第48話 シャルロッテさんの名言
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止まるんじゃねえぞ…!
シャルロッテさんはノートを閉じて、俺の目をまっすぐ見つめてくる。
「あなたの話が本当なのだとしたら……あなたは自分が何者でもないと思っている。自分は異端だと、本来ここにいてはいけない、何かズルをしてここにいると思っている。違う?」
「い、いや、正解だけど……」
「よく見てみると、あなたはこのノートをなぞった行動をしているわ。ダンジョンを誰よりも早くクリアするだとか、皆を引っ張るリーダーとして友達は見捨てないだとか、一人で泣いている女の子を助けるだとか……あなたは何かになりたかった。ここにいてもいい、という理由をシエルという人格に、このノートに求めている、違う?」
「………」
もはや恐ろしいくらいに、シャルロッテさんは俺の本質を見破ってくる。
まさしくその通りだ。
俺はあの日このノートを見つけ、シエルという男を真似しようと決めた。
そうでもしないと、自分自身がこの世界、この学園から弾かれてしまうと思ったから。
何者でもない俺は、ここにいる事が許されなくなると思ったから。
「……だから、ここまで上手くシエルとして、やってきた自信のあったあなたは、この間のダンジョン演習でその自信を打ち砕かれた。そして、あなたは今葛藤している。ダンジョンを全部制覇するという事が本当に自分のやりたかったことなのか……いや、こんな自分がやっていい事なのか、と」
「………そうだな。俺は自分自身が外の人間だって思っている。部外者の人間がこれ以上、皆の人生に関わる、そんな事が許されるなんて思ってない。何とかシエルとして、この世界の中の人間として、ここにいたいって思ってる」
俺が水を飲むと、シャルロッテさんも同じように、前に用意されていたコップを手に取り、一口水を飲む。
水だから当たり前なのだが、全く味はしなかった。
窓が風に吹かれて、カタカタと揺れる。
「……だから私が言える名言は、あなたはやりたいようにやればいい。あなたが自分をどんな風に思ってたとしても、所詮あなたは小さいたった1人の人間でしかない。自分を過大評価しないことね」
「……でも、俺は……」
「あなたが責任というものを怖がっているなら、そんなもの他の人に擦り付ければいい。私達他人を、あまり舐めないでもらえる?」
そう言ってシャルロッテさんは、少し微笑みを浮かべたまま、コップを机に置く。
コップの中の水面に反射する輝きが、俺の目には少し眩しく見えた。
……私達他人を舐めないで、か。
「……ほんとに名言みたいなことを言うね、シャルロッテさん」
「ええ、私が2秒間本気で考えた名言なのだから」
「もっと時間をかけてくれよ」
俺はコップを握りながら、微笑みを浮かべる。
どんなに短い時間で考えたのかは知らないが、今の俺が欲しい言葉を、シャルロッテさんは的確にくれる。
きっと日々の関係の中で見抜かれてた所もあったのだろう。
「……分かったよ、俺はとりあえず俺のやりたい事をやる。結果がどうなっても、知らないからな」
「いいわよ。あなたの起こす行動くらいで、私は死にはしないわ」
俺は改めて教科書をめくり、ノートを広げる。
それに合わせるようにしてシャルロッテさんも勉強を再開させる。
きっと俺はダンジョンで生死を賭けた勝負をする事、だけじゃなく、自分の起こす行動一つ一つがこの世界の人間の生死に直結するかもしれない、そんな事実から逃げたかったんだ。
私は死なない、きっと何気なく言ったそんな言葉も、俺にとってはどんなにも心を安らげてくれる。
俺はコップを横によけて、本腰を入れて勉強に取り組まんとする。
これ以上の言葉は、お互い必要ないだろう。
すると、そんな沈黙を破ったシャルロッテさんが唐突に、再びこの場に爆弾を落としにかかる。
「そういえばあなた、ちょっと聞きたかったのだけど」
「え、まだある?」
「えぇ、前言っていた、私の事が好き、ってセリフ。今は私の事どう思っているのだろうって思って」
どうやらシャルロッテさんは今日、とことん俺をいじめるつもりで来たらしい。




