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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第7章 主人公の覚悟と変えるべき未来
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第58.5話 幕間 Gの悲劇



溜め息をつきながら私は、教室の扉に手をかける。

いや、今回に限って言えばまったく溜め息をつく必要はないのだが、なんとなくいつもの例に則ってみた。


「……で、今日は……」

「待て、シャル!今日は勉強なんてしてる暇はないのかもしれない!」


すっかり毎日恒例となっていたシエルとの放課後勉強会に、今日もやって来たわけなのだが、どうやらまたこの男何か変なスイッチが入ってるようだ。

とは言っても今日は二人きりであるので、いつものうるさいメンバーがいないだけましか。


「……で、何?」

「さすが、順応するの早いね」

「何回やってると思ってるのよ、この放課後の謎のコント」


私はシエルの席の向かい合わせの席を引き、ため息をついて座る。

流石に過去あれだけの人数と回数、謎の世界観に付き合わされているのだから、いい加減耐性が付いてきているのかもしれない。


「いったい何なのよ、今日は。くだらない事だったら、私もう乗らないから」

「今回に限って言えば、過去一緊急事案だ!そしてトップシークレット案件でもある!!」

「な、なんなのよ、勿体つけて」


私はシエルの勢いに、思わず少しのけ反ってしまう。

これは、本気だ。

今回ばかりはいつもと違って真剣な相談でもあるのかもしれない。

私は襟を正して、シエルの話に耳を傾ける。


「結局、何?」

「……無くした」

「……ん?」

「だから無くしたんだ。……今日先生に出さなきゃいけない学級日誌、無くしちゃったんだぁ!!」

「どうせそんなくだらない事だろうとは思ってたわよ!」


私は机に泣き崩れるシエルを見て、息を吐きながら正していた姿勢を崩す。


「先生に無くしちゃったって正直に言えば、きっと反省文50枚くらいで許してくれるわよ」

「……それくらいで済むなら、俺もやってるよ。……でも俺、前科持ちだからさ……」

「マジものの元犯罪者みたいな、悲哀に満ちた雰囲気やめなさいよ」


そうだった、この男、過去にも何度かリゼ先生を怒らせ、そのたびに反省文を書かされていた。

有名なところを上げれば、黒板ゴキブリ事件、学級日誌ゴキブリ事件、ゴミ箱ゴキブリゴミ袋事件(通称:GGG事件)といったところだ。


次また何かやらかせば、ひょっとすると死刑が下される可能性もある。

そうなれば私はこの男の一年先輩になってしまうが、それは今後の関係も色々面倒になりそうなので是非回避してもらいたい。


「……机の中は探したの?」

「探したさ!机の裏まで全部探しても、出てきたのはさっきヘンリ君がいたずらでつけていった、巨大鼻くそくらいだった」

「品性を疑うとは、まさしくこの事ね!」


しかしよく見てみれば、くっついていたのは鼻くその形をしたおもちゃのようなものであり実物ではないようだが、それならどういう気持ちでお前はそれを買ったのだとヘンリに問いかけたい。


「教卓とかに置いていっちゃったとか……」

「教卓だって探したよ!でも出てきたのはリアラさんが集めてた、お子様メニューの旗、全28種類だけだった」

「さっきから、あんたら小学生か!?あとなんでリアラさんのそれが教卓の中を占拠してたのよ!」


シエルは学級日誌が見つからない事を本気で悔しがっているが、ツッコミを全部私に任せるんでなくてもっと現実を疑えと言いたい。


「それじゃあ、鞄の中、もしかしたら持って帰る教科書の間とかに……」

「はんっ。この俺が教科書を毎日持って帰るとでも思っているのかい?」

「なに、置き勉を誇らしげに言ってるのよ。今日から全部持って帰りなさい!」

「ええ!そんなことしたら俺の肩、ランドセル症候群になっちまうじゃねえか!」

「だからあんたら小学生かって!?それは重たい荷物を毎日背負って小学生が体調不良になっちゃう社会問題だから、あなたには関係ない!」


私は思わず頭に手を置いて考える。

いい加減私だってツッコミ役をしているの、疲れるのだ。


「それなら誰かに貸したとか、覚えてないの?」


私の問いにシエルが考え込むと同時に、唐突に教室の扉が開いた。

そこから現れたのは、いつも通り恥ずかしそうに顔を俯かせた、リアラさんだった。


「し、シエルさん!できまし……あれ?なんでシャ、シャルロッテさんが?!」


シエルに向かって何かを差し出しながら笑顔を浮かべるリアラさんは、私の存在に気付き突然きょどりだす。

こういう所が可愛いんだよなぁ、と思いながらもリアラさんがシエルへ向かって差し出したそれに私は注目した。


「それ……」

「ああああ!!思い出した!そういえば学級日誌、昼休みに食堂で会ったリアラさんに貸してたんだった」


シエルは手を叩いて、ようやく学級日誌の在りかを思い出す。

そう、確かにリアラさんが今手に持っているのはリゼ先生の丸みを帯びた可愛い文字が表紙の、学級日誌だ。

問題は、


「なんでリアラさんがそれを持ってるの?」

「……そ、その、私がフレアさん達と一緒にご飯を食べてたら、シエルさんが私を見つけて、『学級日誌の自由に書く欄、何も思い浮かばないから、適当にリアラさん渾身の絵でも描いてよ』って言われて……」

「……適当でいいのか、渾身の力を込めないといけないのか分からない、最低の依頼ね」

「し、シエルさんがお子様ランチの旗をくれるって言うから、私も断れなくて……」

「あなたのお子様ランチだったの!?」


私はまさかの事実に驚きながらシエルを見るが、シエルは頭を掻きながらさっき教卓に入っていたらしい旗をリアラさんに、リアラさんも同じように頭を掻きながら学級日誌をシエルに手渡す。


だからこの私だけがおかしい人、みたいな雰囲気やめなさいよ。

絶対私の反応間違ってないから!


しかしこれで真相は分かった。

恐らくシエルのどっちともとれる依頼内容に悩んだリアラさんは、必要以上に時間をかけて絵を描く事になったのだろう。

そしてそれを依頼した本人であるシエルは、時間が経つとともにその事実をすっかり忘れて……。


「全部あなたが悪いじゃない」

「ま、まあ、いいじゃないか。無事学級日誌は見つかったんだから。……あ、そういえばリアラさん何描いたんだろ」


そう言ってシエルは、学級日誌を開いて、今日のページを開く。

私も気になったので中を覗くと、そこに広がる景色に、私は絶句した。


「思いの外、うまく可愛い感じに描けました!」

「あぁ、うん。……だろうね。でも……これ絶対………まぁいっか」

「絶対ダメ!!」


シエルは決まりの悪い顔で、それでも納得しようとしていたので、私は勢いよくそれを止める。

ホントはリアラさんの作品に対して文句を言いたくはないし、結構うまく描けているとも感心するのだが、これだけはだめなのだ。

この題材だけは……


「え?わ、私のゴキブリのデフォルメ絵ダメでした?結構題材にしてはゆるキャラみたいに可愛く描けたんですけど……」

「……ごめん、こんな事あなたに言いたくはないのだけど。……よりによってこれかぁ」

「ええええ?な、なんでですか?」

「これを提出してしまえば、この男に死刑判決が下ってしまうの」

「そ、そんな事あるんですか!?」


その後しばらくリアラさんの絵の代替案を考えていた私達ではあったけれど、そこに学級日誌が返ってこない事にしびれを切らしたリゼ先生が乱入してきて……。


結局シエルについてはリアラさんの絵が可愛いという事で、なんとか首の皮一枚を繋ぎとめる事に成功した事は報告しておこう。

またしてもシエルの起こした数々の事件簿に、ゴキブリ関連事件の名が残ってしまった事は言うまでもない。


こうしていつもの放課後は終わっていく。


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