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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第7章 主人公の覚悟と変えるべき未来
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第57話 この世界の主人公 ー前ー


「えええ!?その怪我大丈夫なんですか?」

「ま、まあ。一時は川の向こうで手を振っている見知らぬお婆ちゃんが見えたんですけど、ここまで来れたので峠は越えました……それより、奥様に月影草を……」

「そ、そうですか。それじゃあ、急いで村のお医者さんを呼んできます!あなたも……」

「俺は、ちょっと寝てたら治りますから、そっちを優先してください」


俺とアレクはハービィー村まで帰ってくると、疲れで寝てしまったティナをお父さんに引渡し依頼品であった月影草を手渡した。


ティナのお父さんはしきりに俺の怪我を気にしてくれたが、俺としては自分の怪我よりティナの母親が心配でならなかったので、とりあえず手を振ってその場を離れることにした。

するとティナのお父さんも観念し、お医者さんの方へ走っていく。

狭い村であるので、すぐにお医者さんはくるだろう。





「……まったく、割に合わない仕事だ。全身軋むように痛い」

「……痛いだけで済んだ分、運はよかったと思おうよ」


俺とアレクはよろよろになりながら村の中心の広場で、二つのベンチにそれぞれ腰掛ける。

空を見上げてみれば、夕暮れ、逢魔が時というやつだ。


「ティナのお母さん、助かるかな?」

「きっと助かるよ。あのお母さんは、強いから」

「……そう、だな」


思えば原作であのお母さんは床に伏せながら、ここから2か月持ちこたえている。

それはきっと物凄い意志の強さ、生への執着、そして家族と離れたくない、そんな深い愛情もあったのだと思う。

そんな人が娘をおいて、簡単に死にはしない。


俺はグウーっと背中を伸ばしてベンチに横になる。

周りを見渡しても誰もいないので、ベンチを独占したとて文句は言われまい。

横になって目を瞑ると、ふいに今朝のチート売りの婆さんの姿が思い浮かんだ。


「……アレクはさ、今回の依頼の反省会をするならば、どこを反省する?」

「どうしたの、急に。……でも、そうだね。反省するところはいっぱいあったと思うけど、あそこは駄目だったよね」


アレクは突然の俺の質問に戸惑いながらも、顎に手を置いて、考えてくれた。

そしていたずらな笑みを浮かべてこちらへ向く。


「シエル君がなぜかティナちゃんに緊張して、全然仲良くなれてなかった事」

「そこ!?もっとあっただろ、他にも……」

「だって、シエル君がずっとティナちゃんを守ってたら、あの鳥達が突進してくる前にティナちゃんを抱えて逃げる事もできたはずでしょ?無駄な魔力と時間を食ったわけなんだから」

「……まぁ、そこに関しては言い返せないが、逆になぜあんな短時間であそこまで幼女と仲良くなれるのか、俺はそっちの方が気になるぞ」


アレクとティナの異常な仲良しさは置いておいて、本来俺がびっしりティナに張り付いて守っていればあんな事にはならなかったしそうするべきだった。

原作ストーリーに深く関わる依頼だったから緊張していたのもあるが、どこか一歩引いた目線で今回の依頼に参加していた自分がいるのも確かだ。


「……それもこれも全部、今朝の占い婆さんのせいにしとこ」

「確かに、なんか意味深な事言ってたしね。……将来の事なんて分からない方がずっと気が楽だって分かったよ」

「………」


アレクはそう言って、今朝のやり取りを思い出しながらベンチに寝転がる。

二人してベンチを独占するとんだ非行少年たちであるが、俺はアレクに対して何も言い返すことができなかった。


確かにこの世界に来て、未来なんて知らない方が良かったと何度思った事だろう。

一度知ってしまえば忘れる事はできないし、無関係でいる事もできなくなってしまう。

俺には……切り捨てる事ができる勇気が、ないから。


俺は少しだけ体を持ち上げ、アレクの方を見る。


「……お前は、もし未来を知ってしまったらどうする?例えば今日、ティナのお母さんが死ぬと分かっていたら、どうする?」

「今日までに何とかする!それしかないね」


アレクは寝転がりながら、頭だけを後ろに向け即答する。


「お前には関係ないんだぞ?ティナの母親も、ティナも……無関係の人の為に手を差し伸べようとする、その心はなんだ?」

「うーん……簡潔に答えるならば、罪悪感からの逃げ、これに尽きると思うんだ。僕しか知らないなら、僕がその人の命を預かっているようなものだ。みすみすその人を殺しちゃったら僕はきっと罪悪感に苛まれる。それはなんか嫌だ」


アレクは依然笑顔のまま答える。

罪悪感からの逃げ……。


「……存外普通な事を言うんだな。俺もきっとお前と同じ理由で助けようとすると思う」

「そりゃそうだ。皆それぞれ考え方は違うとは言われているけど、根本は何も変わらない、同じ人だ。なんとなく嫌なものは嫌!僕もシエル君も何も変わらないよ!」


すると言い終わったアレクはあくびをしながら両腕を天に伸ばして、夕日の方へ顔を向ける。

既に夕日はほとんど落ちきっており、見えている部分なんてほんの少しだ。


俺とアレクが一緒……。

いや、俺からすれば全然違う。

立場が違う、見ているものが違う、知っているものまるで違う。


そして俺は一つの覚悟を決める。

体を半分起こし、アレクを見据える。

暗くなった空に揺れる髪と、瞳。


「アレク。これは仮の話として聞いてほしいんだが……」

「…ん?」



「もしこれから、この世界が一人の男と魔王によって滅びるとしたら、どうする?」


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