第78話 嵐が来る
皆さん待望の(?)第二部スタートしました!?
二か月前に一回完結しちゃってるけど、77話の最後にちゃんと匂わせてあるし、復活許してちょうだい!
とはいえ、第一部にあたる77話までの話で書きたい事はほとんど書いてあるので、ここからの物語は蛇足の物語になっちゃうかも。。
だけど僕の中でのシエルの物語はまだまだ続いているので、勝手に続き書かせてもらいます!
モチベが続くうちは、しばらくよろしくね!
俺がこの世界で浮遊魔法を始めて使ったあの日、一つだけ思い描いていた事がある。
もしもこの世界の主人公であるアレクと同じ魔法を、この俺も使えるのだとしたら、あの魔法が使えるのではないか、と。
『僕最強』の世界観においても物語の後半でアレクが取得する事となる、あらゆるチートや主人公の無制限の強さを肯定するテンプレ最強魔法。
『光魔法』を。
8月5日
俺は学園の門の前で、ピタリと足を止めると、空を見上げて何かを感じ取る。
「……これは、嵐が来るかな?」
ここは晴れているのだが、暗く分厚い雲が向こうに見えており、かつ湿気や俺の第六感を加味した結果、今日外に出るのはよろしくないと見た。
最近浮遊魔法の練習で飛び過ぎてたせいで、感覚まで燕みたいになってしまったのだろうか。
「はぁ…とうとう俺様はシックスセンスというチートまでも手に入れてしまったか。これは全米が驚愕するハリウッド映画化間違いなしだな」
俺は右腕を震わせながら一人で遊んでみたが、特に面白くはなかったのでぼけーっと空を見上げてみる。
まぁ、夏休みの初日に帰省を済ませてしまったせいでする事もなく暇をしてたから散歩しようとしただけだ、とっとと帰ろう。
俺は頭を掻きながらくるりと後ろを向いた時、それはいた。
「もしもし、君はここの生徒かね?よろしければ案内を頼みたいんじゃが」
「…………っ!?え?いつの間にそっちに居ました?」
「『とうとう俺様は…』ってところから」
「一番はずい所からいた!?」
「そんな事より可能ならば、水を飲めるところに案内してくれませんかの?42.195㎞走って来たもんじゃから……」
「フルマラソン走ってきたんですか!?」
綺麗な白髪だけの頭を揺らしながら息をつく老人は胸に手を置くと、脇に杖を挟みながらスーハーと深呼吸している。
歳はルーベルトさんより若干老けてる感じか?
今にも死んでしまいそうでいてどこか儚さを感じさせるお爺さんだが、ここで無視するわけにもいかない。
俺は急いでお爺さんの元へ駆け寄ると、ゆっくり歩調を合わせて水飲み場まで案内する。
しかし、このお爺さんどっかで見たことあるような雰囲気を感じさせるんだよな。
とはいえここでラノベの定番、鈍感系主人公を発動させるわけにもいかない。
さっきの冗談の感じとか、白髪とか……
俺は必死に頭を回転させながら、ゆっくりと水を口に運ぶお爺さんへ尋ねる。
「……間違ってたら申し訳ないんですけど、あなた、もしかしてシャル…ロッテさんのお爺さんだったりします?」
「そうじゃよ」
結構当てずっぽうもいいとこだったのに、こんなすぐ分かっていいの?
やっぱり今日の俺の第六感は冴えてるのだろうか。
水を飲んで満足げな老人は、そんな俺の動揺なんて気にせず、杖をついて学園の中へ入って行こうとする。
またまた面倒な事になりそうだと、俺はこれまで何度ついたか分からない溜め息をついて、そんなお爺さんを追いかけていった。
外は既に暗く、今にも雨が降り出そうとしていた。
「し、失礼しましたー……」
私が職員室の扉を閉めると、廊下の窓から見える外の景色はさっきまでとは打って変わって、雨がザーッと降っている。
夏休みの補習は今日で最終日となっていたが、リゼ先生も帰省という事で学園にはおらず課題を提出するだけで終了の、簡単な補習だった。
私とヘンリさんは一緒に教室に集まって、簡単な筈の課題を結構な時間をかけながら解いていたのが、そこに私達を茶化しに来たという建前でアレクさんが現れてくれたおかげで、教えてもらいながらなんとか課題を終わらせることができた。
私はヘンリさんの課題を一緒に持ってリゼ先生の机まで提出してくるとだけ言い教室を飛び出してきたのだが、外では雨が降ってくるくらい、思いの外時間がかかったのだろうか。
私は窓の景色から目を逸らし、教室まで急いで戻ろうと足を踏み出した時、私の肩が叩かれたような気がして振り返る。
そこには肩まで伸ばした金髪で、びっくりするくらい美人な女性が書類の束を持って立っていた。
「……な、何か私に?」
「えぇ、そうなの。あなた、リアラさん、だっけ?実はこの書類をある場所まで届けなきゃいけないのだけど、突然用事が入ってしまって。……悪いのだけど、私の代わりに届けてくれないかしら?」
「それは、それは……わ、私も別に急いではいないので、大丈夫ですよ!」
「嬉しいけど、ホントごめんなさいね!」
その女性は心底申し訳なさそうな顔をするので私は手を差し出し、書類を受け取ると、この書類を届ける場所を聞く。
その場所はちょうど教室からは正反対の場所であるが……まあ、仕方ない事だ。
私は笑顔を浮かべてお辞儀だけすると、急いでその場所まで向かう。
女性は最後まで申し訳なさそうな顔を浮かべていたが、その表情は私にはどこか嘘くさく映って……とりあえず私の気のせいだったと思う事にして胸にしまう事にした。
私は教えられた場所へ着き、書類を片手で持ちながらドアをノックするが、中から返事は返ってこない。
何度もドアをノックする事も考えたが、少し中を開けて声を掛けた方が早いかと判断し、少しずつ扉を開いてみる事にした。
「あ、あの~……誰かいませんか……?」
私が扉を少し開けて尋ねてみるも、やっぱり返事は返ってこない。
これはもしかして外出中なのだろうと思って、私は思い切って扉を開く事にした。
荷物だけ置いてすぐに帰ってしまおうと考えたのだが、その目論見が達成されることはなかった。
なぜなら中にはちゃんと人がいたからである。
そして私はその人を見て絶句した。
キャンバスへ向かい、一人スツールに座りながら勢いよく筆を走らせるその男は、私の存在に気付いたのか、ピタリとその手を止める。
「よぉ、お嬢ちゃん、久しぶりだな。そして待ちくたびれたぜ」
「……ふ、副学長?」
窓の外では、降り注ぐ雨が次第に勢いを増しており、嵐に発達しようとしていた。




