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第62話 未来を変えるために今の自分ができる事


「魔法の同時展開は、使いどころが重要じゃ」


とある休日の日、前にシャルを部屋に連れ込んだという、否定しにくい冤罪を吹っ掛けられた俺はルーベルトさんの前で正座して説教を受けていた。


一通り老人の長説教を右から左へ聞き流した後、話は魔法の同時展開にまで及んでいた。

俺が説教から話を逸らしたくて聞いた話ではあるが、それは元々気になっていた事なのでちょうど良かった。


「普通指一本に対して一つの魔法が展開できればよいとされている。これに関しては今のお主でもできない事はないじゃろう。それを二本同時に行う事も、多少しんどいくらいであるが、できるはずじゃ。浮遊魔法と火魔法を同時に扱えるお主ならな」

「確かにできそうだけど、使い所って?」

「同じ場所に、同じタイミング、同じ方向から二つの魔法を向けてもそれは何も意味はない。もしも二つ、ファイアーがあるならば一つは敵の誘導、もう一つを本命の攻撃用として用意する。これができればある程度の相手には楽勝に勝てる」

「俺、魔法のコントロールとか苦手だし、二つの魔法をそれぞれ敵にぶつけるタイミングを取るのも難しそうだな……」

「そこは詰込みじゃろ?」

「え゛……」


こうしてこの日は、絶望した顔を浮かべる俺の気持ちは無視され、一日中あんな酒飲み老人と一緒の休日を過ごす羽目になったわけだ。


しかしこの経験は何も嫌な事ばかりだったとは言えない。

その日俺は、ある新技を完成させていた。





俺はあの日の地獄を思い出しながら、意識を魔法に集中し、ピースサインの中に補足したヘンリ君へ向けて二方向からのファイアーを発動する。


そして指を閉じると同時にヘンリ君の元へ向かっていったそれらは、よく見ればそれぞれスピードが少し異なる。


一つ目のファイアーが飛んでくるのに合わせてヘンリ君は横に飛んでそれを回避するが、それを読んでいた二つ目のファイアーは飛び上がった瞬間のヘンリ君目掛けて、一気に向かっていく。


「確かに、煩わしいなっ!」


するとファイアーをその目で補足したヘンリ君は木刀を振って、水魔法の壁を作る。


俺のファイアーはまるで飛んで火にいる夏の虫を再現したかのように、その水の壁の中へ吸い込まれ、消滅する。


「じゃあ、これは?」


俺は再びピースサインでヘンリ君を補足すると、二つのファイアーを用意する。

今の俺には二つの同時展開が限界だ。

それをヘンリ君も分かっているのか、今度は無駄に動く事はなく、先程のように水の壁を出現させて二つを一気に防ごうとする。


「ここっ!」


俺は素早く浮遊魔法を発動させて、水の壁の中へ突っ込む。


「ばあっ!!」

「…っうお!!」


水の壁が俺の姿を上手く、ヘンリ君の目から誤魔化せていた部分もあるだろう。

二段ファイアー、とか口で言いながら本命は火の玉ではなく俺という、なんとも俺らしい卑怯な手を使ってみたが効果はてきめんだったようでヘンリ君は突然現れた俺に少し後退して姿勢を崩す。


ここは畳みかけなければ……


「倒れながら…っ水刃!」

「そんなばななっ…!!」


しかしこんな攻撃でヘンリ君が崩れるわけもなく、倒れながらヘンリ君の木刀から放たれた水の刃が俺の目の前にやって来る。

俺はヘンリ君に向けていた指を横にずらし、浮遊魔法でその場を離れる。


俺は地面に手をつきながら浮遊魔法を解除すると、既に態勢を整えていたヘンリ君が笑顔でこちらを見ている。


「これで終わりか?お前の新技は」

「……今ので分かったよ、ヘンリ君の学年最強の座は盤石だ。今の俺の攻撃だって、避けようと思えばいくらでも避けれたんだろ?でもあえて誘い込んで、それを受けた……まったく、敵わないな」


俺は両手をはたきながら先程の攻撃を振り返る。

少し考えれば、明らかに手を抜かれていた事が分かる。


ヘンリ君は俺の言葉を否定する訳でもなく、木刀を握り直す。

その目と表情は笑顔でいたけれど、俺には少し悲しげに見えた。

これはあの日と同じなんだ。


原作のヘンリ君はこれから自らが孤独だという事を悟って、ぐれる。

しかし少し時間を待てばアレクやシャルだってヘンリ君を追い越すほどの成長を遂げる予定だったのだ。


ヘンリ君は彼らと切磋琢磨して、最高のパーティーができていたかもしれない。


だけど一度孤独を知ってしまえば、一度諦めてしまえば、もう後になって認める事なんてできないんだ。

それは俺も、前の世界で知ってる。

だからこそ俺はそんなヘンリ君が、原作を読んでいた頃から……


「……嫌いじゃなかったんだ」

「……ん?」


「ヘンリ君、あの日俺は、君に負けた。そして託された。それを今、果たす。君より弱い俺だから俺にしかできない方法で君に勝つ。今度こそ絶対に負けない!」


ヘンリ君は何度も俺を救ってくれた。

原作を知ってしまってるから、俺がここでヘンリ君をこのままにするのは、なんだか嫌だから、嫌だ。


だから俺はしたいようにする、ヘンリ君を助けたいから、ヘンリ君とこのままの関係でいたいから、俺は勝つ。


俺はしたいようにやってやる。

そして死ぬ気で、未来を変えてみせる!

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