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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第6章 ラブコメは主人公のヒロインと
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第46話 物語を変える責任


パラパラと、本のページをめくる音だけが響くこの部屋で、俺は手汗を握りながら正座をしてシャルロッテさんの正面に座っていた。


「……手が止まってるわよ」

「……はい」


シャルロッテさんは頬杖をつきながら、本から目を離す事無く注意するので、俺は急いでノートとにらめっこをする。


(絶対おかしいだろ、この状況!?)


なぜシャルロッテさんがわざわざ俺の部屋まで来て勉強している?

というか一番怖いのは、一度も部屋の場所も番号も教えたことがないのに、ここまですんなり来ちゃってるところだ。


「……アレクから聞いたのよ」

「……なぜ俺の心の声がバレてる?」

「あなた分かりやすいのよ…」


俺はノートに向かいながら、今度はシャルロッテさんに顔を見られないよう顔を伏せて、必死に考える。


(何が目的だ?目的もなく来るはず……)


「……少しあなたに聞きたい事があったからよ」

「だからなんで心の声バレてんの!?俺もしかして普段から本音とプライバシーを垂れ流して生きてる!?」

「なんとなく分かるのよ。これが以心伝心ってやつかしら?」

「……以心伝心にしては、俺からは全部筒抜けなのに、入って来るシャルロッテさんの心の情報が0ってどういうこと?」


俺は諦めて両手を床につき、天井を見上げる。

シャルロッテさんは相変わらず無表情に本を睨んでいる。

今日のシャルロッテさん、ボケてくる日のシャルロッテさんだ…。


「それ、何の本?」

「……テストでバレずにカンニングをする方法100選」

「すごい本読んでた!?というかシャルロッテさんにそんなの必要ないだろ」

「何を言ってるのよ。私は隣の席の男にカンニングをされないために読んでるのよ」

「カンニングされる側の対策のためだった!?流石の俺もカンニングはしないから!」


するとシャルロッテさんは本をぱたりと閉じ、そのままこちらを睨む。


「冗談は一先ずこれまでにして、あなた、今回はいったい何を考えているの?」

「何と言われましてもね……。俺がまだ冒険者登録をしないっていうのが、そんなに違和感がある事?」

「違和感しかないわね。今までのあなたを考えれば、明らかにおかしいわ。隣の席だからわかるの」


「……………」



そのセリフは、いつだったか、俺がシャルロッテさんに放った言葉だ。

隣の席ってすごいな。

しかし俺はそんなシャルロッテさんから目を外し、改めてノートを捲りながら答える。


「……俺がどんな理由で今、ここにいようと、シャルロッテさんには関係ないだろ?」

「いいえ、あるわね。少なくとも私はあなたを知っているし、あなたも私を知ってる。一度知り合ってしまえば……簡単にほっとけないのが人間でしょ。それはあなたも知っているはずよ」

「………」

「あなたがどれほど私を突き放したいと思っていたとしても、私はここから離れるわけにはいかない。あなたが自分で築いてきた人間関係なのだから、精々諦めなさい」

「……分かったよ、降参だ」



俺はノートを閉じ、両手を挙げてその場に仰向けに寝転がる。

床のひんやりとした感覚が背中を襲う。

どの道この部屋にシャルロッテさんが乱入してきている時点で、俺の逃げるという選択肢は完全になくなってしまっている。


まだ窓から飛び降りるという手もあるにはあるが、そこまでしてシャルロッテさんとの関係性を悪くしたいわけでもない。


俺は頭の下で両手を組み、天井のシミを見つめる。


「……別に昨日シャルロッテさんに言った事に嘘はないし、ほんとにもっと力をつけてから行くべきだとは思ったんだよ」

「……それだけではないんでしょ。あなたは何かを恐れている。それが知りたいのよ」

「…………ほんとに全部バレてるんだな」


俺は観念して目を瞑ると、思い出すのは先週のダンジョン演習だ。

あの日あの時、生きるために必死に、もがいて、抗って、苦しんだ。



「……俺はさ、シャルロッテさん。あの日のダンジョン演習でリアラさんの命を預かり、俺自身も死にかけた。初めてだったんだよ。死ぬかもな、っていうのをあんなに身近に感じたのは」

「…………」

「何度も俺がいたせいだ、って思った。俺さえいなければリアラさんもあんな目にあう事はなかったんじゃないかって、何度も自分を責めたよ。だって……俺が変えてしまった事だから……」


俺がダンジョン演習で、フレアさん、イレーナさんに勝負を持ち掛けなかったら。

リーダーとして適切な判断ができていたら。

俺がアレクや、他の皆と班を組まなかったら。

……俺がこの世界に来ていなかったら。


「……結局俺には覚悟がなかったんだよ。人の生き死にを委ねられる覚悟が、自分の行動に対する責任が足りてなかったんだ」

「……そんな中でも、あなたは最善を尽くしたと、私は思うわ。現にあなたも、リアラさんも、しっかり生きて……」

「そういう事じゃないんだ」


俺はむくりと起き上がり、シャルロッテさんの青色の瞳を見つめる。


「怖くなったんだよ。ダンジョンに潜るのが、どうしようもなく恐ろしい事に思えて、足がすくんじゃうんだ。……シャルロッテさんよりも俺は、どうしようもない怖がりなんだよ」



「………」

「……で、どうする?この重苦しい雰囲気」

「……待って、今あなたの心に響く名言を考えてるから」

「俺達、困ったらすぐ名言考えるコンビじゃん」


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