはりただの羽根ではない。

 現に弾かれた羽は地面にあっさりと突き刺さり深い穴を開けた。

 弾かずにかわしていたら、後ろにいるソーマやエミリー、アグが危なかった。


「がはぁっ!」

「馬鹿な、鎧が……!」


 騎士たちは防御が間に合わなかった騎士が二人、鎧を貫かれていた。


「……黒い翼、羽を撃ち出す攻撃、無属性でも闇属性でもないわ。まさか、継承?」


 ソーマが後ろで何か言っている。


「ほう、中々気付くのが早いな」


 ギルがソーマに関心の目を向ける。

 正解だとでも言うようなギルの物言いにソーマは驚いた。


「ほ、本当に継承魔法なの? なんで闇ギルドの人間が――」

「それを知る必要は無い」


 ギルは再び黒翼を羽ばたかせ、羽を射出してくる。


「ちっ、おらぁ!」


 今度は二枚の羽を弾く。一枚一枚が重い。

 クウスたちと騎士団へ同時に攻撃しているので、一人ひとりに飛んでくる羽は少ない。だが、これが全て一人だけに向けられたら……。


「おい、お前ら! エミリーを連れて離れろ」


 ソーマやメット、カリオッツにエミリーを任せる。

 守りながらじゃ戦えない。


「だめよ、全員で逃げた方が――」

「いや、奴は騎士団よりも仲間を倒した俺たちを狙ってる。特にクウスをな」


 ソーマが全員での逃走を提案しようとしたが、カリオッツが無理だと言う。


「心配すんな、あいつはオレがぶっ飛ばす!」


 クウスは左手を胸に置く。


「――《解封(アンシール)》《真抗門(しんこうもん)》!」


 銀が黒と混ざり合った。

 本日、二度目の魔人化だ。

 どの程度の時間、魔人化を保たせられるか分からないが勝つにはやるしかない。



 「行け!」


 ソーマたちに声を掛け、すぐに前へ走り出すクウス。

 ギルへ迫る。


 ギルはクウスの魔力と闘気が増大したことに気づき、その変化に警戒した。


「何だそれは?」


 黒翼から放たれる羽を躱しながら接近するクウス。

 ギルの左から攻撃すると見せかけ、根源魔法で風を放つ。


「なっ⁉︎」

 

 急激な方向転換。

 ギルはついてこれない。


「喰らえっ!」


 剣鉈による袈裟斬り。


 しかし直前で剣鉈は黒翼に受け止められる。

 黒翼がギルの体を包み込むように覆って守ったのだ。


「くそっ」

「ふん、死ね!」


 今度は黒翼がクウスを吹き飛ばすように羽ばたき、同時に羽を射出した。

 その数は十枚。


「う、おぉぉおおおっっ!!」


 剣で弾き、逸らし、受け止める。

 それでもさらに四枚の羽が迫る。

 身体をのけ反って二枚を避けたが、一枚が左腕に、最後の一枚が右脇腹を抉っていった。


「ぐうっ、くそが」


 だが、致命傷ではない。

 足は無傷だからまだ動ける。

 後で《魔注治療(キビダンプル)》で治せばいい。


 さらに放たれた追撃の羽を転がってかわす。


 魔人化も限界な上、この傷じゃあ長くは保たない。


 次で決めるしかない!


 意を決したクウスは最後の詠唱を紡ぎ始めた。



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