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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第9章 ロリ教師と美魔女の学長先生とただのモブ
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第70.5話 幕間 第二次すごろく戦争

むしろ本編より力作です。



溜め息をつきながら私は、教室の扉に手をかける。


そろそろ季節は夏に突入し、春からずっとやってきたこのパターンも、流石にマンネリ化してきた頃だ。

読者諸兄は、教室の中のシエルやその愉快な仲間達が集団コントをやっている中に私がツッコミとして入って、どたばたコメディーを演じていくパターンを想像しているのかもしれないが、そのパターンは最早やり尽くしたのだ。


途中、ミステリーのような事もして、いよいよ迷走し始めたかとも思ったが、そんな中でもここまで続けてこれたのは、感動すらも覚える。

しかし、それも今日で終わり。


私はもう一度息を吐いて気持ちを切り替えると、晴れ晴れとした気分で、扉を開けた。

私は胸に、希望と夢を抱きなが……



「よっしゃ、シャル!すごろく、すっぞ!」

「まさかの2周目!?」


知ってた。




私はいつもの席に陣取り、今回のメンツを確認する。

前回のすごろくの時には、リアラさんがいたが、今回は代わりに……


「シエルー、これ漢字なんて書いてあんの?」

「あぁ、それは“ゆううつ”って読めばいいから」

「ちょっと待って。すごろくに、“憂鬱”なんて単語出てくるの、すごく怖いんだけど」


ヘンリは目を細めながら、すごろくのマスを確認していた。

よりによって、この3人か……。


「まともな面子が一人もいないわね……」

「「俺は、まともだ!!」」

「なんでそこだけ、ハモってるのよ……」


そう、真にまともではない奴は、自分の事をまともだと思っているから余計たちが悪い。

私は頬杖をつきながら、すごろくの準備をするシエルに聞く。


「なんでまた、すごろくしてるのよ。今回は架空の人物を作ったりせずに二人でやってる分、まだ心の病気を発症していなかったからよかったけど……」

「いや、なんか暇だったからボケーっと一人ですごろく作ったんだけど、そこにヘンリ君が来て……」

「やっぱり病んでた!?普通ボケーっとしてるからって、一人放課後の教室で黙々とすごろく自作したりしないのよ!あと、普通に放課後になったら帰るという事を知りなさいよ!」

「誰か来るだろうと待ってたらやっぱり来る、お前らも大概だからな!!」


放課後、のうのうとやって来た私達へ文句を言いながら、シエルは自作のすごろくを広げ、さいころを私へ手渡す。


「それじゃあ、イカサマ取締まり実行委員長、検査よろしくお願いします」

「はいはい、もう乗らなくていいわよね、そのノリ。……多分大丈夫だと思うけれど」


私はサイコロを夕日に照らしながら、確認するが、持ってみた感じいたって普通のサイコロだ。

流石にこの男とて、もうイカサマも懲りたのだろう。

私がサイコロをシエルへ返そうとした時、そこへ、ヘンリが待ったをかけた。


「待って、シャルロッテ君。そのサイコロ、おかしな所がある!」

「え?…………っていうか、またシャルロッテ君とか、そのノリ?今回2周目のネタ、多いわよ!」

「……な、なにを根拠に言ってるんだ!しょ、証拠だ!証拠を出してみろよ!」

「わっかりやすい犯人ね!!」


そう言ってシエルはサイコロをヘンリへ、震える手で渡すと、ヘンリは数回サイコロを上に投げたりして、確かめる。


「「「…………」」」


そして一通り確認したヘンリは、サイコロをシエルへ返す。


「違ったわ」

「違ったんかい!?何だったのよ、この時間!」



こうして各々、準備を整え、今回のすごろくはスタートした。


「それじゃあ、制作者である俺が、最初に投げるぞ」

「今回は、落ち着いて優しくサイコロ投げてよ」

「分かってる、分かってる……負けてられっかあああああっ!!」

「だからまだ誰も投げてすらないのに、興奮しすぎだって!!」


そのようにシエルが思い切り雄叫びを上げながら投じられたサイコロは、雄叫びの勢いに反して弱弱しく、一応は私の注意は反映されていたようだ。

そして出た目は『2』。

前回から引き続き、相変わらず運の悪い男である。


「くっそ、2か。えーと、『鳥インフルエンザにかかり、死亡した。スタートに戻る』。くっそー、やっちまったー」

「内容がリアルで、めっちゃ恐ろしいんだけど……。ていうか、死ぬの、このゲーム?」


鳥インフルエンザという、なんとも言えないラインを攻めてくる感じ以外は、ちゃんとすごろくとして成立するくらいには、きちんとしたつくりには、なっているらしい。

次にサイコロを手に取ったのは、ヘンリだった。


「よーし、じゃあ次は俺でいいか?」

「まぁ、順番とか関係ないから、教室に来た順番で私が最後でいいわ」

「そんじゃ……くらええええええ!!!」

「叫びながらサイコロ投げなきゃいけないってルールはないから!?」


そうやって投じられたヘンリのサイコロもまたその叫びの勢いに反して、優しくゆっくり転がっていく。

だからなんでこいつら、叫ぶのはやめない癖に、律儀に私の言った事は守ってるのよ……。

そして出た目は、『6』だった。


「よっしゃ、6!!なになに?『リボ地獄に陥り、サラ金に借金生活へ。臓器を2つ売り飛ばされたため、2マス戻る』……くっそ、俺もハズレかあ!!」

「だから、内容がリアルにありそうで、恐ろしいのよ!!何があれば臓器2つも売り飛ばされるのよ、こいつ!」

「一々内容に突っかかるなよ。別に、内容より、ゲームとして成り立ってるか、だろ?」

「まあ、そうだけど……」


冷静に私をたしなめてくるシエルから、ふんだくるようにして私もサイコロを握る。


私は息を整えて、冷静に優しく、サイコロを投げる。

出た目は『3』だ。


「内容を見るの、怖いけど……えーと、『なんか憂鬱だなあ。特になし』。これだけ内容雑じゃない!?あと、さっき言ってた“憂鬱”ってここで出てくるの!?」

「仕方ないだろ、全部内容考えてたら何かめんどくさくなちゃって。あと、憂鬱って漢字書けたらもういっか、ってなっちゃって」

「確かにめんどくさい漢字だけど、なに達成感、感じちゃってるのよ……」


私はシエルへサイコロを手渡し、改めてすごろくの盤面を見てみる。


「これ、あなたが『5』を出せば、『26マス進む』って……これだけ明らかにバランス調整ミスってる気がするんだけど」

「いわゆる、ラッキーマスってやつだな。こういうのあると、最初から燃えるだろ?もちろん狙わせてもらう」


確かに、最初から狙うべき目が指定されれば、その目を出せたか出せなかったかで、盛り上がる事もできるかもしれない。

意外とちゃんと作られているようだ。

シエルは天に祈るようにして、両手を合わせて上を向く。


「……いや、さっさと投げてよ」

「せっかくお祈りしてるのに、何を……だあぁああああぁあっ!!」

「だから、あなたの情緒!?」


優しく放り投げられた、シエルのサイコロは、ころころと転がり、ヘンリの方へ転がっていく。

ここで5を出されれば終わりなので、ヘンリも固唾を飲んでその行方を見守る。

そして出た目は……『5』!!


「うああああ!マジか、シエル!」

「よっしゃあ!!ふっふっふ、やはり持っている男、シエルなのだよ。合計31マス進む、と」

「これ、逆転できるの?」


私は改めて盤面を見てみるが、『26マス進む』以上に進めるマスは、見たところありそうにない。

シエルはゴール手前まで行ってしまったが、その先は下に落ちていくマスがまだ多く配置されているので、そこに期待と言ったところか。

とはいえ、大分きつい盤面になってしまった。


しかしそこでシエルは何かに気付く。


「ん?何か書いてあった。なになに……『狂犬病にかかり、死亡した。スタートに戻る』。くっそおおおお!」

「馬鹿なの、あなた!?ラッキーマス作るんだったら、進んだ先のマスくらい空白にしなさいよ!」

「完全に計算間違えて作っちまったああ!!」


シエルは頭を抱えながら、再びスタート地点へ戻ってくる。

前回から引き続き、相変わらずスタート地点が似合う男だ。

それにしても、このすごろく、感染症の恐ろしさが分かる教育的なすごろくではあるようだ。


そんなシエルの遺志を継ぐように、サイコロを引き継いだのは、ヘンリだった。


「シエル……あとは俺に任せな」

「へ、ヘンリ君!さすがうちの班で一番頼りになる男!……あとは、頼んだぜ」

「たかがすごろくで、そんな、あとは託した、みたいなチームワーク必要ないからね」


するとヘンリは、ツッコミを入れた私の方へ向かって、サイコロを振り上げる。


「たかがすごろく、だと?皆そんな軽い気持ちですごろくやってんじゃねえ!皆、命と、魂を込めてサイコロ振って……でやあああああ!!!」

「その前振りみたいなの、もういいから、普通に振りなさいよ!」


ヘンリが大きく振りかぶって投じられたサイコロは、相変わらず優しく転がると、ころころと転がって、『4』の目が出る。


「じりじり前に行くって感じだな。……えっと、『健康診断で、糖尿病と診断された。これからは毎朝走り込みをしよう。すぐに3日坊主になったので、1回休み』」

「だから、内容がリアルすぎるんだって!!世の中年男性が恐れ慄くすごろく作るんじゃないわよ!」

「あ、そういえば、そのマス、裏ルートがあるんだった!ヘンリ君!」

「裏ルート?」


私は身を乗り出して確認してみると、確かにマスの下に、小さな文字で何か書いてある。


「『*ただし、これまでのマスで臓器を失っている人は裏面へ』って書いてあるぞ!」

「そうそう!」

「今から怖いんだけど……」


ヘンリは怖いもの知らずに、マスの下をつまむと、切れ目が入っていて、マス自体を裏返せるつくりとなっていた。

妙なところで本格的だから、評価しずらいのだ。


「えーっと?『健康診断の医者は裏社会に繋がっていた!?麻酔で眠らされたと思ったら臓器を一つ売り飛ばされていた。死んだ。スタート地点へ戻る』。あああああ!臓器さえあれば、1回休みで済んだのに!!」

「もはやあなたの倫理観どうなってるのよ!?そして普通に死んでるところにまたリアリティーがあるから、余計怖いのよ!!」


私はシエルへツッコミを入れるが、当のシエルは、我が子を自慢するような表情で、頷くばかりだった。

ヘンリは私へサイコロを渡してくれるが、もうどんな目を出しても、恐ろしい未来しか待っていない気がするのだけど。


とりあえず、今私はスタート地点から3マス進んだところにいるから、シエルが死んだマスに着く『2』と、1回休みが確定しているヘンリのマス『5』だけは出してはいけない。


「……ヘンリ君、見てみ。絶対『2』出すから」

「……一緒にスタートまで落ちようぜ、シャルロッテさん」

「そこうるさい!私がこんな丁寧なフリで、『2』なんて出すわけ……てえええええいっ!!!」

「シャルロッテさんんん!?」


私の渾身の、魂を込めたサイコロはころころと転がり、そして……。



「やっぱり『2』じゃん」

「まんま思った通りだったな」

「……なんでぇ?」


こうして、2巡して結局全員スタート地点に戻るという、類まれなる雑魚っぷりを見せつけた私達は、もちろんこのままで終わるわけがなく、ゴールするまで、何度もサイコロを振り続けた。


「シエルゥーー。俺は命と魂を込めて、投げてみせる!!」

「はい、『5』で、またスタート地点ね。早く私に渡しなさい」

「ふっふっふ、俺は1から6、どれを出しても10マス以上下がる、明らかに設計ミスゾーンに入ったが、一番前だな!!」

「すぐ追い抜いてやるわ!!」


こうして放課後のすごろく大会は、毎度見回りにやって来るリゼ先生からのお叱りが入るまで続けられた。


そして結論、リゼ先生はとてつもなくサイコロ運がない事が分かった。


こうしていつもの放課後は、終わっていく。


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