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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第2章 むしろ俺にだけ厳しいヒロインのお話
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第5話 クソラノベに必ず一人はいるDQN達

評価・ブクマ・応援、是非是非よろしくお願いします!


作者が喜びます!(/・ω・)/


「やめて、迷惑です」




椅子を少し後ろへ引き、窓から廊下の方を覗き込むと、シャルロッテさんは頭を下げている男子、恐らく上級生と思しき生徒を見下ろしながら、きっぱりと言い切っていた。



「これで何人目だ?」

「2人目。すごいモテるんだね、シャルロッテさん」

「そうらしいな……で、君は誰?」

「僕だよ、僕!」

「そんなボクボク詐欺されても、俺の所持金なんて128円だぞ」

「少なっ!?じゃなくて、アレクだよ!君の友人の!」



俺は昼休み、栄光ある孤立を選び、シャルロッテさんと共に無言のボッチ飯を楽しんでいたのだが、シャルロッテさんが廊下に呼びだされたのと同時にアレクが俺の席までやって来ていた。


シャルロッテさんが教室に帰ってくるが、流石に不機嫌が隠しきれていない。

それもそうだろう、何と言っても入学3日目にして既に上級生2人から告白を受けているのだから。


あの巨乳を見ればその気持ちも分からなくはないが、原作においてシャルロッテさんは数多の告白を全て断ってきた、という描写もあった為その帳尻合わせとも捉えられる。


シャルロッテさんは教室に戻ると普段からもそうだが、今回に関しては一層近付くなオーラを発しながら自分の席に帰ってくる。

しかしそんなものお構いなしに、アレクはシャルロッテさんへ話し掛ける。


「大変だね、シャルロッテさん」

「ほんとに。この学園それなりに格式高い学園ではなかったかしら。なぜこうも愚かな男子が多いのか」

「確かにちょっとひど…」

「あんたとは喋ってないわ!愚かな男子代表!」

「格差がひどいっ!?」


シャルロッテさんはアレクとは嫌な顔しながらであるが普通に喋っているのに、まだ俺とはまともに喋ってくれない。

ペアワークで俺がどれだけ苦労している事か。


とはいえ機嫌の悪い中突っ込んだ俺も悪いので、大人しく引き下がる。



「シャルロッテさん、シエル君はいい人だから、仲良くしてあげて」

「……私に何か見直した、と思わせるくらいの善行を何か一つでもできたら考えるわよ」

「だって!シエル君」


キラキラした瞳で見つめてくる黒髪わんぱくボーイ。

しかしこれは間違いなくチャンスだ。

ここを逃す手はない。


「……ではシャルロッテさん、今度の宿題、このシエルが代わりにやって差し上げましょう」

「私はもう今度の宿題の分までやってあるから。それにあなたこの前の確認テスト、ひどい点数だったじゃない」

「……」


そう、入学翌日に行われた確認テスト、国語や数学はなんとか乗り切る事ができたが、歴史と魔法学に躓いた。

というより、全く知らないのだ。


選択問題の4分の1を全て当てれば満点の半分はとれるという優しい設計であったため、センター試験で鍛えた運命力を総動員したのだが、結果普通に赤点を取ってしまった。


「それじゃあ、弁当の嫌いな食べ物あったら食ってやるよ」

「自分で持ってきた弁当に、自分の嫌いな食べ物入れるバカがどこにいるの?」

「……なら、俺の弁当から好きなの取っていいよ」

「…なんであなたの弁当もやしが半分を占めてるのよ…いらないわよ」


もはやシャルロッテさんは憐みの視線を向けてきたが、これくらいで折れないのが俺の鋼メンタルだ。

親から渡された生活費は少ないにしてもきちんとあるのだが、初めてやってきた世界でぱーっと使い切る勢いで金を消費するほど俺も馬鹿じゃない。


この学園の学食もあるらしいが、行けるのは当分先になるだろう。

俺はとっくに飽きてるもやしを口に運んでいると、教室の真ん中から数人こちらへやって来るのが見えた。



「おい、変人二人がなんであのシャルロッテさんと仲良くしてんだ?今すぐ離れろ!」

「なんだよ、君達。何か問題でもあるの?」

「あん?」


アレクがすかさず言い返していたが、やってきた三人を見てみると全員DQNだ。

のちのヘンリ君もこの一味に入るのだが、それは後の話として、確かにシャルロッテさんは名家の令嬢だ。


見目麗しいお嬢様がよく分からない変人二人に囲まれているのを見ると腹が立つのは至極当然とも言える。

するとシャルロッテさんもDQNの方へ向かって言う。



「あなた達の意見には完全に合意だけど、こういった喧嘩を吹っ掛けるようなやり方は気に食わないわ」

「な、あなたは俺達よりこんな訳も分からない奴らの肩を持つんですか?」

「どうしてそうなるのよ。どっちに味方するというか、どっちもどうでもいいのよ」

「そうだよ、僕らだって別にシャルロッテさんにやましい気持ちで近づいてやろうなんて思って話しかけてない」



シャルロッテさんはもう疲れたといった感じで対応しているが、アレクとあのDQN、確かジャックと言ったかな?はまだ睨み合っている。


多分ジャック君もシャルロッテさんが好きなんだろう。

そう思うとモテモテのシャルロッテさんが羨ましいとは思うけど、それ以上に大変そうだとも思う。


ちなみに俺は遠巻きに影を消しながら、その応酬を眺めている。



「お前、生意気な口ききやがって。俺が誰だか知らねえのか?」

「知らないね。だれ?」

「…コケにしやがって……決闘だ、決闘しろ。俺が勝ったらお前ら二度とシャルロッテさんに近づくな!」

「なんでそうなるのさ!」



これは面白くなってきた、と盛り上がりを見せる局面に興奮していた俺を見つけたシャルロッテさん。

すごい怖いお顔で顎をくいっとアレクの方へ向ける。


なんとかしろ、って事だろう。

まあ俺も関係者の一人ではあるができるだけ関わりたくはなかったので、完全に影を消していたのだが、見つかってしまうとは仕方ない。


俺はやれやれ、と立ち上がりアレクの隣に寄っていく。



「アレク、こういう時は冷静に対応するんだぞ」

「シエル君…」

「なんだ、てめえは!?」

「俺はシエルだ。さっきから聞いてたが、一旦落ち着いて…」

「あぁん!?お前みたいな陰キャラ透かし野郎が一番むかつくんだよ!いい気になりやがって!」

「…陰キャラ透かしいきり大馬鹿なめくじ野郎だぁ?言いやがったな、てめえ!上等だ、おらぁ!!」


「……彼らもそこまでは言ってなかったわよ」

「いや、なんでさっきカッコいいこと言ってた人が僕より先にエキサイトしてんのさ!?」



アレクが急いで俺の身を抑え込むと、クラスの中の注目も上がり、ジャック君も流石に引き下がる。


「ちっ、あとで覚えてろよ」


ジャック君達一行は、いかにもな捨て台詞と共に元の席へ帰っていった。






「…よっし、一件落着」

「どこが!?絶対顔と名前覚えられたやつだよ!」



アレクは頭を抱えるが、俺は意に介さず自らの席につく。

同時に予鈴のチャイムが鳴り、アレクも急いで帰っていった。


教室の女子達もDQNに絡まれていたシャルロッテさんを心配するように視線を向けてはいたが、当のシャルロッテさんはプイっと顔を横に向けて突き放す。


俺は次の授業の準備でもするかと背中を伸ばしていると、隣の席から一枚の紙きれが机の上に渡された。


意図を読み取り、隣に顔を向けずに裏返して確認してみると、「大丈夫なの?」とこれだけが書かれていた。

流石に自分のせいでヤンキーに目をつけられたと思うと、こんな俺に対してでも罪悪感を抱いてくれたのかもしれない。


俺は一度もシャルロッテさんの方を見ることなく紙切れに「余裕のよっちゃん」とだけ書いて渡す。




そしてその日の放課後、俺の机の上に、『果たし状』と書かれた紙が置いてあるのを見つけてから俺は思い出した。






「そういえば俺、魔法の使い方知らねえじゃん…」



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