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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第7章 主人公の覚悟と変えるべき未来
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第53話 バッドエンドへ向けて


「こんにちは!ようこそハービィー村へ!」

「「こんにちは」」


ハービィー村というのどかな村へ辿り着いた俺達は、その入り口で6歳くらいの少女に挨拶をされる。

髪を後ろで一本に束ね、その背中には山菜の詰まったリュックのようなものも背負っている。

この子が恐らく、依頼を出した少女……


「私、ティナって言います!お父さんの所まで案内します!」

「ありがと、ティナちゃん!」


アレクは膝を曲げながらにっこりと笑みをティナに向けると、ティナはそれを100点満点の笑顔で返す。

なんていい子なのだろうか。

思わず俺も笑顔になって、ティナの後ろをついていく。


しかし俺は知っている。

『僕最強』の作者の性格の悪さを。





「あなた方が、冒険者さんですか!ようこそお越しいただきました!」

「いえいえ、こちらこそ依頼が出されてから時間が空いてしまって、申し訳ありません」


俺達がティナの家に着くと、そこでは気苦労の多そうな白髪交じりの男性が迎えてくれた。

いきなり頭を下げて丁寧に対応してくれたものだから、俺も一応冒険者側としての謝罪をする。


「ティナから聞いたのですが……お母様は大丈夫ですか?」

「……正直あまり、容態はよろしくはありません」

「それなら、やっぱり急いで取りに行った方がいいですね」


俺が尋ねると、ティナの父親は後ろを気にしながら答える。

どうやら状況は原作と変わらないようだ。


「お母さんに会ってくれる?」

「ティナもこう言っているので、出発する前に一度ぜひ会っていただけませんか」


ティナ親子は丁重に招き入れようとするので、アレクはそれに従うように中へ入っていく。

俺も急いで靴を脱いでから揃えて、アレクの後ろをついていく。


ティナの母親が眠る寝室は、玄関から一番離れた一室だった。


「お母さん、やっと来てくれた冒険者の人達!」

「……あら、そうなの?わざわざここまで、ありがとうございます……」


ティナの母親と思しき人物はベッドから体を起こし、か細い声で挨拶する。

マーガレットというこの女性はおよそ1年前に病気で倒れてからずっと、ベッド生活を強いられているという。


「月影草は……妻の病気の特効薬なんです。幸い立地で言えばその生息地に近い村ではあるのですが、いかんせん月見の森を抜けるのが難しくて……」


ティナの父親は唇を噛みしめて、悔しそうに俯く。

魔法も使えない一般人が魔物もいるという森に入るのは、確かに難しい。


「大丈夫です!僕らが来たからには、安心してください」

「……よろしく、お願いします。……ごほっ!」

「お母さん、もう大丈夫だから」


母親がせき込むのを見ると、すぐにティナは背中をさすりながらベッドに横になるよう言う。

家族思いで、皆に明るさを振り撒く元気で健気な女の子。

こんな子が自分の娘だったら俺、仕事の能率230%くらい上がると思う。


「それでは俺達、行きます。すぐに帰ってくるので、安静に待っててください」

「……改めて、よろしくお願い、します」


俺とアレクは立ち上がり、ティナ一家に別れを告げて家を出る。



そして俺はティナの家の玄関が閉まると同時に、一気に走り出した。


「…っ、ちょっとシエル君!何が?」

「悪い事は言わないから、とにかく急いで出よう!ティナの母親もつらそうだったし」


確かにそれも理由の一つではあるが、俺が走り出した本命の理由はそれとは別にある。

このままいけば原作ルートになるかもしれない。


それはあの忌々しいバッドエンドへ向かってしまう事を意味する。

あの、ティナの母親が……


「お兄ちゃん達!!地図忘れてるよ!……って、遠ーいっ!?」


すると俺が走り出してすぐにティナの家から一人、ティナが飛び出して俺達へ忘れ物を伝える。

アレクは足を止めて後ろを振り返ると、ティナの元へ向かう。


ま、まずい……。


「ありがと!シエル君も突然急ぐから……」

「そうだ、お兄さんにお願いがあるんですけど……」


俺に対する不満を口に出すアレクではあったが、そんなアレクにティナが恥ずかしそうに、もじもじとしだす。


これは明らかにまずい!

このままじゃダメなんだ!


このままじゃティナ自身がティナの母親を殺す結果を招く、あの胸糞原作ストーリーをなぞる事になりかねない!


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