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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第7章 主人公の覚悟と変えるべき未来
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第55話 物語の強制力


「はい、到着」

「……あっさりし過ぎじゃない?」


月見の森の入り口からそれなりに歩いた俺達はある崖の上で、太陽の光に反射して虹色に光る稲のような草を見つける事に成功した。


「仕方ないだろ?さっき飛んで見つけた崖に、ホントに月影草があったんだからそりゃすぐに終わるよ」

「……魔物、というか魔物化した動物達とも遭遇したのも3回だけだし手応えはほとんどないね」


アレクが言うように魔物というのにも色々な種類がある。

ゴブリンやスライムのようにザ・ファンタジーな魔物もいれば、動物が変異を起こし魔物化、凶暴化したものも魔物と呼ばれてる。


俺達がここに来るまでに遭遇したのは、熊と鹿、猪の魔物で、それらは全部アレクが魔法によって退けた。

浮遊魔法の温存という名目で、堂々とアレクに戦闘を任せる事ができる最高の仕事だ。


「わあ、綺麗……」


ここまで地図を片手に道案内をしながら一緒についてきたティナは、月影草の元へ近づき、こちらへ振り向く。


「私が、いいんですか?」

「うん、ティナちゃんがとってきたって言った方がお母さんも喜ぶだろうしね」


アレクが手を差し出して促すとティナは努めて丁寧に、土を掘って月影草を採取する。

ティナは少し震えた手で土を少しずつ払うと、こちらへ振り向いて、満面の笑顔を見せる。


「で、できました!!」

「よし!あとは急いでお母さんに持って帰るだけだな!」


ティナは俺の言葉にうなずくと、早足で俺達の元へ戻る。

どうやら俺達が原作ルートよりも早くティナと会っているからか、ティナが原作のように安心して意識を失う事はなかった。


これは、変わっているのかもしれない……!


俺とアレクはティナの手を繋いで、元来た道を引き返す。

まだ油断はできないため、俺の緊張は依然張りつめている。


「……それにしてもなんでここは月見の森、って言うんだろうな」

「僕も確かに気にはなってたけど、よく知らないな」

「私が聞いた話なんですけど、色々諸説はあって。ある日この森に迷った男の人が見上げて見つけた綺麗な満月だけを頼りに歩き回っていたら、偶然森の入り口まで帰る事ができたからそれにちなんで名付けられた……ってよく言われてます。月影草もそのお話からそう名付けられたそうですよ」

「そうなんだ!」


俺はティナに教えられたので、首を曲げて空を見上げてみる。

今は昼を過ぎて夕方に突入しようかという時間であったので、もちろん月は見えない。

太陽が落ち始め赤みを増し始めるそんな時間帯。

カラスのような黒い鳥が、群れをなして飛び交っている。


しかし俺はその光景に何か違和感を感じ、足を止める。


「シエル君、どうしたの?」

「……いや、あの鳥……何か……」


俺が指をさしてアレクへ、先程の黒い鳥を示す。

黒い鳥が群れをなす、そんな事に違和感を感じているわけではない。

ただ何か、いつもとは違うような……。


その時、鳥の中の一体と俺の目が合ったような気がして、俺はゾクリと肌が震えた。

そうか!


「あの鳥って……」

「アレク、あいつらよく見たら全部でかい…っ!ちょっと待て!」


アレクへ叫んだその瞬間、その鳥の群れが一斉に下へ向かって急降下を始めた事に気が付いた。

アレクもその事に気が付いて、急いで隣についてきていたティナを守るように全身で覆いかぶさる。


俺はティナをアレクに任せ、防御の態勢を取ろうとした時、鳥達はそれを待ってくれる暇もなく俺達の元へ突進してきた。

その体はおよそ人間ほどの大きさがあり、直撃すれば命の危険だ。


「……っそ!」

「何がっ……!」

「きゃああ!!」


俺は俺の元へ突進してきた鳥をギリギリで回避しながら、アレク達の方へ向かっていった鳥がいないか、急いで確認する。

そして俺は気付く。


ここに突進してきた鳥達の殆どがアレク達を一斉に襲っている事に。

狙いは最初から……


「がはっ!……ティナちゃん!?」

「っきゃあ!!アレクさん!」


鳥達の猛攻に、反撃へ転じようとしていたアレクの隙をついて一体の鳥がティナをくちばしで咥えて飛び立つ。

何を安心してたんだよ、俺!

まだ何も終わってなんていなかったんだ。


アレクは態勢を立て直し、魔法を放つが、鳥達は一斉に飛び立ち、空中へ逃げていく。


「……シエル君!」

「アレク、今すぐ追う!下から援護頼む!」


俺は浮遊魔法を発動し、背負っていたリュックを放り投げて、一気に飛び上がる。


こうなればティナのお母さんだって決して余裕があるという状況ではなくなった。

物語の強制力。

未来はこうあるべき、という力。


そんなものがあるというなら俺はそれを相手に打ち勝つ必要があるという事だ。

それが未来を変えるという事の意味であり、義務。

ここで負けたら、きっと絶対に後悔すると分かっているから。


「……ティナも、何もかも、全部救うって決めたんだよ。鳥ごときが、邪魔するなよ!!」


俺の浮遊魔法は、速度を上げて鳥たちの方へ向かっていく。

アレクが一晩中ティナを探し回った原作ルートを変えるためには、一瞬でかたをつける。

それしか、ない!


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